第132回日本小児精神神経学会

第36回 研修セミナー

日時

(9:30受付開始)

会場

名古屋大学豊田講堂(現地開催のみ)

演題名

「遊びを通した幼児の社会性発達支援」

座長

辻井 正次 先生(中京大学現代社会学部・教授)

講師

浜田 恵 先生(中京大学心理学部・准教授)

講師の言葉

自閉スペクトラム症に代表される、対人コミュニケーションに難しさのある子どもにおける発達促進的で効果のある支援を行うことは重要な課題である。たとえば、1、2歳の時期に保護者や乳幼児健診によって育てにくさや遊び・関わりの広がらなさ、発語の少なさに気づかれた場合に、具体的な手立てが少ないのが現状である。さらに、保育園・幼稚園・子ども園に就園後、小学校進学前までに、大人との関わりだけではなく、他児との関わりを促す関わりについて、園では加配保育士等を中心に模索が続けられている。

ASD幼児の早期支援に関しては、近年、遊びなど子どもにとって自然な文脈の中で、子どもの自発的な関心や発達に合わせた支援を行うことにより、子どもの他者への関わりやコミュニケーションを促す「自然な発達的行動介入(Naturalistic Developmental Behavioral Interventions: NDBIs)」の効果が実証されてきた。NDBIsのひとつがJASPER (Joint Attention, Symbolic Play, Engagement, and Regulation)である。JASPERは共同注意、遊び、関わり合い、感情調整に焦点をあて、遊びを介して子どもの自発的な他者との関わりに働きかける、早期の社会性発達支援技法である。個別の関わりを通して、子どもがもつ他者への関心やおもちゃを使った多様な楽しみの拡大に働きかけていく。米国でのRCTに加えて、日本でも少数事例ではあるが少しずつ、個別介入の効果が確認され始めている(黒田・井澗・浜田・稲田・辻井・須藤,2022;浜田・黒田,2022)。

こうした個別の介入は技法が明確になりつつあり、効果が見られる一方、より複雑な園等の集団場面において子どもが他児と関わることをいかに支援するか、園等の集団場面にいかに繋ぐかは更なる課題である。子ども本人への関わりだけでなく、周囲の子どもや支援者が、対象となる子どもの関心に気づき、一緒に楽しみを共有することが必要となる。

本研修セミナーでは、JASPERによる個別の介入技法や考え方について紹介しつつ、その発展としての複数遊びの支援、さらに園等の集団場面につなぐ支援について取り組みを報告する。また、1歳半や3歳で見られる子どもの社会的行動に関するデータを示すことで、早期の社会性発達支援の意義を改めて確認し、遊びを介した社会性発達支援のあり方について参加者の皆様と共に考えたい。

講師プロフィール

臨床心理士、公認心理師、JASPER Certificated Clinician (Level 1)。九州大学大学院人間環境学府人間共生システム専攻臨床心理学指導・研究コース博士後期課程単位満期取得後退学、博士(心理学)。福岡県内スクールカウンセラー、私立大学学生相談カウンセラー、精神科クリニック非常勤心理士、浜松医科大学子どものこころの発達研究センター特任助教、名古屋学芸大学ヒューマンケア学部講師を経て現職。国内では珍しい幼児期から中学生までの発達とメンタルヘルスに関する大規模縦断研究の中で、主に性別違和感の研究に取り組む。

参加費

本学会員は無料、非会員(学会間協定のある日本乳幼児・心理学会員を含む)は2,000円

認定単位

子どものこころ専門医更新講習、日本小児精神神経学会認定医更新(申請時に研修セミナーのレポートを提出することが必要)を予定

参加登録方法

先頭に戻る