新着論文紹介
Anti-Human T-Cell Leukemia Virus Type 1 (HTLV-1) Antibody Assays in Cerebrospinal Fluid for the Diagnosis of HTLV-1-Associated Myelopathy/Tropical Spastic Paraparesis
HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)診断のための髄液中抗HTLV-1抗体検査
ジャーナル:Journal of Clinical Microbiology (2021)
著者:Daisuke Kodama, Masakazu Tanaka, Toshio Matsuzaki, et al.
筆頭著者の所属:ヒトレトロウイルス学共同研究センター(鹿児島大学キャンパス)・神経免疫学分野
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33658267/
要約
髄液中抗HTLV-1抗体はWHO診断基準によりHTLV-1関連脊髄症(HAM)全例陽性だが、無症候性キャリア(HCs)も数割陽性で髄液検査では鑑別できない。近年ゼラチン粒子凝集法(PA)から自動化された化学発光免疫法(CLIA)、化学発光酵素免疫法(CLEIA)へ代わり、HAM診断への影響を検討した。PAはATL患者血清パネルを指標に開発され、種々のIgG・IgMによる抗原感作粒子凝集を目視判定し血清16倍、髄液は4倍(希釈下限)以上を陽性とする。一方CLIA、CLEIAはモノクローナル抗体IgG検出を指標に開発されカットオフ1.0である。HAM、HCs、陰性対照(NCs)計80例の血清、髄液検体で3法測定すると3法間で強相関し、群間比較では抗体レベルは血清より髄液、HAMよりHCsで有意に低かった。抗体真陽性の基準となる標準抗体はないのでPAを真として真偽表分析し、カットオフ値を変えた場合の真偽表の集合であるROC曲線分析も行った。CLIAはCLEIAより高感度で特異度良好である。髄液中抗体低レベル検体で判定不一致即ち検査性能差があり、CLEIAは低感度でHAMを見落としてしまう。髄液カットオフ値をCLIA、CLEIAで調節すると診断能を改善できる。
インパクト
HAM診断の新しい髄液抗HTLV-1検査にはCLEIAよりもCLIAが推奨される。髄液抗体レベルはHAM、HCsで分布が重なっており分離できず、鑑別にはWHO診断基準が必須である。