医療記事拾い読み 2020/21
FDAにも
ちったあ、ましな奴がいるってこと。
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3回目接種反対の幹部辞任 米FDA、コロナワクチン 産経新聞2021/9/2
米国で新型コロナウイルスワクチンの許認可を担う食品医薬品局(FDA)の幹部2人が10〜11月に辞任する見通しとなった。1日付の米紙ニューヨーク・
タイムズなどが伝えた。バイデン政権は20日以降に18歳以上への3回目接種を進める方針を表明しているが、FDA幹部らは必要性を示すデータが不十分だ
として反対の意向だったという。米国で広く使われているファイザーやモデルナのワクチンはデルタ株流行下でも重症化を防ぐ効果が比較的高いとされ、一般への3回目接種の緊急性には懐疑的な見方がある。バイデン大統領は8月18日の演説で、2回目接種から8カ月たった18歳以上を対象に、9月20日以降に3回目接種を開始すると発表した。だが通常はFDAが安全性や有効性を確認してから新たな接種の方針が決まっていた。
FoundationOne Liquid CDx承認
個人的には思ったより時間がかかったなという感じだが,華々しく研究が始まった技術にしては早かったということなのかもしれない。リキッド・バイオプシーが研究から現場に至るまでの経過については下記にまとめておいた。
Regulatory perspectives on next-generation sequencing and complementary diagnostics in Japan. Expert Rev Mol Diagn. 2020 Jun;20(6):601-610. doi:10.1080/14737159.2020.1728256. Epub 2020 Feb 17.
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中外製薬 FoundationOne Liquid CDxが承認 血液検体を用いる固形がんへの遺伝子パネル検査として国内初 公開日時 2021/03/24 04:50
中外製薬は3月23日、固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングを提供するリキッドバイオプシー検査として、「FoundationOne
Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認を取得したと発表した。承認取得は3月22日付。血液検体を用いた固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングと、国内で承認された複数のコンパニオン診断機能を併せ持ったがん遺伝子パネル検査としての承認は国内で初めて。(以下略。オープンなので誰でも読めます)
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8.1%の意味
患者の立場になってみれば8.1%という数字をどう考えるかなんて絶対に思わないさ。自分が患者だったら、やってもらいたいと思うに決まってる。なぜって「8%で当たればラッキー、92%の確率ではずれても「ここまでやったんだから」と思えるからだよ。
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遺伝子パネル検査踏まえて「最適な抗がん剤」投与できた患者は8.1%―がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議 Gemmed 2021.3.5.
がんゲノム医療が推進し、多数の遺伝子変異を一括して検出できる「遺伝子パネル検査」の保険適用や、がんゲノム医療を提供する中核拠点病院・拠点病院の指定などが進んでいる。これまでに、我が国のがんゲノム医療に係るデータベースに登録された遺伝子パネル検査は1万1558症例となった。
また一昨年(2019年)9月から昨年(2020年)8月に遺伝子パネル検査は7467名のがん患者に実施され、ゲノム医療の専門家会議で最適な抗がん剤が選択され、実際に投与されたのは607名・8.1%である。この成果をどう考えるか―。(後略)
NICEがゾルゲンスマを推奨
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英NICE 遺伝子治療用製品・ゾルゲンスマのNHS使用を推奨 ミクスオンライン 2021/03/26
英国立医療技術評価機構(NICE)は3月8日、Novartis Gene Therapies社の遺伝子治療用製品・Zolgensma(オナセムノゲン アベパルボベク、日本製品名:ゾルゲンスマ)について、乳児(7か月から12か月まで)におけるI型脊髄性筋萎縮症(SMA)の適応でNHS(国民保健サービス)での通常使用を推奨するガイダンス案を発表した。
NICEは、同剤のNHSでの薬価が179万ポンド(2億6850万円、1ポンド=150円換算)とNICEで評価した治療法での最高薬価だが、乳児におけるベネフィットのエビデンスが明確なため、SMA児の正常な発達過程におけるマイルストーンに到達させるために必要としてNHSでの使用を推奨した。しかし、7か月から12か月までの小児の臨床データには限界があるので、これら小児の治療については今後、全英での学際的臨床チームによって評価されるべきとしている。 英国では毎年、約65例の新生児がSMAを持って出生している。このうち、約60%がI型SMAといわれる。4月6日までガイダンス案について意見募集を行っている。なお、日本の薬価は、1億6707万7222円。
潰瘍性大腸炎のバイオマーカー
患者数は急激に増えているのに、良いバイオマーカーがなかった潰瘍性大腸炎ですが、今度こそは何とかなりそうな・・・京大の消化器内科から出た論文です。
Identification of an Anti–Integrin αvβ6 Autoantibody in Patients With Ulcerative Colitis Gastroenterology. 2021 Feb 12;S0016-5085(21)00406-6. doi: 10.1053/j.gastro.2021.02.019.
マグネシウム、カルシウムの存在下でELISAををやるってのがミソのようです。クローン病や他の免疫疾患も対象にして特異度94.8%、感度92%。なぜ私がそこに拘るかというと、覚醒剤による虚血性腸炎(と思われるのに)潰瘍性大腸炎と診断される例がやたらと多いからです。
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「潰瘍性大腸炎」 患者9割に特定の「抗体」 京大発見 朝日新聞 2021年3月10日
京都大の研究グループが、原因不明の下痢や血便を繰り返す難病「潰瘍(かいよう)性大腸炎」の患者の9割に、特定の「抗体」があることを見つけたと発表した。抗体を測る検査キットを企業と開発し、新たな診断法にしたいとしている。
潰瘍性大腸炎には自己免疫がかかわると考えられている。自己免疫とは、免疫反応でできる抗体が、誤って自分の体内にもともとある物質を攻撃する現象だ。抗体は本来、病原体を攻撃する。
そこでグループは患者112人の血液で、自分の体内にある物質に反応する「自己抗体」を調べた。その結果、患者の9割に「インテグリンαVβ6」というたんぱく質に対する抗体があった。他の病気の患者には、この抗体は少ないこともわかった。
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コミナティ:市販後も有効性確認 .
イスラエル最大の医療保険グループのデータを用いてコミナティ(COMIRNATY code name BNT162b2)の市販後有効性を示した論文がNEJMに掲載された。
デザイン
−2020年12月20日から2021年2月1日までの新規ワクチン接種者例と非接種対照者(各群それぞれ59万6618例,16歳以上)とを比較した観察研究
−非接種対照者は交絡となる可能性のある因子を考慮して抽出。人種はユダヤ人8割弱,アラブ人2割。
−観察期間は一回目接種から42日間
−エンドポイントは,無症候性感染(PCR陽性者)を含む感染者,顕性感染,入院,重症,死亡
結果:(Table 2)
−抑制率(2回目接種後 承認前のピボタル試験 N Engl J Med 2020; 383:2603-2615における「有効性VE vaccine efficacy」に相当)は,無症候性感染(PCR陽性者):92%(95%CI 88-95),顕性感染 94%(同87-98),入院:87%(同55-100),重症:92%(同75-100)
−Number needed to prevent(NNP 各エンドポイント1例を減らすのに何例の接種が必要か?治療薬のNNT:number needed to treatに相当)は,無症候性感染(PCR陽性者):117(95%CI 89-161),顕性感染:217 (同 153-304),入院:4545 (同 2564-12500),重症:3125 (同 1923-7692)
コメント
−リアルワールドでも治験と同様の有効性あり:抑制率(有効性),NNPともに承認前のピボタル試験(治験)結果(N Engl J Med 2020; 383:2603-2615)とほぼ同様の数値が出ているので,少なくとも有効性を理由に接種を控える理由はない。このままプログラムを進めること。
−やはり1回だけではダメ:承認前の治験と今回のイスラエルでのリアル・ワールドの一番の違いは,ワクチンの効き目の早さである。承認前の治験では,1回目接種の12日後には早くもプラセボ群との差がついている。一方,イスラエルの市販後データでは,立ち上がりはもっとゆるく,対照群と差がようやく明らかになるのが3週間後の2回目接種のほんの数日前である。この差が生じた理由はともかく,大切なのは,1回接種ではダメで十分な有効性を確保するためにも2回の接種は必須で,足りないからと言って1回接種にしてしまっては元も子もない。
−優秀なワクチンである:入院,重症化といったハードエンドポイントに対する有効性とNNPが得られたことも大きな成果である。NNPを見ると,治療薬のNNTに比べてとても大きな数字のように見えてしまうが,これは治療と違って集団免疫を目的としたワクチンであることを忘れてはならない。そう考えると重症化というハードエンドポイントのNNPが4桁の前半に留まっていることはむしろ優秀なワクチンであることを意味する。
→ワクチン:どうでもいいこと・よくないこと
SMAに対する初の経口治療薬
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CHMP SMA治療薬Evrysdiなど3品目の承認を勧告 ミクスオンライン 2021/03/05
欧州医薬品庁(EMA)ヒト医薬品委員会(CHMP)は、2月22日−25日に開催され、Roche Registration社のSMA(脊髄性筋萎縮症)治療薬Evrysdi(リシジプラム)など3品目について承認勧告を行った。EMAが2月26日、発表した。
Evrysdi(リシジプラム) 0.75mg/ml経口液用粉末。Roche Registration社。脊髄性筋委縮症。同剤は、SMN(survival motor neuron)2メッセンジャーRNAスプライシング修飾剤である。EUでは、同疾患に対する初の経口治療薬である。同剤は、既存薬を上回る効果を持つか、あるいはアンメットメディカルニーズに対応する薬剤に優先審査にするなどの優遇措置を講ずるEMA独自のPRIME(PRIority MEdicines)スキームの対象となった。
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開設以来OA
私の「法的リテラシー」も「コロナのデマに飽きた人」も,その他おなじみコンテンツも,みんな1996年のHP開設当時(今年で25周年)から,ずーっとオープンアクセスである。そもそも図書館という存在自体がオープンアクセスである。そこでは書籍、雑誌、新聞、全て無料で読める。もちろん医学図書館ではNatureもただで読める。それがなぜネットになると金を払わなくてはならないのか?同じものなのに?我々は何に対して金を払っているのか?→続く
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Natureが拓く初のオープンアクセス Edanz2020年12月31日 (木) 配信より抜粋
もっとも、Natureは他のトップジャーナルに追い付こうとしているだけともいえる。他のトップジャーナルには、アクセスに関する選択肢やポリシーが
数年前から存在している。The New England Journal of Medicine(NEJM)およびThe Journal of
the American Medical
Association(JAMA)は、すべての研究論文を出版6ヵ月経過後は無料で公開しており、JAMA Open
Networkはアクセスが無料のOAである。American Cancer Society’s CA(A Cancer Journal for
Clinicians)は、読者および著者の費用負担ゼロですべての論文に無料でアクセス可能で、そのインパクトファクターは、あらゆる雑誌の中で最も高
い(現時点で292.278)
HPVワクチン男性接種承認
これもオールドメディアにとっては「報道しない自由」の典型例か
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HPVワクチン 男性接種を厚生労働相が承認 BuzzFeed News 2020年12月25日
これまで女子のみの接種が承認されていたHPVワクチン。厚生労働相は12月25日、男性接種と肛門がんへの適応拡大を承認しました。これで男性も副反応があった場合に公的な補償を受けられるようになります。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐとして、日本では女性のみが接種対象として承認されてきたHPVワクチン。このワクチンの一つ「ガーダシル (4価ワクチン)」(MSD)について、厚生労働省は12月25日、男性接種と肛門がんへの適応拡大を承認した。
HPVは男性もかかる中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因ともなり、異性間、同性間は問わず、性的な行為でうつし合うことがわかっている。
これまでは男性への接種は「適応外使用」だったので、万が一、接種後に不具合が起きても公的な補償が受けられなかった。国のお墨付きを得た今後は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の補償を受けられるようになる。また、今のところ、男性は任意での自費接種(3回接種で5万円前後)となるが、今後、女子と同様、公費で受けられるように定期接種化が検討される。(後略)
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BioNTech/Pfizerのワクチン
いつもながらまともな解説。テクニカルな問題点、有効性、安全性のそれぞれについて配慮されたバランスの取れた書き方。勉強になります。以下抜粋。太字は池田
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COVID-19:BioNTech/ファイザーのワクチンの効率が中間解析で90%越え (『欧米の新薬開発動向 』 2020年11月14日 第973回)
このBNT162b2ワクチンは、SARS-CoV-2が細胞に結合・侵入する時に使うスパイク蛋白の全長RNAを一部修飾し、リピッド・ナノパーティクルに封入したもの。接種者の体内で発現し、免疫を刺激する抗原となる。30mcgを3週間置いて二回、筋注する。零下70℃の超低温で冷凍輸送しなければならないのが物流面でのネック。医療施設や公共施設で短期集中的に接種を行い、スケジュールが合わない人は大病院に行ってもらうような流れになるのではないか。
ワクチン効率が91%だったとすると、ワクチン群の感染者数は8人、偽薬群は86人となる。分母を38955人の半分とすると感染率は各群0.04%と0.44%。米国の9月15日以降の感染者数は約340万人、人口の1%強なので偽薬群の感染率よりかなり高いが、米国ほど流行していない国の施設も参加していることや、追跡期間が2ヶ月弱より短い可能性があること、そして、ワクチンの臨床試験に参加するような被験者はおそらく意識が高く日常活動を自制しているであろうことなどを考えると、現実離れしたデータとは言えないだろう。
深刻な有害事象は発生しなかった由だが、6.5億人が接種するとしたら第3相の1万倍以上なので、稀だが深刻な有害事象を被る何らかの素因を持つ人がいないとは限らない。ワクチン接種を促すために楽観的なことばかり喧伝すると子宮頸がんワクチンの二の舞になりかねないので、慎重に検討し是々非々で開示することが重要だ。
FDAはイーライリリーの抗SARS-CoV-2抗体のEUA(非常時使用認可)を行ったが、呼吸困難が進行した患者に用いると臨床的転帰を悪化させる可能性があることを指摘した。合併症が重症化した患者に今更、抗ウイルス抗体を投与しても手遅れであることが原因なのかもしれないが、以前から懸念されている、抗体誘導性感染増強(Antibody-Dependent Enhancement ADE:ウイルスに結合した抗体が細胞内に取り込まれて結果的にウイルスの侵入を手助けしてしまう.抗体依存性免疫増強とも呼ばれる)が現実化したのだとしたら、ワクチンで誘導された抗体でも同じことが起きるかもしれない。尤も、感染者を10分の1に減らすことができるなら、もし感染時に全員が重症化するリスクがあったとしても、通常の重症化比率は10%程度なので、重症患者発生数はワクチンを接種しない人たちと同じで、軽中等症感染症を防げる分、便益があると考えることもできる。この意味でも、もし本当にワクチン効率が90%超ならば、意義が大きい。
母の糖尿病が子の心血管疾患リスクに
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糖尿病の妊婦の子は若くして心血管疾患を被り易い Biotoday.com 2019-12-06
1977-2016年にデンマークで生まれた非先天性心疾患新生児およそ243万人の追跡調査の結果、発症が妊娠前か妊娠中を問わず糖尿病の妊婦の子は若くして(40歳までに)心血管疾患(CVD)をより被り易いことが示されました。妊娠前から糖尿病の妊婦の子と妊娠中の糖尿病発症妊婦の子の40歳までのCVD発現率は非糖尿病妊婦の子よりそれぞれ34%と19%高いという結果が得られています。
Diabetes During Pregnancy Tied to Early-Onset CVD in Offspring / PHYSICIAN'S FIRST WATCH
Diabetes before or during pregnancy linked to early heart disease in children / BMJ
Maternal diabetes during pregnancy and early onset of cardiovascular disease in offspring: population based cohort study with 40 years of follow-up. BMJ. 04 December 2019
てんかん重積状態に対する薬剤の選択
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抗てんかん薬3種、有効性・安全性とも同等 治療抵抗性てんかん重積状態への投与 Medical Tribune 2019年12月17日
ベンゾジアゼピン系薬に抵抗性を示すてんかん重積状態の患者に選択すべき薬剤に関しては、これまで十分な研究が行われていなかった。こうした中、治療抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の小児と成人において、抗てんかん薬であるレベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸の3剤の有効性と安全性に差はないことが、米国の多施設共同ランダム化比較試験(RCT)で示された。米・University of VirginiaのJaideep Kapur氏らがN Engl J Med(2019; 381: 2103-2113)に報告した。
3人に1人はベンゾジアゼピン系薬抵抗性
てんかんの発作は通常1〜2分で停止することが多いが、発作の持続時間が長い場合や、短い発作でも意識が回復しないまま発作が繰り返し現れる場合は「てんかん重積状態」とされる。てんかん重積状態の患者の初期治療ではベンゾジアゼピン系薬が使用されているが、Kapur氏らによると3人に1人は同薬に抵抗性を示すという。
ベンゾジアゼピン系薬治療抵抗性のてんかん重積状態の患者に対して選択すべき治療に関しては十分な研究が行われていなかったが、レベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸が静注されることが多いという。そこで、同氏らは今回、これら3剤の有効性と安全性を比較するため、痙攣性てんかん重積状態の小児および成人を対象としたRCTを実施した。
主要アウトカムは「抗痙攣薬の追加なしで試験薬の投与開始から60分間、臨床的に明らかな発作が見られず、意識レベルが改善すること」とした。安全性に関するアウトカムは生命を脅かす血圧低下または不整脈、気管内挿管、発作の再発、死亡などであった。
いずれの群も約半数の患者で有効性示す
Kapur氏らは、2015年11月〜17年10月に米国57施設の救急外来で登録された384例を@レベチラセタム群(145例)Aホスフェニトイン群(118例)Bバルプロ酸群(121例)?にランダムに割り付けた。このうち16例は再度のてんかん重積状態により2回登録されたが、2回目は解析に組み入れられなかった。同試験は中間解析で最も有効性が高い、あるいは最も有効性が低い薬剤が示される可能性が低いことが明らかになったため早期中止となった。
解析の結果、主要アウトカムである追加薬なしでの60分間の発作消失と意識レベル改善が見られた患者の割合は、レベチラセタム群47%、ホスフェニトイン群45%、バルプロ酸群46%で、有意な群間差は認められなかった。また、安全性のアウトカムに関しても、血圧低下と気管内挿管はホスフェニトイン群で他の2群より多く、死亡はレベチラセタム群で他の2群より多かったが、いずれも有意差は認められなかった。
薬剤選択より治療のタイミングが影響
今回の試験は米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けて実施されたが、Kapur氏とともに試験を主導した米・University of MichiganのRobert Silbergleit氏は、NIHのプレスリリースで「てんかん重積状態の治療では、どの薬剤を選ぶかよりも、治療薬を追加するタイミングや全身麻酔療法と人工呼吸器による呼吸管理を始めるタイミングなど、医師が治療でどのような判断を下すかの方が臨床的アウトカムに強い影響を与えることが示された」と説明している。
なお、今回の試験では、反応適応的ランダム化(response adaptive randomization)と呼ばれるデザインが用いられ、蓄積された臨床試験のデータに基づいたアルゴリズムにより患者がどの治療薬を使用すべきかが判定された。この試験デザインについて、Kapur氏は「革新的なデザインを用いることで、タイムリーかつ費用効果の高い方法で重要な疑問に対する答えにたどり着くことができた」とコメントしている。
ガバペンチノイドに呼吸障害のリスク
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プレガバリンやガバペンチンの呼吸障害のリスクをFDAが警告 BioToday.com 2019-12-25
ガバペンチノイド薬・プレガバリン(pregabalin)とガバペンチン(gabapentin)はオピオイドやその他の中枢神経系(CNS)抑制剤使用患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の呼吸器疾患患者、高齢者などの呼吸器に難ありの患者の呼吸を酷く害しうると米国FDAが警告を発しました。2012年1月から2017年10月の約6年間にガバペンチノイド使用に伴う呼吸抑制が49例報告されており、そのうち12人が死亡し、それら12人の全員が呼吸抑制を生じやすくする特徴を有するかCNS抑制剤を併用していました。FDAは呼吸抑制の恐れについての注意をそれらガバペンチノイド製品に表示させる予定です。
FDA warns about serious breathing problems with seizure and nerve pain medicines gabapentin (Neurontin, Gralise, Horizant) and pregabalin (Lyrica, Lyrica CR) When used with CNS depressants or in patients with lung problems / FDA
Gabapentinoids Linked to Respiratory Problems in Certain Patients / PHYSICIAN'S FIRST WATCH
Neurontin, Gralise, Horizant (gabapentin) and Lyrica, Lyrica CR (pregabalin): Drug Safety Communication - Serious Breathing Problems / FDA
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グランドスラムワクチン
四価ワクチンVesiculoVaxが出血熱ウイルス4種のサル感染を予防〜全頭死なず BioToday.com 2019-11-09
米国立衛生研究所(NIH)が助成した科学者が開発した四価ワクチンVesiculoVaxの出血熱ウイルス4種・エボラウイルス、スーダンウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスに対する効果がサルの実験で確認されました。ワクチンを接種したサル20頭は致死量のそれらウイルスを被っても発症せず、死にませんでした。
Study vaccine protects monkeys against four types of hemorrhagic fever viruses / Eurekalert
Quadrivalent Vesiculovax vaccine protects nonhuman primates from viral-induced hemorrhagic fever and death. JCI. October 22, 2019
COIなんて知らないよ!
著者の利害対立を査読者にどう捌いてほしいかの説明を各雑誌は準備するべき BioToday.com 2019-11-09
高品質の医学/科学論文掲載雑誌の殆どは著者に利害関係の公表を求めますが、無作為化試験の結果、投稿論文の査読者(peer reviewer)にとってそんな情報などどこ吹く風で、たとえ利害の対立(COI)ありと知らされても精査結果に影響はないことが示されました。COIによる偏りへの対処に必要な方針や説明が査読者に提供されていないのであろうと著者は言っています。各雑誌は、把握したCOIを査読者にどう捌いてほしいかを説明する必要があります。
Study: Conflict of interest disclosures don't alter the recommendations of peer reviewers / Eurekalert
Effect of revealing authors’ conflicts of interests in peer review: randomized controlled trial. BMJ. 06 November 2019
HIV薬の特許を無断で使用しているとして米国政府がGileadを訴えた
BioToday.com 2019-11-08
アメリカ疾病管理センター(CDC)が実施した研究や臨床試験の後にGilead Sciences社はTruvada(tenofovir disoproxil fumarate / emtricitabine)やDescovy(tenofovir alafenamide / emtricitabine)のHIV予防用途の米国FDA承認を取得し、米国政府が特許を有するその用途を許可なく販売して何十億も稼いでいるとして同社に損害賠償を求める訴えを米国政府が起こしました。米国保健社会福祉省(HHS)はHHSが保有する特許の使用権利を得るようにGileadに何度も要請しましたがHHSによるとGileadは拒みました。
U.S. government sues Gilead over patent rights to HIV drugs / Reuters
United States Files Patent Infringement Lawsuit Against Gilead Related to Truvada? and Descovy? for Pre-exposure Prophylaxis of HIV / HHS.gov
Unsuccessful in licensing talks, feds sue Gilead over PrEP-focused HIV patent / FiercePharma
HHS is taking Gilead to court, seeking damages for infringing government HIV patents / Endpoint
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