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先天性グリコシル化異常症
(Congenital Disorder of Glycosylation,
CDG)の病型
Congenital Disorder of Deglycosylation(CDDG)
NGLY1欠損症
N結合型糖鎖が付加されるタンパク質は細胞内の小胞体内腔でその修飾を受けますが、正しい構造を獲得できず“異常タンパク質”と判断されたものは細胞質に輸送され、プロテアソームによる分解を受けることが知られています。この分解経路は“小胞体関連分解”(endoplasmic
reticulum-associated degradation;
ERAD)と呼ばれており、タンパク質の品質管理機構の一端を担っています。
細胞質に存在する脱糖鎖酵素、NGLY1はこの異常糖タンパク質から糖鎖を脱離する酵素で、糖鎖を根元から切断することでERADの効率を高めていると考えられています。NGLY1欠損症はこのNGLY1遺伝子の変異によって引き起こされる潜性遺伝子疾患です。
症状
以下の5つの症状が主症状とされています。一方、患者間の病態のスペクトラムにはかなりの差異があり、症状のみから診断を確定することは困難です。
- 発育遅延および知的障害
- 不随意運動:主に運動亢進性
- 肝機能障害:一過性の血中トランスアミナーゼの上昇など
- 無涙症
- 末梢神経障害
診断
エクソーム、または全ゲノム解析による遺伝子変異部位の同定、および血中/尿中のバイオマーカー(Asn-GlcNAc)の測定により診断を確定します。
原因遺伝子
NGLY1 細胞質の脱糖鎖酵素、ペプチド:N-グリカナーゼをコードする
治療
本疾患に多く見られるドライアイ、便秘、睡眠障害、難聴、脊椎側彎症などの症状に関しては、標準的な治療が適応されています。乗馬などの理学療法が歩行能力や姿勢を保つ能力の維持、向上に効果が認められるケースがあります。米国の患者団体(Grace Science Foundation)が立ち上げた会社(Grace Science LLC)が中心となり、アデノ随伴ウィルス9型(AAV9)ベクターを用いた遺伝子治療の治験が始まっています。
Link
Grace Science Foundation
https://www.gracescience.org
Clinical Trial of Gene Therapy for NGLY1 Deficiency Patients
https://clinicaltrials.gov/study/NCT06199531