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施設集約化委員会からの報告ならびに決定事項

施設集約化委員会(心臓・胸部大血管分野)での決定事項 2

2008年10月

施設集約化委員会 委員長 四津良平

心臓・胸部大血管分野における施設集約化
  3学会(日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日本血管外科学会)の理事会での承認が得られ以下のことが決定された。
  1. 医療の安全、若手の育成および医療資源の有効活用の観点から,心臓血管外科専門医認定機構で以下の条件改定を行う.
    心臓血管外科専門医資格の新規取得を目指す修練医について
    1. 基幹施設または関連施設であっても、心臓・胸部大血管手術数が年間25例未満(算定する前年分)の施設で行った心臓・胸部大血管手術は修練経験数として認めない。施設の年間手術数は、前年(1月1日〜12月31日)の手術数を用いる。
      (腹部大動脈手術は、心臓・胸部大血管手術症例には含まない)
    2. 血管外科分野(腹部大動脈〜末梢血管)の手術は、従来どおり心臓血管外科専門医認定機構の修練経験数として認め、算定できる。すなわち改定はない

  2. 上記の改定は2010年から運用を開始する
    2009年の心臓・胸部大血管手術数が25例以上の修練施設で手術を行った修練医は、2010年の手術を修練経験数として算定できる。
    (2009年の手術数が25例以上の修練施設は、2010年の手術数が25例未満でも2010年の手術数を算定できるが、2011年は算定できない。以降の年間症例・算定数についても同様である)
  3. 修練施設には日本胸部外科学会学術委員会調査への毎年の報告を義務づける.またデータベース機構に参加し、症例を登録することが望ましい。
  4. 3学会(日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日本血管外科学会)や専門医認定機構のホームページで改訂や今後の見通しについて報告するとともに,会員の意見を広く求める.心臓血管外科専門医認定機構cvs-master@umin.ac.jp
将来へ向けて
  当委員会は25例基準の影響を多面的に検討し,2〜3年後に施設認定基準を50例以上に引き上げることを検討する.



施設集約化委員会からの報告ならびに決定事項 1

2008年5月

施設集約化委員会 委員長 四津良平

背景
   2002年の診療報酬改定では,年間症例数100件に満たない施設の診療報酬を7割に減額する基準が定められ、心臓外科施設の6割以上をいきなり減額の対象とするものであった.
その後現在でも,中医協の分科会では関連の政策に対する議論が行われている.一方で2007年4月から施行された第5次医療法改正により,今後は各医療機関が死亡率や合併症発生率などのアウトカム情報の公開を義務づけられる可能性もある.このように外科医療を取り巻く日本の制度は,現在変革の時期にある.従って,患者への最善の医療を提供するために必要な政策を提言し,行動を実践していくことは,学会にとっても重要な課題である.
日本胸部外科学会と日本心臓血管外科学会では,中心的な課題として「施設集約化」を掲げ,2006年10月にワークショップを共催した後,日本血管外科学会を加えた3学会合同の施設集約化委員会を立ち上げ,実証的なデータに基づいて,継続的な検討を行ってきた.

集約化の前提となる施設の年間症例数と治療成績の関係については,既に海外の分析を対象にしたシステマティックレビューにより,症例数の多い施設と良好な治療成績が関連することが示されていた(文献1,2).一方で日本の心臓・胸部大血管外科領域においては,これまで関連する実証的な知見はなく,今回,施設集約化委員会は冠動脈バイパス手術を対象に臨床的リスクを考慮した分析を実施した(文献3).また胸部外科学会学術委員会も,胸部外科領域に全般に対する広範な分析を行っている(文献4).これらの分析結果では多くの先行研究と同様,施設の年間症例数と治療成績が負の相関があることが示されている.

一方で施設集約化委員会では施設集約化に伴う治療成績や患者アクセスをはじめとした様々な影響についてもシミュレーションを行い分析した(文献5).これらの実証的分析,及び各地域の実情の両面を踏まえ,施設集約化委員会では,心臓・胸部大血管分野患者への最善の医療提供体制の構築に向けて,下記の事項を決定事項とする.

施設集約化委員会(心臓・胸部大血管分野)での決定事項
  3学会(日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日本血管外科学会)の理事会での承認が得られ以下のことを決定事項とする.
  1. 医療の安全と若手の育成の観点から,心臓血管外科専門医認定機構で以下の条件改定を行う.
    1. 新規に心臓血管外科専門医資格の取得を目指す修練医において、心臓・胸部大血管手術症例が年間25例未満(申請時の前年度分)の施設で行った心臓・胸部大血管手術数は経験数として認めない。
      なお腹部大動脈手術は、心臓・胸部大血管手術症例には含まれない。
    2. 血管外科分野(腹部大動脈から末梢血管)の手術数は、従来どおり心臓血管外科専門医認定機構の手術経験数として認め改定はない
    3. 施設の年間症例数は毎年検討し,前年度(直近)の年間症例数の数値が基準を上回っている場合に、当該年度の手術症例をカウントできる
    4. 年間症例数の根拠となる,日本胸部外科学会学術委員会調査への毎年の報告を義務づける.

  2. 本制度は2009年の手術数を元に,2010年から運用する.
  3. 3学会(日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会,日本血管外科学会)や専門医認定機構のホームページで改訂や今後の見通しについて報告するとともに,会員の意見を広く求める.

将来への展望
   心臓・胸部大血管手術の25例基準による施設認定はデメリットへの影響が微弱であるのと同様,成績改善や医療費をはじめとしたメリットへの影響も少ないことが予想される.当委員会では25例基準の影響を多面的に検討し,2〜3年後に施設認定基準を50例に引き上げることを検討する.

これらの基準は原則として全国一律だが,特にアクセスが不良な地域などについては,学会の支部長を通して個別の調整を行う必要がある.アクセス不良地域の多くは今回の基準変更以前に既に問題を有しているため,今後の取り組みを契機に緊急搬送経路の確保や搬送体制の整備に取り組むことにより,アクセス面でも改善を計ることが可能となるであろう.一方で統廃合(科の統合)により治療成績の向上と促進と同時に,アクセス改善に取り組むことで地域医療を再構成し,各地域においてより充実した心臓大血管外科医療を提供することが可能となるであろう.
今回の決定は学会発の医療政策の第一歩である.患者のための最善の医療というプロフェッションとしての責務を果たす中で,心臓血管外科医の労働環境の改善や,心臓血管外科医の専門性に応じた支払いの実現に向けて,今後も3学会合同で取り組んでいく予定である.治療成績や医療費に対するより明瞭な効果が期待される50例の認定基準の実施にあたっては,労働環境や診療報酬の改善も含めた提言も行うことを検討している.

3学会の会員に向けて
   今回の決定事項は,学会の方針にも関連することであり,3学会の多くの会員に広く周知し,多くの会員から意見を参考にすることは不可欠であると考えている.またフィードバックについても施設集約化の是非だけでなく,集約化政策の改善案,地域単位での取り組みの実際例,外科医の処遇改善など他の政策との連動を含め,多様な情報が有用である.

ご意見のある方は、以下のアドレスにご意見をください。
心臓血管外科専門医認定機構cvs-master@umin.ac.jp

参考文献
 
  1. Halm EA, Lee C, Chassin MR. Is volume related to outcome in health care? A systematic review and methodologic critique of the literature. Ann Intern Med. Sep 17 2002;137(6):511-520.
  2. IOM, Hewitt M. Interpreting the Volume-Outcome Relationship in the Context of Health Care Quality: Workshop Summary. Washington DC: National Academy Press; 2000.
  3. Miyata H, Motomura N, Ueda Y, Matsuda H, Takamoto S: Effect of Procedural Volume on Outcome of CABG Surgery in Japan. Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery, in press
  4. Committee for Scientific Affairs, Kazui T, Osada H, Fujita H An attempt to analyze the relation between hospital surgical volume and clinical outcome. Gen Thorac Cardiovasc Surg 2007, 55: 483-92.
  5. 宮田裕章,近藤正晃ジェームス,本村昇ほか:施設集約化における論点とシミュレーション(2).胸部外科 2007, 60: 418-425
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