日本動物実験代替法学会大34回大会
大会長 鈴木 真
(沖縄科学技術大学院大学)
日本動物実験代替法学会は、そのホームページにありますように、動物実験の適切な施行の国際原則である3Rs(Replacement; 動物を用いない代替法への置換、Reduction; 動物数の削減、Refinement; 動物に対する苦痛の軽減)の推進と普及を目的とし、研究、開発、教育、調査などを行っています。
この代替法学会の第33回大会を2020年に沖縄で開催する予定でしたが、皆さんもご承知の通り、コロナ禍の影響により大会はWebで開催することになりました。しかしながら、組織委員会の先生方にお願いしていた魅力的なシンポジウムの企画が進行中であったこと、また、Webでの開催では演題数が限られることから、第33回大会は学会が主催者となり、大会長は酒井会長が務めることで、沖縄で開催すること念頭に企画されたシンポジウムやイベントを、2021年に開催される第34回大会として引き継ぐこととなりました。また、動物実験が社会の発展において、特に生命科学の分野において多大な貢献をしていることを改めて鑑みることを掲げたメインテーマ、「3Rsに立脚したサイエンス、サイエンスを支える3Rs」も、第34回大会のメインテーマとして引き継ぐこととしました。
昨今、科学雑誌に掲載された実験成績が追試できないという再現性の問題が生じています。実験を取り巻く環境条件や携わった研究者の手順・習熟度などによる影響が無視できないほど、実験系が複雑、かつ高度化しているのがその一因です。動物実験においても同様であり、特に動物固有の性質を維持することが重要になっています。動物が示す性質は、遺伝子型、表現型、演出型に基づいており、表現型は遺伝子型により決定され、外界からの刺激により表現型が変化して演出型となります。このため、実験動物の飼育環境や実験環境の変化;飼育担当者や研究者が代わる、飼育施設や実験室が移動する等で、以前とは異なる成績が得られるという事態を招来することになります。これを避けるため、実験動物の本来の性質を損なうことのない飼育環境を整え、不要な苦痛・疼痛を与えないで実験を行うことに、動物実験関係者は日々工夫を重ねています。
一方、動物実験を取り巻く社会においても変化が見られます。昭和から平成に移り変わって「動物の愛護及び管理に関する法律」が改定されたことも影響していると思われますが、「社会に必要と思われる動物実験は容認するが、必要と思われない動物実験は容認しない」という考えが主流を占めるようになりました。これ考え方は令和の時代にどのように変化するでしょう? 昭和の時代に逆行することは考えられないので、必要な動物実験を行うにあたっても、動物福祉に配慮した環境下で行うことが必然になると思われます。この社会の変化に対応するためにも、3Rsをより洗練されたものにしていくことが求められています。従って、動物実験を行う上で、国際原則の3Rsを遵守することはスタートラインと捉え、それぞれのRをより高いレベルの持ち上げていくことは、本学会の目的にかなうものであります。
本大会では、国際原則の3Rsに立ち返り、それぞれのRの現状を認識し、今後、どのように取り組んでいくべきかを、大会に参加される皆さんと共有し、共に考える機会を提供します。沖縄の11月は最高気温が25℃、最低気温が20℃と爽やかな気候です。また、会場である沖縄科学技術大学院大学は恩納村の小高い丘の上に建ち、ここから眺める眺望は絶景です。会場では熱く討議を交わしていただき、エメラルドグリーンの海を眺めてリフレッシュしていただければと存じます。🌸めんそーれ🌸
2021年1月吉日