土橋が見捨てた土橋鑑定
ーこうしてm/z258は墓標になったー

見捨てられた鑑定と16年間にわたる二枚舌:土橋は鑑定わずか半年後、一審が始まってわずか1ヶ月の時点 で(2001年8月)、弁護団に自分の鑑定(m/z258)が捏造だと見破られたことを悟り,密かに自分の鑑定を見捨てて、世界標準のベクロニウム質量分析結果(m/z557, m/z279)の方へ走った.そうやって研究者仲間には「自分は世界の土橋だ」と誇り出世階段を上り詰める一方で,法廷では16年にわたり,一貫して「世界中の研究者が何と言おうと神に誓って私はm/z258の守護神であり続ける」と主張した。このような16年間にわたる二枚舌(捏造鑑定ロンダリング)を知った検察官は,怒りの余り土橋鑑定に対し自爆テロを行った。こうして土橋鑑定は鑑定人本人と検察官の両方から十字砲火を浴びて跡形も無くなった。といっても、もともと全てが捏造なのだから、跡形も何もない.あるのはただ,m/z258という名の墓標のみである.

m/z258ロンダリング土橋鑑定を全面的に否定し世界標準=弁護団側にに寝返っていた土橋
質量分析を用いた薬毒物分析の最高権威であり、日本法中毒学会副理事長の土橋 均は、北陵クリニック事件で毒殺魔守大助を無期懲役の刑務所送りにした動かぬ証拠、いわゆる土橋鑑定で「ベクロニウムを質量分析して検出されるイオンはm/z258であり、m/z557は陰も形もない」と一貫して主張してきた。

しかし、北陵クリニック事件再審請求即時抗告審に提出された新証拠は、以下に示すように、土橋自身が、「ベクロニウムを質量分析して検出されるイオンははm/z557であって、m/z258は陰も形も無い」という、世界の質量分析研究者ならば誰でもが知っている、再現できる事実(もちろん志田鑑定も同じ結果を出している)を認め、土橋鑑定とそれを唯一の物的証拠としていた確定判決を全面的に否定していたことが明らかになった。

土橋自身による土橋鑑定の全面的否定という衝撃の事実は、何と土橋自身が共同著者となり(つまり土橋自身がその内容を全面的に承認し)、学会誌に掲載された公表論文の中で明らかにされていた。この論文(法科学技術2011;16(1):13―27)は、日本法科学技術学会がインターネットで全世界に公表し、誰でもダウンロードできるので、興味のある方は是非ともご覧頂きたい。

まず、この論文の表1には、検討した24種類の薬物が列挙されており、その20番目がベクロニウムであり、分子量イオンがm/z557であると明記されている。さらに、図1には24種類のマススペクトルが呈示されており、その20番目のベクロニウムのマススペクトルもm/z557が示されている(拡大図)。もちろんそこにはm/z258は陰も形もない。

「ベクロニウムを質量分析して検出されるイオンははm/z557であって、m/z258は陰も形も無い」。土橋も認めているこの事実が最初に明らかになったのは、1989年、ハーバード大学のグループによってである(Organic mass spectrometry 1989;24:723)。この論文には以下のようにある、In the FAB spectra of these salts, the particle bombardment process induces an initial loss of a halide to yield an ion of highest mass m/z 651 for pancuronium and m/z 557 for vecuronium. これらの塩は高速原子衝撃法によりハロゲン化合物を失う。その結果、パンクロニウムはm/z651に、ベクロニウムはm/z557に最強の信号が検出される、(FABはfast atom bombardment 高速原子衝撃. 質量分析において用いられるイオン化技術の一種)さらに、図5には、上記の土橋の論文と全く同様に極めて明瞭なm/z 557のピークが見られる。もちろんそこにはm/z258は陰も形もない。この論文もインターネットで全世界に公開され、誰でもダウンロードできるので、興味のある方は是非ともご覧頂きたい

Bakerらが最初に示したこの所見はその後も世界の定説となり、法科学研究機関として世界的に有名な米国のNMS研究所から2006年に出た論文(J Am Soc Mass Spectrom 2006;17:1456–1468)にも全く同じ事実が記載されている。その表3には、ベクロニウムを質量分析した時の分子イオンはm/z557であることが明記されている。そして図3には上記の土橋の論文と全く同様に極めて明瞭なm/z 557のピークが見られる。もちろんそこにはm/z258は陰も形もない。

以上土橋鑑定は、土橋自身と世界的研究機関の両者から既に全面的に否定されていることが明らかとなった。ところが、現在(2017年5月)行われている北陵クリニック事件再審即時抗告審で、岩崎吉明検事は、土橋鑑定を「いささかの揺るぎも無い科学的証拠」と大絶賛し、世界の定説を確認した志田鑑定をイカサマだとして全面的に否定している。それだけ読むと土橋の裏切りを全く知らなかったかのようであるが,検察官意見書の最後尾にはとんでもない爆弾が仕掛けられていた。

1.志摩典明,中西啓子,片木宗弘,鎌田徹,財津桂,鎌田寛恵,西岡裕,三木昭宏,辰野道昭,土橋均,鈴木廣一. LC/MSn を用いた薬物スクリーニングシステムの構築―液体クロマトグラフィー/質量分析における保持指標の適用―. 法科学技術2011;16(1):13―27.
2.Baker TP, Vouros P, Martyn JAJ. Mass Spectrometry of Pancuronium Bromide and Related Quaternary Ammonium Steroids Using the Moving Belt LC/MS Interface. Organic mass spectrometry 1989;24:723-732.
3.Kevin D. Ballard, William E. Vickery, Loan T. Nguyen, Francis X. Diamond, Fredric Rieders. An Analytical Strategy for Quaternary Ammonium Neuromuscular Blocking Agents in a Forensic Setting Using LC-MS/MS on a Tandem Quadrupole/Time-of-Flight Instrument. J Am Soc Mass Spectrom 2006;17:1456–1468.

土橋がm/z258を見捨てたのはいつだったのか?→実は鑑定半年後の2001年8月
では、土橋はいつ検察・裁判所を裏切り、弁護団側に寝返っていたのだろうか?それは、何と鑑定わずか半年後の2001年8月だった。そのこと,これも現在市販されている、薬毒物分析実践ハンドブックなる専門書籍としてその内容を誰でも確認できる。この書籍の308ページの表6.6をご覧頂きたい。ここには、前駆イオン[M+H]2+=2価の分子量関連イオンのm/z279、m/z356、m/z398、m/z249の4種のイオンが示されているだけで、土橋鑑定の命であるとされていたm/z258は陰も形も無い。なお、m/z279はベクロニウムの2価イオンであり、このm/z279もm/z557と同様、ベクロニウムを質量分析すると検出されることは、世界の定説となっている。

土橋鑑定に対する自爆テロ
科学捜査と研究不正
法的リテラシー:北陵クリニック事件