新着論文紹介
Establishment of a novel diagnostic test algorithm for human T-cell leukemia virus type 1 infection with line immunoassay replacement of western blotting: a collaborative study for performance evaluation of diagnostic assays in Japan.
ウエスタンブロット法の代替法としてのラインブロット法を用いたヒトT細胞白血病ウイルス1型感染の新規診断検査アルゴリズムの確立:日本における診断検査性能評価のための共同研究
ジャーナル: | Retrovirology (2020) |
著者: | Kazu Okuma, et al. |
所属: | 国立感染症研究所 血液・安全性研究部 |
URL: | https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32831150/ |
PDF: | PDF(1.2MB) |
要約
従来日本におけるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染の診断には、HTLV-1 抗体の一次検査で陽性となった場合、確認検査としてウエスタンブロット(WB)法が実施されてきた。しかし、WB法では判定保留となる例が比較的多いことが課題であった。本研究において、日本で使用されているHTLV-1抗体検査キットの性能を評価し、特にWB法の代替法としてラインブロット(LIA)法の有用性を評価したところ、LIA法がWB法の判定保留例を大きく減少させ有用であることが明らかとなった。
そこで、確認検査をWB法からLIA法に変更し、さらに確認検査の判定保留例に対しては標準化された核酸検出(PCR)法を実施するという新しい診断検査アルゴリズム(診断指針)を確立するとともに、実際の臨床における妥当性も示した。なお、本報告の中で日本のHTLV-1感染の診断指針(第2版)を英訳版で紹介した。
インパクト
HTLV-1感染の診断に用いるHTLV-1抗体検査は、近年感度・特異度が向上している一方で、WB法では判定保留がしばしば見られる点が課題となっていた。特に妊婦における判定保留の問題は、乳汁栄養法の選択に関わってくるため、より正確な感染の診断(判定確定)が望まれてきた。
本研究において確立された、WB法の代替法としてのLIA法や標準化PCR法を含む新規検査アルゴリズム・診断指針は臨床的に有用であるので、WB法の課題を改善するHTLV-1感染の新規診断手順として推奨する。本研究の成果が、今後HTLV-1診療において感染診断の検査手順の標準化とともに、より正確で信頼性の高い診断に繋がることが期待される。