プリオン病について

プリオン病とは

 健康な人の脳や、その他の部位に多く存在する蛋白質のひとつプリオン蛋白質が、なんらかのきっかけによって形や性質を変えて、脳に蓄積するなどして、脳の働きが失われていく病気があります。

 もともとクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)という病気の原因の研究により、その病気が他の個体に移ること、その移る原因(感染因子)が蛋白質(プロテイン)であることが突き止められて「プリオン」と名付けられました。その後、この「プリオン」によって脳が障害される病気はCJD以外にもあることが分かり、まとめて「プリオン病」と呼んでいます。

 形を変える前の正常プリオン蛋白が人や動物の体の中でどんな役割や働きを持っているかについては、現在のところまだよくわかっていませんが、下の図のように、正常プリオン蛋白では、らせん型の構造をしていることがわかっています。それがなんらかのきっかけで、シート型の構造に形を変え異常プリオン蛋白となることで、大変分解されにくく、凝集しやすくなり脳を障害すると考えられています。

 シート型に形を変えた異常プリオン蛋白は、隣接する蛋白質を同じ形に変えていく力をもっていることがわかっています。このことを「伝播」といいます。この伝播によって、増えていった異常プリオン蛋白が蓄積するなどして脳を障害します。

プリオン病の疫学について

 プリオン病はいろいろな病型がありますが、人口100万人あたり1人程度の発病しない希な病気です。プリオン病のタイプによっては地域による差がある場合もありますが、ほとんどのプリオン病では地域による差はありません。日本では男性よりも女性にやや多く、平均発症年齢は63歳です。

プリオン病の治療とその開発

 プリオン病は、厚生労働省の定める指定難病の1つで難病中の難病といわれ、発症機序はまだ充分に解明されておらず、残念ながら治療法もほぼ皆無の状態です。

 前述の様に、この病気の原因は、プリオンと呼ばれる“感染”因子でその本体は異常なプリオン蛋白であることは分かっています。ただ、どのような機序で正常型が異常化するのか、それが脳を障害するのか全く分かっておりません。

 治療法の開発には、この発症のメカニズムを探る基礎的研究が非常に重要です。また、そのようにしてお薬の候補が見つかったときに、最終的は患者さんでその効果を確認する治験という研究が必要です。

プリオン病の自然歴調査のお願い

 ふつうの病気の治験では、患者さんをお薬を使う群と使わない群に分けて効果を比較すれば簡単です。しかし、プリオン病は様々な病型を全部集めても1年間の発症者が250名くらいであり、平均1年半で100%死亡するというという非常にまれであり進行の早い病気のため、このように2群に分けて比較するというやり方が困難です。

 幸い、もしプリオン病の各病型が始まってから、どのような経過で進んでいくか、自然な経過(これを自然歴といいます)が分かっていれば、それと比較することでお薬の効果も判定することが可能です。

 プリオン病では、現在、いくつか治験薬の候補が見つかっています。本研究はまさに、このプリオン病の自然歴を明らかにしようとするものです。

 今回、プリオン病と診断された患者とご家族の皆様にご協力をお願いし、少しでも多くの病気に関する情報を集めるため、病状の推移を医師による診察や、電話によるインタビューなどによって調査させていただきたく、皆様のご協力をお願いいたします。 

 病気の進行が早いため、調査はやや頻回ですが、毎回チェックする項目は決まっています。どうぞよろしくお願い申しあげます。

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