新着論文紹介
HTLV-1関連脊髄症(HAM)において中枢神経系炎症を促進する可能性を示す
独特なT細胞受容体を持つHTLV-1 Tax特異的細胞傷害性T細胞の役割
Potential Role of HTLV-1 Tax-Specific Cytotoxic T Lymphocytes expressing a Unique T-cell Receptor to Promote Inflammation of the Central Nervous System in Myelopathy Associated with HTLV-1
ジャーナル:Front Immunol 2022 Aug 23:13:993025.
著者:Yukie Tanaka, Tomoo Sato, Naoko Yagishita et al.
責任著者:東京科学大学大学院医歯学総合研究科 微生物・感染免疫解析学分野
https://doi.org/10.3389/fimmu.2022.993025
要約・インパクト
HTLV-1は、成人T細胞白血病やHAMといった深刻な疾患を引き起こします。本研究では、HAM患者に特徴的な免疫反応を引き起こす細胞に注目しました。特に、ウイルスのTaxタンパク質を認識する「細胞傷害性T細胞(CTL)」が炎症を引き起こすメカニズムを調べました。
その結果、HAM患者では特定のアミノ酸配列を持つT細胞受容体(PDRモチーフ)が共通して存在し、それが脳脊髄液に蓄積して炎症を助長していることが判明しました。これにより、脊髄や神経細胞が損傷を受ける可能性が示唆されます。また、これらのT細胞は炎症を引き起こす能力が非常に高く、HAMの病態進行に深く関与していると考えられます。
この研究は、HAMのメカニズム解明に大きな一歩を提供するとともに、新たな治療法開発への道筋を示しています。特定のT細胞や炎症経路をターゲットとする治療が、将来的にHAM患者の生活の質を向上させる可能性があります。この成果はHTLV-1関連疾患のさらなる理解と治療の進展に貢献するものです。