鎖国下の八百長裁判
科学・医学に関する裁判では、今なお鎖国が続いている。ここで言う鎖国とは,もちろん地理的な国内外の分離を意味するものではなく,今では誰にでも手に入る情報や,科学・医療における常識から法廷を遮断した「つもり」になることである.この操作によって,科学・医学に疎い裁判官を騙し,裁判を有利に運ぼうという企みである.刑事裁判では検察官が,医療事故民事訴訟では原告がしばしばこの手段を用いる.
一例として,ガイドラインは絶対か?を御覧頂きたい,そこで提示したガイドライン原理主義は個人に対する診療を扱った事例だが,医薬品副作用被害のような,多数の患者を対象にした場合には,もっと大がかりな情報遮断が試みられた.この点については,サリドマイド問題,血友病HIV問題が典型例であり,医薬品副作用以外では,
いわゆるディオバン事件裁判で、海外組織の関与が一切争点にならなかった.
サリドマイド問題では,アメリカでの被害者隠蔽,グリュネンタール社の悪行の数々,欧州や南米の多くの国で日本以上の被害があったこと,それに対し,対人口比での被害者数の少なさ,訴訟でレンツ証言が認定されたこと,裁判開始から判決が得られるまでの期間,などを勘案すると,諸外国に比較すると日本は被害者に対する対応がより手厚かったこと等が,今日まで全て隠蔽されている.
血友病HIV問題でも,
1980年代前半に単位人口当たり日本の2.3倍に相当する8000人もの血友病HIV/AIDS被害者を出した米国。その米国でとバイエルが結託し、自国内で使えなくなった非加熱製剤をせっせとアジアに輸出し続けた。それが「薬害エイズ」の正体である。刑事裁判にこそならなかったたが、市民団体が「薬害の原点」と呼ぶところのサリドマイド問題でも、メディアはいまだに米国での被害や日本を上回る世界各国での被害を隠蔽した気になっている。
バルサルタン問題では,ノバルティスが典型的なグローバル企業であることを国民の皆様がすっかり忘れているのは報道の「功績」である.バーゼル本社の意向なくして,日本のノバルティスだけで5つの大学に合計11億3千万円の奨学寄付金が渡せるわけがない.裁判ではビョルン・ダーロフの名前はただの一度も出なかったし,Kyoto Heart Study論文の査読スルーや,Jikei Heart Studyの論文別刷でランセットが大儲けしたことも禁句だった.そんなことを持ち出せば,「白橋伸雄の単独犯行」という予定調和シナリオが一気に崩壊してしまうからだ.
ノバルティスの代理人はもちろん,白橋氏の代理人さえも,海外の黒幕については一切口にしない.ディオバン事件の裁判は,そういう暗黙の了解が法廷を支配した八百長裁判だった。
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