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Human retroviral antisense mRNAs are retained in the nuclei of infected cells for viral persistence
ヒトレトロウイルスのアンチセンス鎖mRNAは核に局在しウイルス持続感染に寄与する

ジャーナル:PNAS
著者:Ma G, Yasunaga J-I, Shimura K, et al.,
筆頭著者の所属:Institute of Pharmaceutical Science, China Pharmaceutical University, China
Department of Hematology, Rheumatology and Infectious Diseases, Kumamoto University School of Medicine, Japan
Institute for Frontier Life and Medical Sciences, Kyoto University, Japan
https://doi.org/10.1073/pnas.2014783118.

要約・インパクト

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1),ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)はプロウイルスマイナス鎖にコードされるアンチセンス遺伝子をコードしています。これらのウイルス遺伝子はタンパク質をコードするだけでなくRNAとしても機能を有します。タンパク質を産生するためには細胞質に存在する必要がありますが、RNAとして機能するためには核内に局在すると考えられます。これまで、その局在の調節機構は不明でした。本研究でアンチセンス転写産物は主に核内に存在しており、その機構として短いポリA鎖が関与していることが明らかになりました。本来のプロモーターである3'LTRから転写されるポリA鎖の長さが短くなっていることが核局在と関連していると考えられました。HTLV-1のアンチセンス転写産物であるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)mRNAはCCR4遺伝子のプロモーター領域に結合しており、HBZによるCCR4遺伝子転写活性化のメカニズムであると考えられます。一方HIV-1のアンチセンス転写産物はセンス鎖の転写を抑制しており潜伏感染に関連していました。
レトロウイルスのアンチセンス転写産物が核内でRNAとして作用することはレトロウイルス間で共通したことであると考えられ、本研究はその局在の機構を明らかにしました。

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