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先天性グリコシル化異常症
(Congenital Disorder of Glycosylation,
CDG)の病型
先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症 (IGD)
本疾患は指定難病および小児慢性特定疾病に認定されていて、申請により医療助成が受けられます。
細胞膜上に存在するタンパク質の中にはGPIアンカー型タンパク質とよばれる共通の構造を持つタンパク質の一群があり、アルカリホスファターゼ(ALP)等の酵素をはじめ150種以上知られており、重要な働きを担っています。 GPIアンカーとは、これらのタンパク質の細胞膜への結合に用いられている糖脂質のことを言い、細胞内でアンカー部分とタンパク質部分が別々に合成され、結合して細胞表面で働きます。そのGPIアンカーの合成と修飾に30個の遺伝子が必要であることがわかっています。これらの遺伝子異常でGPIアンカーが欠損すると、150種類以上のGPIアンカー型タンパク質が細胞表面に発現できなくなるので、完全欠損は胎内で死亡します。先天性GPI欠損症はこれらの遺伝子の変異により活性が低下して、細胞表面で重要な働きをするGPIアンカー型タンパク質が減少する、あるいは構造異常が起こることによって発症します。
症状
主な症状はてんかんと精神運動発達障害で、時に特徴的な顔貌、高アルカリホスファターゼ(ALP)血症、手指の末節骨や爪の低形成、難聴、視力障害、先天性心疾患、腎低形成等の種々の奇形を呈します。てんかんを来さない場合もあり、変異を起こした遺伝子の種類や変異の影響の程度により症状が異なります。
診断
末梢血のフローサイトメトリーという方法で顆粒球上に発現するGPIアンカー型タンパク質であるCD16の発現量の低下がIGD診断の決め手になります。確定診断は遺伝子診断で、30個の遺伝子の配列を次世代シークエンサーを使って解析し、変異のある遺伝子を見つけます。変異遺伝子によっては上記のフローサイトメトリー検査で異常が見られない場合もあるので、それが病的な変異かどうかを確認するためには、培養細胞を使った機能解析によって検証します。
原因遺伝子
治療
てんかんの発症には神経細胞に発現するGPIアンカー型タンパク質であるアルカリホスファターゼ(ALP)の欠損が関係していると考えられます。アルカリホスファターゼ(ALP)は細胞表面で、活性型ビタミンB6であるピリドキサールリン酸を脱リン酸化して細胞内に取り込める形のピリドキサールにします。細胞内に入ったピリドキサールは再びリン酸化されてピリドキサールリン酸となり、抑制性ニューロンにおいてγ-アミノ酪酸(GABA) 合成酵素の補酵素として働きます。細胞膜上にアルカリホスファターゼ(ALP)が発現しないと細胞内のピリドキサールリン酸が不足しGABA合成が抑制される結果けいれん発作がおこると考えられます。細胞内のピリドキサールを補うためにリン酸化されていないビタミンB6(ピリドキン、商品名アデロキシン)を投与することによりてんかん発作が軽減する症例があります。ビタミンB1やビタミンB2の取り込みにおいても同様にALPが必要であることがわかっています。一方ビタミンB6が効かない症例もあり、葉酸受容体などアルカリホスファターゼ(ALP)以外のGPIアンカー型タンパク質も多く神経細胞には発現しているので、それらの発現低下がてんかん発作に関与していると考えられ、ビタミンB1、B2や活性化葉酸の投与が試みられています。また根本的な治療として遺伝子補充療法の開発が進められています。