新着論文紹介

Chronological genome and single-cell transcriptome integration characterizes the evolutionary process of adult T cell leukemia-lymphoma

経時的なゲノム・シングルセルトランスクリプトーム解析による成人T 細胞白血病リンパ腫細胞の進展過程の解析

ジャーナル:Nature Communications
著者:Makoto Yamagishi, Miyuki Kubokawa, Yuta Kuze et al.
責任著者:東京大学大学院医新領域創成科学研究科
https://doi.org/10.1038/s41467-021-25101-9

要約・インパクト

本研究においては、ATLを含む腫瘍で高頻度に変異が見られる遺伝子、HTLV-1ゲノム全長を含むtarget sequenceによる遺伝子解析パネルを開発して性能評価を行い、WGSやWESと比較してもほぼ同等の高い変異検出能を示した。HTLV-1組み込み部位のbar cordingにより感染クローンを検出でき、dominantなクローンの検出、変化などを明らかにできた。HAS-Flowで検出される感染細胞のphenotypeの変化に伴う遺伝子変異も同定が可能であった。RNA-sequencingによりNOTCH1STAT3などの変異に伴いこれらの転写因子のtarget遺伝子の発現が上昇していることも確認された。Single-cell RNA-sequencingとtargeted sequencingの統合解析により腫瘍細胞中のsubcloneごとの遺伝子変異、病期の進展に関わる遺伝子変異を同定することが可能であった。このゲノム・トランスクリプトームパターンはサブクローンの拡大と疾患の進行に関連していた。経時的に検体を得た症例の解析から感染細胞クローンがsequentialに変異を獲得してサブクローンを形成し、terminal phase でTP53, IRF4, NOTCH1などの変異により急激な増殖につながることが示された。Single-cell RNA sequencingにより腫瘍化前の感染細胞の遺伝子発現パターンを解析し、制御性T 細胞関連遺伝子を含む感染細胞共通の発現上昇遺伝子を同定した。本研究で開発した新規統合解析プラットフォームによる拡大サブクローンの早期検出と特性の解析は、本疾患の深い理解を得る上で重要な手法となることが期待される。

 

新着論文紹介一覧に戻る

Page Top