新着論文紹介

HTLV-1プロウイルスゲノムに存在する新規ウイルスエンハンサーとその分子メカニズム

Identification and characterization of a novel enhancer in the HTLV-1 proviral genome

ジャーナル:Nature communications
著者:Misaki Matsuo, Takaharu Ueno, Kazuaki Monde et al
責任著者:熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター
https://doi.org/10.1038/s41467-022-30029-9

要約・インパクト

HTLV-1プロウイルスDNAがATL細胞のがん化に関与することは広く知られているが、ウイルス発見から40年以上にわたり、プロウイルス内の転写制御領域について未解明な部分が残されていた。本研究では、九州地域の医療機関と協力し、実際の感染者検体を用いて高感度なウイルス配列解析法であるMNase-seqを適用し、HTLV-1プロウイルス内の転写制御領域を網羅的に解析した。その結果、新たなエンハンサー領域を特定するとともに、宿主因子SRFとELK-1がエンハンサー活性化に関与する仕組みを解明した。また、このエンハンサーがウイルス遺伝子の発現維持だけでなく、ATL細胞における宿主遺伝子の転写異常にも寄与することが示唆された。本研究は次世代シークエンサーやシングルセル解析を駆使し、従来の手法では見つからなかった新規エンハンサー領域を発見した。これにより、HTLV-1感染の病原性メカニズムの理解が進み、難治性感染症克服への一歩となる重要な知見を提供するものである。

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