理事長あいさつ
日本HTLV-1学会の発足にあたって
日本HTLV-1学会は、HTLV-1研究会を母体として、平成25年11月に設立されました。新たな学会の初代理事長としてご挨拶を申し上げます。
我が国には、人口の1%に上る約110万人のヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染者がおり、このウイルスが原因で様々な難治性の疾患が発症しております。悪性の白血病・リンパ腫である成人T細胞白血病(ATL)、慢性・進行性の神経疾患であるHAM、目の炎症性疾患であるHTLV-1ぶどう膜炎(HU)等であります。従来、九州・沖縄地区に多数の感染者がおりましたが、最近の調査では、東京、大阪、名古屋等の大都市圏で感染者が増加し、全国へ拡散しており、最近の統計では、毎年1,000人以上がATLで亡くなっています。
この様な背景を踏まえ、10年ほど前から医師、研究者、医療関係者および患者・キャリアが協力して、この分野の医療と研究の推進に取り組んで参りました。中でも、平成20年5月に「HTLV-1研究会」を設立し、研究の推進、情報交換、患者、医師、研究者の交流の場を形成して参りました。現在、研究会は、会員数が200名を超えるまで発展して来ました。
一方、患者の方々や医師・研究者の熱心な働きかけが実を結び、政府は、平成22年末に「HTLV-1総合対策」を策定しました。これにより、政府が感染予防対策(妊婦の抗体スクリーニング)、相談支援(カウンセリング)、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進、に取り組む事となりました。これに呼応して、「HTLV-1研究会」は、平成25年11月1日に「一般社団法人 日本HTLV-1学会」に発展的に改組し学会へ移行しました。この学会は、従来の「HTLV-1研究会」が果たして来た当該領域の研究の発展と新たな診断・治療法の開発を促進すると言う機能と任務を引き継ぐと共に、様々な研究活動への援助の仕組みを整えて行く事を目指しております。更に、継続的に様々な関連情報を集約して発信する主体となり、患者やキャリアの方々の要望にも応える体制を整える事を目指しております。
新しい組織がしっかりと定着し、本来の目的と機能を発揮出来る様に、大変微力ですが、努力したいと決意いたしております。会員の皆様方にはご協力並びにご支援の程よろしくお願い申し上げます。
理事長 渡邉 俊樹
東京大学大学院新領域創成科学研究科
メディカルゲノム専攻教授