研究対象
Retrovirus
HIV (human immunodeficiency virus)
SIV (simian immunodeficiency virus)
HTLV (human T-cell leukemia virus)
MLV (murine leukemia virus)
・ HIV感染症克服に向けての総合戦略
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研究の視点
ウイルスと宿主との関係は密接である。そのため、多くの場合、各々のウイルス宿主は限定され、「種の壁」が存在する。たとえ
ば、
HIV-1感染による典型的なエイズ発症はヒトでのみ成立する。宿主免疫は自然免疫と獲得免疫とに大別できるが、この「種の
壁」
に大きな役割を有するのは自然免疫である。病原性ウイルスとして知られているものの多くは、この自然免疫による制御をある程度逃
れたものと考えることができるが、感染後に誘導される獲得免疫を中心とした宿主防御免疫によって排
除される。しかし、HIV は、
この獲得免疫からも逃れ慢性持続感染に至る点で、注目すべきウイルスである。つまり、(培養細胞レベル [in
vitro] では効果を発揮する) 抗体が誘導されても、体の中では (in
vivo)、ウイルスが十分には排除されないのである。我々は、この HIV
慢性持続感染成立機序を解明し、さらにはその成立を阻止するエイズワクチンを開発することを目的として、サル免疫不全ウイルス
(SIV) 感染霊長類動物エイズモデルを用いた研究を進めている。
獲得免疫反応においては、種の違いというよりは、種内の遺伝子多型が問題となる。我々は、この遺伝子多型を考慮した宿主獲得 免 疫とウイルスとの相互作用の解明をめざして研究を進めている。特に、HIV感染症を対象とし、獲得免疫 系 の代 表的エフェクターである中和抗体と細胞傷害性Tリンパ球 (CTL) の役割に着目している。
研究プロジェクト
1. HIV慢性持続感染成立機序・エイズ発症機序の解析
霊長類動物エイズモデルにおける解析を進め、CTL
等の獲得免疫反応が誘導されるにもかかわらずHIV慢性持続感染が成立する機序の解明を目的とした研究を行っている。
キーワードは、「組織特異性」「宿主遺伝子多型」「感染免疫」「ウイルス進化」。
2. エイズワクチン開発
CTL誘導のためのデリバリーシステムとしてセンダイウイルスベクターを用い、抗原選択システム および 抗体誘導
併用ワクチン システムの検討を進めている。
これまでに、HIV複製抑制に中心的役割を担う CTL を効率よく誘導するセンダイウイルスベクターワクチンシステムを開発し、これを用いてワクチン誘導 CTL による HIV 複製制御の可能性を初めて示すことに成功した。さらに、主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) 遺伝子型をマッチさせた霊長類動物モデル確立を進め、ワクチンによりエイズウイルス複製制御に至る世界で唯一の霊長類動物群を樹立した。現在、こ の独自のシステムを用い て、HIV 複製制御につながる免疫機序の解明を進展させるとともに、ウイルスと宿主の攻防の結果生じるウイルスゲノムの進化についての解析を進めている。これらの研究は、我々が臨床 応用をめざしているエイズワクチンの今後の方向性を決めるうえでも極めて重要である。
共同研究
・霊長類動物モデル研究
- 医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター https://www.nibiohn.go.jp/activities/primate.html
- 京都大学医生物学研究所 https://www.infront.kyoto-u.ac.jp/
- 京都大学ヒト行動進化研究センター人類進化モデル研究センター https://www.pri.kyoto-u.ac.jp/sections/chemr/
・MHC研究
- 東京医科歯科大学難治疾患研究所分子病態分野 https://www.tmd.ac.jp/mri/mri-mpath/
- 近畿大学医学部免疫学教室 https://www.med.kindai.ac.jp/immuno/
・ウイルス抗原特異的免疫反応研究
- 熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター https://kumamoto-u-jrchri.jp/
- 国立感染症研究所治療薬・ワクチン開発研究センター https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-imm.html
・病理学的研究
- 国立感染症研究所感染病理部 http://www0.nih.go.jp/niid/pathology/
・ワクチン開発研究
- 株式会社IDファーマ(アイロムグループ) https://www.iromgroup.co.jp/group/advanced/
- International AIDS Vaccine Initiative (IAVI) https://www.iavi.org/
・HLA関連HIV変異研究
- University of Ghana, Noguchi Memorial Institute for Medical Research https://www.noguchimedres.org/
- National Institute of Cholera and Enteric Diseases (NICED) https://niced.org.in/
- National Institute of Hygiene and Epidemiology (NIHE) https://nihe.org.vn/en
当研究室で行っている実験手技
1. 血漿中・リンパ球中のウイルス定量
2. ウイルスゲノム塩基配列解析
3. 細胞表面マーカーの解析(フローサイトメトリー)
4. 特定表面マーカー発現細胞の分離
5. ウイルス特異的Tリンパ球反応の測定(細胞内サイトカイン免疫染色)
6. ウイルス特異的抗体・中和抗体反応の測定
7. ウイルス変異体・組換えウイルス作製
8. 細胞への遺伝子導入・発現およびウイルスベクターを用いた抗原発現
9. 培養細胞におけるウイルス感染・増殖能およびCTLのウイルス複製抑制能の測定
10. 霊長類動物エイズモデルにおけるワクチン接種・ウイルス感染実験