Japanese Associationof Cardiovascular Intervention and Therapeutic

CVIT東海北陸地方会 支部長
藤田保健衛生大学病院循環器内科
主任教授
尾崎行男

CVIT東海北陸支部 事務局

藤田保健衛生大学 循環器内科

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 CVIT東海北陸地方会 支部長のご挨拶として、PCIの過去、現在、未来と、本地方会の、社会への貢献について述べさせて頂きます。

 現在、わが国においては、食生活や生活習慣の欧米化に伴い心臓病は急増し、現在死亡原因の第2位ですが、この心臓病による死亡の中でも、急性心筋梗塞(AMI)などの急性冠症候群(ACS)や虚血性心疾患ベースの心不全などによる死亡が全体の半数以上を占めており、急性冠症候群(ACS)や狭心症の治療は喫緊の課題です。

 急性心筋梗塞(AMI)の死亡率は、20 年前の1995 年当時我が国においては人口10 万人あたり24人で米国の85人、オランダの101人に比し数分の一でしたが、その後米国やオランダではEBM に基づいた医療システムの整備、医療資源の投下、啓蒙活動などにより、2010年の米国の急性心筋梗塞の死亡率は人口10 万人あたり米国40人、オランダ38人と、それぞれの国で1995 年に比し、半分以下に減少しているのに対し、日本では、食生活の欧米化や、高齢化、相対的な循環器医師の不足になどにより33人と確実に増加しており、欧米との差は小さくなり、むしろ今後凌駕する可能性すらある状況です。

 この虚血性心疾患に対する治療法として、1977年に冠動脈インターベンション(PCI)が始まりました。人類初めてのPCIは、グリュンチッヒ医師らにより1977年秋にスイスのジュネーブで始められました。このバルーンを用いたPCI (POBA)は、その低侵襲性、簡便性から普及しましたが、バルーン後に冠動脈解離などによる急性冠閉塞が手技上のネックでした。またAMI症例ではtPAに比し有効性が示されたものの、待機的症例では、解離フラップ等による急性冠閉塞が、5%程度に発生するなどが、大きな問題でした(第1期[1977~1986年]:バルーン時代)。

 このバルーンによるPCIの限界を克服すべく、ウルヒ シグアート教授(ローザンヌ、スイス)、パトリック シェライシス教授(ロッテルダム、オランダ)らにより通常型ステント(BMS)の時代が1986年早春に幕を開けました。このBMSにより、冠動脈解離フラップによる急性冠閉塞というPCI operatorの精神的、肉体的ストレスも少なくなりました。後に完全閉塞病変(CTO)にも有効なことが明らかとなりました。

 また、シェライシス教授らにより行われた、世界で始めてのバルーンとステントとのrandomized study (BENESTENT)により、ステントはバルーンに比べ、より大きな冠動脈内腔(luminal gain)を得られ、再狭窄率が有意に低くなることもBMS普及の追い風となりました(Serruys PW. et al. N Engl J Med 1994;331:489-495)。欧米ではこのBENESTENTのようなevidence based medicine (EBM)の考え方が、PCIの初期から導入されましたが、わが国では残念ながら、前向きの無作為試験で治療を評価することは普及せず、PCIを行うoperatorの好みでデバイスをチョイスするいわゆるexperience based medicineの考え方が主流でした(第2期 [1986~1999年]; BMS時代)。

ステント再狭窄はBMSのアキレス腱となり、この問題を克服するため開発されたのが薬剤溶出性ステント(DES)です。このDESはオランダ ロッテルダムのパトリック シェライシス教授とブラジル サンパウロのエドワード ソーサ医師により1999年末に第一例目の臨床応用が始まりました。日本での認可は2004年でしたが、このDESにより、BMS時代のアキレス腱であったステント再狭窄はほぼ克服され、PCIの将来に死角はないと誰もが信じたのが、DESの創成期でした(第3期 [1999年~]; DES時代)。

 DESにより、すべてのPCIの問題点が解決されたかに見えましたが、現実はそうではありませんでした。植え込み後1年以上経って発生する超遅発性血栓症(very late stent thrombosis; VLST)の発生が2004年にRotterdamのグループから報告され、以後この慢性期に発生する厄介な合併症に注目が集まりました(McFadden EP. et al. Lancet 2004; 364: 1519–21)。このLST/ VLSTの頻度は、連続症例を対象としたBern Rotterdam studyでは年率0.6%、また日本の登録された症例のみを対象としたJ-Cypher registryでは年率0.2%と報告されました。この原因の一つにステントストラットが浮いているincomplete stent apposition(ISA)が、また造影上はPSSと言われる現象に注目が集まりました。さらにDES内に発生する新たな動脈硬化Neoatherosclerosisも新たな問題となりました。

 これらのVLSTやNeoatherosclerosisにはまたDESの残存するポリマーが問題でしたが、おそらく2015年の秋に本邦でもリリースされる新たなDESでは、ポリマーが完全に消失し、慢性期にはBMSになるDESも発売予定であり、注目されています。

 もう一つの解決策の一つとして提案されているのが、同じくシェライシス教授らのグループにより開発されたBioresorbable scaffolds (BRS)です。BRSの一種のBVSではpoly-L-lactic acid (PLLA)をステントの支持母体とし、poly-D, L-lactic acidに薬剤溶出性ステントのも使用されているeverolimusをまぜてcoatingしたものです。このステントでは再狭窄に対しては薬剤溶出性ステントとして機能し、PLLAは時間とともに消失する材質であることから、遅発性血栓症は理論上発生しないことになります。2014年秋にパトリック シェライシス教授におりTCTで報告されたABSORB II研究の1年の結果ではXIENCEステント変わらない良好な成績が報告されました。このBRSは金属でないことからその後のCTによる病変評価もやり易く、将来のside branch accessも当然容易となります。また他の薬剤を使用することにより、プラークの安定化や動脈硬化の進展そのものも局所で抑制できる可能性も示唆されています(2008年~:BRS時代)。

 このように日本では虚血性心疾患は増加する一方、PCIは急速な進歩を遂げており、CVIT東海北陸地方会もこの進歩に合わせて、人類に貢献することが求められています。今後とも、私たちPCI関連の医師は、コメディカルと協力しながらこの使命を果たして行きましょう。