血税詐欺特区と化した東京地裁医療集中部
裁判所・原告・検察・医師が寄って集っての池田意見書潰し
はじめに
ここで紹介するのは、受刑者の死亡が刑事施設での診療の過失に拠るものだとして、いずれも東京地裁医療集中部に提訴された国家賠償訴訟の3事件である。 いずれの事件でも、私は、死亡の原因は生前には診断が困難だった疾患・病態によるものであって、国の過失によるものでないとする意見書を提出した。ところがいずれの裁判でも。裁判長は訴訟指揮により、私の意見書を排除し、原告の主張のみを採用した。その結果、A事件では和解により事実上被告国の全面敗訴ほぼ請求全額が認められた)、B事件では1審で被告国敗訴の判決、C事件では被告国は和解に応じずに判決を求めて現在係属中各裁判の審理プロセスに重大な問題があったことを明らかにする。→ 参考:集中部型審理形骸化への警鐘

キーワード
矯正医療:刑務所、拘置所などの刑事施設で被収容者が受ける医療。その費用は全額国費で賄われる。
矯正医官:被収容者の健康管理、診療を担当する、医師医師資格を持った法務省職員。
国家賠償訴訟:国の行政の過失により損害を受けたとしてその賠償を求める訴訟。賠償金は国庫、つまり税金から支払われる。
血税詐欺:矯正医療に対する国家賠償訴訟で、ありもしない(!)過失を言い立て、国家賠償金=血税を騙し取ろうとすること。
血税詐欺特区:東京地裁医療集中部の別称。ここでは血税詐欺を摘発する池田意見書が訴訟指揮によって排除されることから、こう呼ばれる。

表1 池田意見書採用の可否と判決/和解内容との関係


私が担当した国賠での池田意見書の扱いと裁判の結果

―本来の池田意見書の扱い
(No.1-12)
矯正医療に対する国家賠償訴訟(通称 国賠 コクバイ)に、被告国側の医師として意見書を書く仕事を始めてから今年(2025年)でちょうど10年とな る。その間、意見書執筆の要請があったのが16件。そのうち1件だけは、疥癬の診断の遅れが明らかだったので、意見書は書かずに和解を勧めた。残りの15 件については、請求棄却が可能と判断し、被告国には注意義務違反(過失)が認められない旨の意見書を書いた。 うち9件は一審で請求棄却が確定した(上記No.4-12)。()。残りの6件のうち、3件では請求棄却にまでは至らなかったが、採用された私の意見書の主張が認められ、被告国の勝訴(No. 1)ないし勝訴的和解(No.2、3)となった

―問題は残る3件(A,B,  C)。その3件の全てで、いずれも私がこれまで通り、専門家として絶対の自信を持って執筆した意見書が排除された。つまり証拠として採用されなかった。その代わりに原告側医師達の意見書が全面的に証拠と採用され、以後の審理でも私の意見書は、一切なかったことにされた。

医療過誤のでっち上げ。そこには必ず医者がいる。
表2.血税詐欺事件の特徴(事件番号は上記の表1参照)

*A 的場光太郎(北海道大学)、兵頭秀樹(当時:北海道大学、現:福井大学)、田上 隆(当時:日本医科大学  現:東京慈恵会医科大学)
*B 石田祐一(東京慈恵会医科大学)、布施幸彦(ふくしま共同診療所)                                   
*C 山崎利彦(山崎外科泌尿器科診療所)   


A 伊藤事件では、和解で原告の請求がほぼ全額認められた
B 星野事件では、審理では原告側主張が全面的に排除されたにもかかわらず、一審判決では全く逆に池田意見書が全て排除され、原告の主張が大幅に認められた。
C 浦郷事件は2025年7月11日現在一審の審理が大詰めになっている。審理の経過の詳細については→法的リテラシーを参考にされたい。

この3件に共通した要素は以下の通り。

1.全て東京地裁医療集中部に係属した事件である。
2.池田意見書は、国の過失を言い立てた原告側医師らの主張を全面的に否定した。
3.その池田意見書を裁判長が職権で排除した。
4.それ以来池田意見書が裁判で取り上げられることもなかったし、証言の機会も与えられなかった。

5.池田意見書排除後は、否定されたはずの原告側医師らによる意見書が復活した。
6.その結果、原告の主張が全面的に認容され、それ以後、裁判は原告の血培詐欺成立に向かって突き進んで行った。

次にこれらの事例で一体どのようにして池田意見書が排除され、血培詐欺が成立していったのかを見ていこう。 → 伊藤事件:「兵頭診断書」は全くの捏造だった

→ 司法事故研究の意義
→ 「兵頭診断書」は全くの捏造だった
→ まともな裁判官なら血税詐欺は阻止できていた
→ 浦郷事件に見る海渡弁護士―森裁判長―川勝部付の三角関係
→ 北陵クリニック事件の新展開
→ 表紙へ