検察官に対する倫理教育と科学研究教育の欠如
ー科学捜査研究不正の観点から見た北陵クリニック事件における冤罪の構造ー

●あたかも常に有罪そのものを目的とし,より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。
●どのような時にも,厳正公平,不偏不党を旨とすべきである。また,自己の名誉や評価を目的として行動することを潔しとせず,時としてこれが傷つくことをもおそれない胆力が必要である。
●刑事司法の外,広く社会に目を向け,優れた知見を探求し,様々な分野の新しい成果を積極的に吸収する姿勢が求められる.
●法律的な知識,技能の修得とその一層の向上に努めるとともに,多様な事象とその変化にも対応し得る幅広い知識や教養を身につけるよう研鑽を積む。
(「検察の理念」より抜粋)

「不正だと?それがどうした?」 冤罪作りを公言する検察官

全ての検察官は犯罪の何たるかを熟知している.その一方で不正の何たるかを知らない.彼ら扱えるのは犯罪の形に翻訳可能な不正のみであって,それ以外の不正には一切関心がない.裁判官を騙して有罪をむしり取る,すなわち冤罪をでっち上げるのは犯罪ではない.それどころか不正でさえもない.「これこそ検事魂だ,赤レンガ組のお経なんて糞食らえだ」 そう思っているからこそ,わざわざ電話までかけて弁護士に宣言したのである.

刑事裁判は全て冤罪である」 この元裁判官の言葉は、刑事裁判が冤罪リスクの管理の場であることを教えてくれる.しかし,検察官はそのことに気づかないふりをして,あらゆる手段を使って,冤罪を顕在化しようとする.「東京地検公判部東京高裁出張所」のエピソードは数多有る事例のうちのほんの一つに過ぎない.この種の「検事魂」が罷り通り,冤罪が作られるのは,検察官に対して(そして裁判官に対しても)倫理教育がなされていないからである.倫理を知らなければ不正の何たるかもわからないのは当然である.

「研究だと?科学だと?それがどうした?」 検察官は警察捜査真理教会の忠実なる信徒
検察官は研究をしたことがないから,研究の何たるかも知らない.不正の何たるかも,研究の何たるかも知らない検察官に,研究不正の何たるかがわかるはずがない.高校で周期表習って以来,検察官は科学教育を受けたこともないから,科学の何たるかもわからない.不正の何たるかも,研究の何たるかも,科学の何たるかも,知らないづくしの三重奏で平然としている検察官に,科学研究不正の何たるかがわかるはずがない.

科学捜査研究所は警察の中の組織である.そこで行われている研究に透明性は全く無い.どんな不正があろうとも,それを検証する手立てもない.研究不正をチェックしようとする人間も存在しない.透明性もなく,不正を検証する手立てもなければ,不正をチェックする人間もいない,非科学性三重奏の活動は,科学研究に値しない.これは科学の世界の常識である.科学捜査研究所で行われている活動は科学でもなければ研究でもないのだから,警察捜査真理教会と名前を改めるが良かろう.

さらに科捜研と検察との間にはこの上もない深刻な利益相反がある.その深刻さは,ノバルティスとKyoto Heart Studyの間にある利益相反なんぞ足下にも及ばない.もしも検察官が「検察の理念」にある通りに行動するのならば,科学とは名ばかりで,研究不正のリスクに満ちあふれ,さらに不正の有無が検証できない科捜研鑑定は決して採用できないはずである.それでも科捜研鑑定だけに拘る検察官は,「検察の理念」なんぞ糞食らえと嘯く,警察捜査真理教会の忠実なる信徒に他ならない.

全くの捏造だった土橋鑑定
現在行われている北陵クリニック事件再審請求の即時抗告審では、再審弁護団の粘り強い追求により、土橋均氏(当時大阪府警科捜研吏員、現 名古屋大学大学院医学系研究科・医学部医学科 法医・生命倫理学  招聘教員)による鑑定(以下土橋鑑定)が、研究不正の中でも最悪レベル、全くの捏造であることが判明した。さらに土橋氏は、警察に対しても、法曹三者(弁 護団、検察、裁判所)に対しても、土橋鑑定が捏造であることを16年以上にわたって隠蔽し続けてきたことが明らかになった。土橋鑑定には下記のように、科 学性のかけらもなかった。

1.検体がなかった←鑑定資料受け渡し簿なし。
2.再現性がなかった鑑定資料は全量消費。
3.実験をやっていなかった←実験ノートなし。
4.鑑定結果→土橋さんに訊いてみよう!

科学の世界なら1-3の3つのうち、一つでも当てはまれば、直ちに捏造と認定される。その捏造3点セット1-3が全部揃っている上に、さらに4のごとく、 土橋鑑定の結果が世界中の研究室で認められている結果と全く異なる。こんなグロテスク極まりない捏造鑑定を無批判に受け入れてしまった責任を個々の検察官を求めることはできない.何となれば,彼らは,不正の何たるかも,科学の何たるかも,研究の何たるかも,全く教えられていなかったのだから.

なぜ検察官は研究不正を見過ごすのか?
土橋さんに訊いてみよう!
法医学史上最悪の研究不正
「科学」の前に追い込まれた検察 「自然発火の可能性」否定できず 自白頼みの捜査屈する

法的リテラシー