大会企画詳細
9月4日(金)
大会企画 シンポジウム 家族看護・家族支援の未来―ウィズ・コロナ時代にその家族らしい健康な生活とは
座長:浅野 みどり(名古屋大学大学院)
田村 毅(田村毅研究室)
シンポジスト:
藤井 淳子 (東京女子医科大学病院)
長沼 葉月 (東京都立大学)
関根 光枝 (日本赤十字広尾訪問看護ステーション)
指定討論者
上別府 圭子(東京大学大学院)
渡辺 俊之(渡辺医院・日本家族療法学会会長)
本シンポジウムでは、変化しつつあるこの社会にあり変化しつつある家族を看護・支援していくとはどういうことなのか、これからの看護・支援のあり方は、どのようであれば、家族の健康に役立つのかなどについて、3人のシンポジストにお話しいただく。病院臨床で家族支援専門看護師として、退院支援および、家族看護のコンサルテーションを中心に活動している藤井淳子、社会福祉士の養成課程の教員であり、ソーシャルワーク領域、特に高齢者虐待防止のために家族支援の手法を開発してきた長沼葉月、退院支援、療養相談を主に行う部署から訪問看護ステーションに活動の場を移した家族支援専門看護師の関根光枝の3人である。3人は、コロナ渦の現場で見えてきたものや、「つながりにくい」家族の支援から、あるいは訪問してみて初めて見えてきたリアルな「家族生活」を通して、改めて家族を支援する姿勢の基盤について確認し、「その家族らしい健康的な生活」について模索しながら、これからの家族への看護・支援について考えを述べる。家族支援の未来について、ともに考えましょう。
9月5日(土)
大会企画 シンポジウム (同時通訳あり)
日常の医療の中にいかに家族療法を取り入れていくか―精神科医、プライマリケア医、家族支援専門看護師の取り組み
座長:小笠原知子(金沢大学)
市橋 香代 (東京大学医学部附属病院 精神神経科)
シンポジスト:
渡辺 俊之(渡辺医院・日本家族療法学会会長)
松下 明 (社会医療法人清風会 岡山家庭医療センター
奈義・津山・湯郷ファミリークリニック)
児玉 久仁子(東京慈恵会医科大学)
コメンテーター:
ジョン・ローランド(Northwestern University)
メディカル・ファミリーセラピー(MedFT)は身体疾患や器質性精神疾患など健康問題を抱えた患者とその家族に対し、システム論とバイオサイコソーシャルモデルを基盤にして提供される家族療法、家族支援である。そこでは小児から高齢者までの患者が、疾患の発症や治療において家族に及ぼすさまざまな変化や課題に対し、医療者との協働関係を通して対処していくアプローチが取られる。特に超高齢社会になった日本において、身体疾患家族への家族療法や家族支援は今まで以上に重要な役割を担うに違いない。医療現場で家族に関わる専門職は医師、看護師、ソーシャルワーカー、公認心理師、ケアマネージャーなど多岐にわたる。今だ医療現場は専門性志向が強いサイロシステム(縦割り組織)であることは否めない。職種間葛藤を乗り越え対話を増やし、協働的ケアを推進することがMedFTの役割である。
9月5日(土)
大会企画 シンポジウム (同時通訳あり)
マスターセラピストが語る「多様性」 Master therapists’ narratives on “diversity”
座長:田村毅 (田村毅研究室)
シンポジスト:
フロマ・ウォルシュ(University of Chicago)
渋沢 田鶴子 (麻布ウェルネス代表、元ニューヨーク大学)
中村 伸一 (中村心理療法研究室)
Key Words: diversity (多様性)、culture (文化)、gender (ジェンダー)、sexuality (セクシュアリティ)、language (言語)
This is a precious opportunity to meet leading experts of family therapy worldwide. Three presenters have rich experience working with diverse families. They will 1) provide conceptual framework regarding diversity and issues for clinical practice, 2) share their clinical and personal experience with diverse families in terms of culture, ethnicity, language, gender, sexuality, community type (urban, suburban and rural) and whatever we choose, and 3) share implication how to apply diversity framework in our Japanese cultural and social context. The presentation will be bilingual (Japanese and English) with translation, which may be another dimension of diversity.
この企画は、国際的に有名なマスターセラピストたちの語りを聴く貴重な機会です。3名の演者たちは、様々な意味での家族の多様性について豊富な経験を持っています。まず、1)多様性(ダイバーシティ)の概念とその心理臨床における課題について概説し、次に2)多様な臨床体験について、文化、民族性、言語、ジェンダー、セクシュアリティ、地域性(都会と田舎)などの観点から語ります。さらには、3) 多様性という枠組みを日本の社会文化的枠組みの中でどう活かすことができるかについて言及します。プレゼンテーションは通訳付きの日英二ヶ国語で行われます。これも多様性の一つです。
9月5日(土)
大会企画 シンポジウム (同時通訳あり)
家族の多重暴力 複数の暴力が起きている家族の理解と支援~IPV、児童虐待、高齢者虐待のつながり~
座長:上別府 圭子(東京大学医学系研究科 教授)
キタ 幸子(東京大学医学系研究科 助教)
シンポジスト:
チャン・コー・リン・エドワード(香港理工大学 教授)
白川 美也子(こころとからだ・光の花クリニック 院長)
岸 恵美子(東邦大学大学院看護学研究科 教授)
パートナーからの暴力(Intimate partner violence:IPV)、児童虐待、高齢者虐待といった家族で起こる暴力は、個人・家族全体の健康に深刻な影響を与える健康問題である。
従来、IPV、児童虐待、高齢者虐待は独立した問題として認識・支援されてきた。しかしながら、暴力を抱える家族は、しばしば複数の暴力を同時に抱え、被害者がときに加害者となり(その逆もある)、時を経て連鎖するなど、複雑で混沌とした現象・問題を呈する。そのため、従来の単一の暴力へのアプローチでは、そのような家族を包括的・長期的に把握・支援することは難しく、各暴力の専門家の連携を基盤とした、暴力を抱える家族を一つのシステムとして捉えた新たな家族支援アプローチを検討・創生する必要がある。
このシンポジウムでは、家族の多重暴力(Family Poly-victimization)の提唱者であるEdward Chan Ko Ling教授、IPVや児童虐待、高齢者虐待の領域における第一人者である白川美也子医師、岸恵美子教授をお招きし、それぞれの専門領域からのご講演で、複数の暴力が起きている家族に関する理解を深めたいと思う。更に、パネルディスカッションを通して、そのような複雑な現象が起きている家族にどのような家族支援ができるのかを考えていきたい。
9月5日(土)
大会企画 シンポジウム
家族システム論は新型コロナウイルス感染症の大流行時にどのように貢献できるのか?
~あいまいな喪失とレジリエンスの視点から~
座長:後藤雅博(こころのクリニック ウィズ)
シンポジスト:
渡辺 俊之(渡辺医院/高崎西口精神療法研修室)
石井 千賀子(石井家族療法研究室)
瀬藤 乃理子(福島県立医科大学)
2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界各地で大流行し、これまでの暮らしや人々の社会的な繋がりに大きな影響をもたらしている。この流行による世界システムの変化は、国家、都市、家族、個人というすべてのサブシステムに変化をもたらした。
システムのすべてのレベルで「変化」と「喪失」が生じ、未知のウィルスへの対応よってもたらされる多くの「あいまいな喪失」が、人々の苦悩の大きな要因となっている。
このようなパンデミックの状況下で、「家族システム論」の考え方や「レジリエンス(resilience)」の視点は、人々や社会にどのように貢献できるだろうか? また、Pauline Bossが提唱する「あいまいな喪失」というレンズ(理論・スキル・認知)がどのように役立つかについて、フロアの参加者とも意見交換をしながら、議論を深めていきたい。
本シンポジウムは、オンラインZoomによって行う。
(1)新型コロナウイルス流行下で起こっているさまざまな社会現象の国内外の状況と、取り組まれている支援について、喪失とシステム論の視点から発表する。(渡辺)
(2)その状況に「あいまいな喪失」という名前をつけ、そのレンズを活用したときに見えてくる視点について発表する。(石井)
(3)このような危機的状況の中で、家族療法やレジリエンスの視点がどのように寄与できるのか、その可能性と重要性について発表する。(瀬藤)
(4)パンデミックの中で人々が支え合い、不安をかかえながらも安定して生きていくために、「あいまいな喪失」のレンズがどのように役立つのか、そして家族療法家が何を提供できるかについて、Zoom参加者とともに議論する。