新着論文紹介
Mortality and risk of progression to adult T-cell leukemia/lymphoma in HTLV-1-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis.
Nagasaka M, et al.
Proc Natl Acad Sci USA, 117(21):11685-11691, 2020
DOI: 10.1073/pnas.1920346117
要約
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、HTLV-1関連脊髄症(HAM)および成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)を引き起こします。HAMの死亡率がATLLの発症によって影響を受ける可能性があるとの懸念がありましたが、これまで証拠が不十分でした。この研究では、5年間の前向きコホート研究で、527人のHAM患者における死亡率、ATLLの有病率および発症率を決定しました。HAM患者の標準化死亡比は2.25であり、ATLLは死因の主要な1つであることが判明しました。HAM患者におけるATLLの有病率と発症率は、それぞれ3.0%および3.81/1,000人年でした。次に、ATLLの発症リスクが高い患者を特定するために、218人のHAM患者のコホートで解析を行いました。その結果、HAM患者の17%で、ATLLおよびHTLV-1感染細胞のマーカーである細胞接着分子(CADM1)陽性のT細胞の増加が特定されました。またゲノム解析により、これらの症例の90%でHTLV-1感染細胞に体細胞変異が見られ、11%の症例ではメジャークローンが存在し、その後の縦断的な観察でATLLを発症しました。この研究により、HAM患者においてATLLが生命予後に重要な影響を与えることを初めて示すことができました。特に、HTLV-1感染細胞がクローン増殖を呈し、ATLL関連の体細胞変異を有する場合に、ATLLの発症リスクが高いことが判明しました。