新着論文紹介

HTLV-1 targets human placental trophoblasts in seropositive pregnant women
HTLV-1はキャリア妊婦において、胎盤の栄養膜細胞に感染する

ジャーナル:J Clin Invest
著者:Kenta Tezuka, Naoki Fuchi, Kazu Okuma, et al
責任著者:浜口功(国立感染症研究所, 血液・安全性研究部)および三浦清徳(長崎大学, 産婦人科)
https://doi.org/10.1172/JCI135525

インパクト

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、主に母乳を介して垂直感染する。垂直感染対策として、人工乳による乳汁栄養法が取られているが、母児感染率は0%とはならず、約2.4%〜3.6%で感染が成立している。すなわち、母乳以外の経路でHTLV-1が垂直感染している可能性がある。
本研究では、HTLV-1の感染している母体血液、胎盤組織、臍帯血を用いて、胎盤組織を介したHTLV-1の感染経路を解析した。HTLV-1に感染している妊婦のほぼ半数において、その胎児の胎盤絨毛組織にHTLV-1プロウイルスDNAが存在することを明らかにした。なお、胎盤絨毛組織中の絨毛栄養膜細胞はHTLV-1受容体を発現しており、HTLV-1感染に対する感受性が高まっていることが示唆された。また、胎盤組織がHTLV-1陽性の症例中、少数の例においては、臍帯血サンプルにHTLV-1プロウイルスDNAが存在した。In situハイブリダイゼーション アッセイを用いた胎盤絨毛組織の解析から、HTLV-1核酸が陽性の感染細胞の集簇が確認できた。さらに、臍帯血でHTLV-1が検出された症例は、胎盤組織での感染細胞が多い傾向が見られた。さらに、ヒト化マウスモデルを用いた実験から、体外から投与したHTLV-1に感染した胎盤絨毛栄養膜細胞は、ヒト化マウスの標的T細胞へのde novo感染を促進させた。
まとめると、HTLV-1キャリア妊婦においては、胎盤絨毛組織でHTLV-1感染状態が維持され、垂直感染が胎盤を介して起こりうることが示唆された。

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