リノール酸を多くするとコレステロール値が血中で低下する。コレステロールが減れば動脈硬化、更には無くなる方も減るだろうと思われ、食事のカロリーの多くをリノール酸に置き換える臨床研究が20世紀後半に幾つか試みられたが、良い結果が得られなかったので、出版されず埋没していた。
Although many studies support this theory, this paradigm has never been causally demonstrated in a randomized controlled trial and thus has remained uncertain for over 50 years. Furthermore, key findings from landmark trials on this topic were not published.
ミネソタ冠動脈試験(MCE)は今となってはどうな?のという仕組みで精神病院や老人ホームに入っている方々の給食を飽和脂肪酸の部分をリノール酸の多いトウモロコシ油に切り替えた。9,423名を4年半の間、追いかけた。食事全体のカロリーのうち飽和脂肪酸から18.5%、多価不飽和脂肪酸から3.8%摂っていたものを、飽和脂肪酸から9.2%、多価不飽和脂肪酸から13.2%に増やした。
コレステロール値が30mg/dl下がるたびに、総死亡が1.22倍(95% 信頼区間 1.14 to 1.32) 増える結果となっていた。
Sydney Diet Heart Study も出版されなかった検討の一つでやはり冠動脈による死亡が多めに有意差はつかないものの出ている。MCE=Minnesota Coronary Experiment; SDHS=Sydney Diet Heart Study; RCOT=Rose Corn Oil Trialの3つの試験は冠動脈疾患が多く、リノール酸だけでは無く魚油に相当するEPAやDHA、同じ植物油でもαリノレン酸を足した LA Vet=Los Angeles Veterans Trial; MRC-Soy=Medical Research Council Soy Oil Trial; DART=Diet and Re-infarction Trial; ODHS=Oslo Diet Heart Study; STARS=St. Thomas Atherosclerosis Regression Studyでは、やや冠動脈疾患に対して保護的に働いているように窺える。Christopher E Ramsdenらが性格の異なるこれらを一つにしてメタアナリシスを行ったのは適切か慎重に見極めた方が良かろう。
感想: トランス型脂肪酸の健康影響も揶揄される中、単に絞ったコーン油=サラダ油というだけでなく、ショートニングやマーガリンの影響を再考する必要もある。人類の歴史でもリノール酸だけで1日の熱量の1割も摂るのは稀であるが糖質制限を優先するあまり油ギッタ食事が正当化されるわけでもないことを思い起こさせる。
[EPA][天ぷら][トランス型脂肪][花王エコナ][羊と心臓]