新着論文紹介

Frosted branch angiitis after allogeneic haematopoieticstem cell transplantation in adult T-cell leukaemia-lymphoma
成人T細胞白血病における同種造血幹細胞移植後に起こる樹氷状網膜血管炎

ジャーナル:THE LANCET Haematology (2020)
著者: Kamoi K, et al.
所属: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 眼科学分野
URL: https://www.thelancet.com/journals/lanhae/article/PIIS2352-3026(20)30226-X/

要約

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染で引き起こされる成人T細胞白血病(ATL)は、かつて生命予後が不良でしたが、現在、同種造血幹細胞移植によって生命予後の改善がみられます。ATL関連眼疾患としては、Knob-like ATL cell Multiple Ocular Infiltration sign (KAMOI sign) を特徴とする眼浸潤や、サイトメガロウイルス網膜炎といった眼感染症など眼に病変を起こすことが知られていますが、これまでに同種造血幹細胞移植によって起こる眼の病変は明らかになっていませんでした。
移植前処置(抗がん剤、放射線照射)を含む同種造血幹細胞移植における一連の治療は、患者さんの免疫恒常性の破綻、免疫寛容の減弱を起こし、全身に炎症が生じることがあります。そこで、ATL患者さんに対して、同種造血幹細胞移植の前後に眼科検査、全身検査を行い、かつ長期に渡るフォローアップを行いました。その結果、ATLに対して同種造血幹細胞移植を行った後に生じる炎症は、他の臓器・部位に先行して眼内に炎症が生じ、樹氷状網膜血管炎という特徴的な所見を呈することを世界で初めて明らかにしました。

インパクト

成人T細胞白血病における同種造血幹細胞移植の炎症は、他の部位に先行して眼内の炎症(樹氷状網膜血管炎)が起こるという本報告によって、移植後の患者さんのフォローアップの際には、積極的な眼科検査を行い、早期に炎症を発見することが重要であることを示しました。現在、同種造血幹細胞移植によって成人T細胞白血病患者さんの生命予後の改善がみられますが、今後は移植後の患者さんのQuality of Life(生活の質)が重要になってきています。患者さんのQuality of Lifeに重要なQuality of Vision (視力の質)を守る観点からも、眼科検査は重要と考えられます。

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