新着論文紹介
M-Sec induced by HTLV-1 mediates an efficient viral transmission
ジャーナル:PLoS pathogens 17(11)
著者:Masateru Hiyoshi, Naofumi Takahashi, Youssef M Eltalkhawy, et al.
責任著者:国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1010126
要約・インパクト
HTLV-1の主な感染様式は、感染細胞と標的細胞が直接接触して感染するCell-to-cell(細胞間)感染である。本研究では、宿主タンパク質M-Sec がHTLV-1のCell-to-cell感染に重要な役割を果たすことを明らかにした。
M-Secは本来、T細胞では発現しないが、HTLV-1感染T細胞ではウイルス因子Taxによって異所性発現することを見いだした。M-Secを発現抑制した感染細胞、または我々が独自に同定しているM-Sec阻害剤NPD3064を用いたin vitroおよびin vivo感染実験において感染が減少したことから、M-SecはHTLV-1感染を促進すると考えられた。この感染促進の機序を解析したところ、M-Secは感染細胞の運動能および細胞膜由来のパイプ状構造体であるナノチューブの形成を亢進することがわかった。これらによって、M-Secは感染細胞と標的細胞の接触の機会を増加させると考えられた。一方、M-SecはHTLV-1ウイルス粒子形成にも関与する可能性を見いだした。これらの結果から、M-Secは細胞機能の変化とウイルス粒子形成に関与してHTLV-1のCell-to-cell感染を促進すると考えられた。現在、独自に同定しているNPD3064の抗HTLV-1剤としての可能性を検証している。