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日本呼吸療法医学会理事長からのご挨拶

ごあいさつ

理事長 藤野 裕士(大阪大学大学院医学系研究科麻酔集中治療医学)
2018年10月30日 記

理事長

 2018年度より理事長を拝命いたしました。私が呼吸療法の研修を始めた頃は持続投与できる鎮静薬はなく、人工呼吸器の同調性は不十分であり、小児では同調させることがそもそも不可能でした。その後、呼吸仕事量を主要評価項目とした人工呼吸器との同調性に関する開発競争の時代となり、現在の人工呼吸器は極小未熟児でさえ問題なく同調する能力を持っています。また急性呼吸促迫症候群の病態に関してもかなり詳細に解明されてきました。しかし急性呼吸促迫症候群には現時点でも根本的治療法がない状況に変わりなく死亡率もいまだに高率です。陽圧人工呼吸による救命には限界があり、陽圧人工呼吸では救命できない重症患者に体外循環を用いて管理する方法が飛躍的に進歩してきました。このように、呼吸療法は現時点でも著しい進歩を遂げている最中であり、本会としても最新の情報を会員に提供しつつ、学会としても学術活動を通じて発信を行うことができればと思います。

 呼吸療法は大きく急性期と慢性期に分けることができ、急性期の呼吸療法は集中治療という大きな枠組みの中にあります。集中治療は保険制度の改訂もあり本邦では急速に発展していますが、本会のような呼吸に特化した学会の存在意義がむしろ増していると感じています。本会にも専門医制度がありますが、日本専門医機構認定を受けていないものであり、会員に専門医資格取得の動機を提供する必要があります。そのためには医師会員だけで1,000人を数える学会として、最新の知見や治療法の開発に今まで以上に取り組むための体制整備が必要です。また、学会の財政面での改善も必須です。学術・教育の活発な活動を通じて、財務体質の改善のためにも会員数増加に取り組む必要があります。前理事長も取り組んでこられましたが、学術集会の内容や運営の継続性を強化する年次学術集会の改革も求められており、私も重点的に取り組みたいと思っています。

 本会は、これまで学術以外に教育に特に大きな努力を注いでまいりました。また、急性期のみならず慢性呼吸器疾患も学会の対象範囲としているところが本会の特徴であります。これまでの本会の活動の歩みを尊重し、維持・発展させていく所存であります。

 以上、本会の課題と抱負を述べさせていただきましたが、学会の発展は会員の皆様の御指導・ご協力なくしては実現できません。よろしくお願い申し上げます。