A02(H26,27) 研究者紹介

新規光遺伝学を用いたオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化制御と再生医療への応用

研究代表者:今吉 格(京都大学・准教授)

マウスなどの哺乳類の脳において、ミエリンを形成する細胞であるオリゴデンドロサイトは、主として胎児期から新生児期にその前駆細胞が産生され、生後発達期に分化成熟すると考えられている。しかし、オリゴデンドロサイトの前駆細胞(OPC: oligodendrocyte precursor cell)は成体脳にも存在し、第四のグリアとも見なされその機能に着目が集まっている。また、精神疾患を発症した脳において、OPCの数が減少している事も報告されている。さらに特筆すべきは、OPCは成体脳においても高い細胞増殖能を保持していることが知られている。しかし、成体脳ではOPCは主としてオリゴデンドロサイトにしか分化せず、ニューロンやアストロサイトへの分化能は限られている。本申請課題では、光作動性転写因子を用いて、OPCの増殖や分化を、光を用いてコントロールする事を試みる。これらの解析を通じて、OPCが脳神経回路において担う役割の解析を行うとともに、Ascl1やNgn2などのニューロン分化決定因子のダイナミックな発現をOPCに誘導する事で、OPCからのニューロン産生を試みる。OPCの機能や、グリアネットワークのダイナミックな制御の理解を深めるとともに、OPCを出発点とした新たな再生医療の開発と応用に繋がる事が期待される。

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神経回路発達におけるミクログリアの機能解析

研究代表者:馬場 広子(東京薬科大学 薬学部 機能形態学教室 教授)

哺乳類の脳の発達過程において、神経軸索は伸長しながら過剰に枝分かれし、標的細胞とシナプスを形成した後に余分な枝の刈り込みが行われる。さらに、髄鞘に覆われることによって跳躍伝導を開始する。髄鞘形成時にも、一旦過剰なオリゴデンドロサイトが出現した後、細胞死によって除去され、個々の軸索は適切な長さの髄鞘によって覆われる。このように神経系の発達では、一旦過剰に作られたものが選択的に除去されることにより最終的な微調製が行われ、正常な脳構造が造り上げられる。この時期にはまた、一過性にミクログリアが活性化することが知られている。そこで、本研究では、脳の形態的・機能的発達と成熟過程におけるミクログリアの役割に着目した。この時期のミクログリアに選択的に発現し貪食などに関わる分子の遺伝子改変動物を利用して、神経回路発達の最終段階におけるミクログリアの役割を分子レベルで明らかにすることを目的としている。

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