A02(H28,29) 研究者紹介

神経細胞とオリゴデンドロサイト間の相互作用制御による軸索伸長機構の解明

研究代表者:竹居 光太郎(横浜市立大学大学院 生命医科学研究科 生体機能医科学研究室 教授)

神経回路形成因子Lateral olfactory tract usher substance (LOTUS)は神経細胞上に発現して中枢神経系の軸索伸長を阻むNogo受容体およびPaired immunoglobulin-like receptor B(PirB)と結合し、これらの分子のリガンドであるミエリン由来の再生阻害因子の作用を阻止する内在性拮抗物質として軸索伸長を促進する。一方で、LOTUSはミエリン上にも発現し、上記の拮抗作用とは独立した機構により神経細胞上の未知分子との相互作用で軸索伸長を促進する。これらのことから、LOTUSは、軸索伸長を促進する神経細胞とオリゴデンドロサイト間の相互作用分子として位置づけられる。本研究ではこれら2種の作用を解析し、LOTUSを介した神経細胞とオリゴデンドロサイト間の相互作用の制御による軸索伸長機構を解明する。

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グリアネットワークにおける細胞膜ミクロドメインの役割

研究代表者:大海 雄介(中部大学 生命健康科学部 臨床工学科 助手)

酸性スフィンゴ糖脂質、ガングリオシドは神経組織の維持や修復に関与することが分かってきたが、その分子メカニズムについては不明な点が多い。一方、ガングリオシドは、様々な細胞膜上シグナル伝達や細胞間相互作用を調節しているが、これらの調節機能は主に細胞膜上のミクロドメイン(脂質ラフト)にて行われている。我々は、これまでに、様々なガングリオシド欠損マウスを用いて、ガングリオシドの欠損による脂質ラフトの構築異常に起因する神経変性やグリア細胞の活性化について報告してきた。しかし、これまで明らかにした神経組織における脂質ラフトの機能は組織全体の解析であり、膜上のイベントの詳細を克明に観察するところまでは至っていない。こで我々は、グリア-ニューロン間相互作用における脂質ラフトの役割をその主要成分であるガングリオシドを中心に解析し、グリアアセンブリにおけるガングリオシドの意義を明らかにする。

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ミクログリアによるシナプス活動修飾と神経回路の空間的活動制御

研究代表者:和氣 弘明(神戸大学大学院 医学研究科 システム生理学分野 教授)

本研究では2光子顕微鏡による生体イメージングの手法を用いて、ミクログリアがシナプスに直接接触することでその活動を修飾することを示し、さらにその修飾機構によってシナプスの可塑的変化、シナプス後部(スパイン)の位置、数を制御し、機能的神経細胞間結合を規定し、神経回路活動の空間的制御に寄与することを明らかにすることを目的とする。さらにミクログリアが発達障害・精神疾患で活性化されることに着目し、活性化される結果、その生理機能が破綻し、シナプス活動修飾機構、神経回路活動の空間的制御が損なわれ、異常行動・感覚、認知機能低下、学習障害などの症状を引き起こす神経回路基盤をその神経細胞活動を可視化することで明らかにする。

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自閉症におけるマイクログリア依存的シナプス除去機構の破綻とBDNFによるその回復

研究代表者:小山 隆太(東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室 准教授)

神経発達障害へのマイクログリアの関与についての知見は十分ではない。本研究では、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders: ASD)における神経回路変性の一因とされるシナプス除去の不全に、マイクログリアが積極的に関与する可能性を検証する。私たちはこれまでに母体免疫活性化モデルマウスを利用して、ASD様行動を示す仔マウスの海馬神経回路においてマイクログリアによるシナプス貪食に不全が生じ、正常なシナプス除去が生じないことを明らかにした。本研究では、海馬CA3野における神経活動およびマイクログリア依存的なシナプス除去の分子メカニズムを脳由来神経栄養因子(BDNF)に着目して検証する。また、海馬神経活動を遺伝学的もしくは外部環境によって制御することで正常なシナプス貪食を誘導し、ASD様行動を抑制することを試みる。

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ターゲット遺伝子法によるグリアネットモデルサルの同定と繁殖の試み

研究代表者:今井 啓雄(京都大学 霊長類研究所 ゲノム細胞研究部門 准教授)

ニホンザル・マーモセットなどの非ヒト霊長類をモデルとしたグリアネットワークの研究基盤を構築する。ヒトではMRI等の非侵襲的な実験しかできないため、分子・細胞レベルでの研究は困難である。一方で、マウスではトランスジェニック、ノックイン・ノックアウトなどの遺伝子工学が多用できるが、脳機能が発達したヒトのグリアネットワークを知るためには不十分な点も多い。本研究計画では、サル個体からのグリア細胞分離とRNAseqを行い、COMT,MAO, GDNF,各種受容体等のグリア細胞に発現している遺伝子の多型検索を更に発展させると共に、遺伝子多型がもたらすタンパク質表現型の生化学的解析と幹細胞システムの利用による遺伝子変異個体の解析と保存と通じて、分子エビデンスに基づくモデルサルの探索を行う。また、これらの結果に基づき、当該個体(群)の繁殖を行うとともに、遺伝子導入についても検討する。

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