新着論文紹介

RAISINGはランダム導入遺伝子組込み部位を同定するための高性能な手法である。

RAISING is a high-performance method for identifying random transgene integration sites

ジャーナル:Communications Biology
著者:Yusaku Wada, Tomoo Sato, Hiroo Hasegawa, et al.
責任著者:国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター/ウイルス第二部
     聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター
https://www.nature.com/articles/s42003-022-03467-w

要約・インパクト

ウイルス感染およびウイルスベクターを用いた遺伝子治療は悪性形質転換の重大なリスクをもたらすため、感染細胞のクローン増殖を監視することは癌を早期に検出・診断するために極めて重要である。我々は、ウイルス挿入部位を検出することによりクローン増殖性を測定可能な新しい方法RAISING(Rapid Amplification of Integration Sites without Interference by Genomic DNA contamination)を開発した。RAISINGは高感度かつ安価な方法であり、サンガーシーケンス解析とCLOVA(クローナリティ・バリュー)ソフトウェアと組み合わせることによって、高価なハイスループットシーケンスを利用できない人々にとってはとても有用である。今回、本技術を用いて成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の原因となるレトロウイルスHTLV-1に感染した688人の検体を解析し、モデル化を行った結果、ATL患者を100%の感度と94.8%の特異度で同定するクローナリティ値を定義し、縦断的解析でもATLリスク評価に有用であることを明らかにした。今後の研究により、本技術がATL早期診断法のみならず遺伝子治療の安全性評価法として応用されることが期待される。

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