天ぷら

2006-02-14

WOSというスタチンの代表的な検討が加えられた場所はスコットランド(West of Scotland)。英国は魚を食べない訳ではないがFish and Chipsといって揚げる。イワシの塩焼きを食べるポルトガルやニシンの酢漬けを食べるオランダとは違う。そこでは50名/10万人という日本の冠疾患発症率の3倍近い150名/10万人もの虚血性心疾患が起こる。野菜を食べないとかウィスキーの飲み過ぎとかいろいろと揶揄されている。アイルランドも似たような境遇にある。ここより酷いのは冷戦終結後のロシアである。

さてアメリカ心臓病学雑誌(AJC:97(2) p216)に"Intake of Tuna or Other Broiled or Baked Fish Versus Fried Fish and Cardiac Structure, Function, and Hemodynamics"という記事[Abstract]が出ている。心臓エコー所見と魚の食べ方を述べている。
焼いた魚や煮た魚を食べた群は所見がよく、心不全の原因になる拡張障害の指標のE/A値も0.902と高い。血圧が低い。一方で、揚げた魚を食べた群では、左室壁運動障害(p=0.02)など悪い所見が多く、心拍出率が55%を割った比率が8.8%と最も多い。血圧も高い。

魚と揚げ魚
項目魚週3回以上揚げ魚週1回以上
血圧133/69mmHg137/71mmHg
高卒以上86%63%
男性36%51%

コメント:交絡因子として男女差と学歴が関与するのは痛いが、魚を揚げるというのは、化学実験手技で云えば「ともあらい」といっしょで、EPAやDHAといった多価不飽和脂肪酸が抜けてしまうわけで、揚げ油がラードやヘットであればブタやウシを食べているのと大差ないし、サラダ油だってリノール酸は如何な物かという論を述べる人も、トランス型脂肪酸が悪いんだ[pdf]という人もいる。ソウルフードのキャットフィッシュも頭から決めつける訳ではないけれど、ソウルフード好きなという交絡因子かもしれない。

天ぷらやフライは、魚といえども容赦ないようです。


日本人

2006-02-21追記

外国だけでは片手落ち、Circulation 113(2)p195に磯らの日本でのコホート研究(JPHC研究)が載っている。追跡人口を5分割し、魚の摂取中央値23g/日の群では虚血性心疾患が102,044人・年で78例だったのに対して、最も多くとっていた群、魚の摂取中央値180g/日、92,189人・年で37名であった。

魚と日本人
項目摂取中央値
n3系0.3g/日
摂取中央値
n3系2.1g/日
野菜13回/週28.9回/週
大卒以上14%11%
コレステロール197mg/日517mg/日
飽和脂肪酸13.7g/日26.4g/日
摂取カロリー1537kcal/日2747kcal/日
BMI23.8kg/m223.5kg/m2

なんとも、ちゃんと食べる方が、コレステロールや脂肪が多くても、虚血性心疾患が少なかったりする。アメリカと違い教育が良い程、魚を食べないというのは兎も角、魚を食べないのか、食育がなっとらんのか、はっきり言って困惑する結果であった。
註:(本研究は)魚の成分としての摂取量であり、サプリメントの摂取による予防効果は検討していません。


マクドナルドによる栄養成分
メニューkcalコレステロール
mg
フィレオフィッシュ34863
ハンバーガー(並)25128

トランス型脂肪酸|薬品としての評価はこちらへ、JELIS and MEGA


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