新着論文紹介

In vivo dynamics and adaptation of HTLV-1-infected clones under different clinical conditions

ジャーナル: PLoS Pathog. 2021 Feb 1;17(2):e1009271
著者: Izaki M., et al.
DOI: 10.1371/journal.ppat.1009271.

要約

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は感染細胞を介してのみ感染するため、生体内では感染細胞を持続的に増やしており、感染細胞数はATLやHAMなどの関連疾患の発症とも密接に関係しています。しかし、生体内における感染細胞の動態に関しては不明な点が多く残されています。まずHTLV-1陽性ドナーからの生体肝移植後に新たに感染したケースで感染細胞の動態を解析し、初期にクローンに大きな入れ替わりがあることが明らかになりました。生体内での生存に適した感染細胞が選択されたことが予想されました。HTLV-1抗体陽性ドナーからの造血幹細胞移植ではレシピエントに入ったドナー感染細胞はほぼ安定して存在していました。これは既に生体内で生存に適した細胞が選択されていたと考えらます。次にHTLV-1感染のモデルとしてサルT細胞白血病ウイルス1型(STLV-1)感染ニホンザルで実験を行いました。CD8陽性T細胞を抗体で枯渇させた後でも感染細胞数の大きな変動は認めませんでしたが、クローンには大きな変動が認められました。このCD8 T細胞の抑制後の感染細胞はウイルス遺伝子の発現能は変化していませんでしたが、増殖能の亢進が認められ、生体内では免疫により、そのような細胞が抑制されていることが示されました。当初、CD8 T細胞の抑制によりTax, SBZ(HBZに相当)の発現が増加することを予想していましたが、ウイルス遺伝子発現量との関連は認められませんでした。Taxの一過性発現は細胞増殖を抑制するので、増殖には別の機構が関係すると予想されます。これらの結果から生体内での感染細胞クローン動態は免疫によってコントロールされていることが明らかになり、その機構の解明が今後の課題であると考えます。

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