(1)科学を通じて真理を探究する意欲
科学は事実の普遍化であり、その究極に真理がある。真理は一つである。
(2)研究成果を通じて人類の健康維持・増進に貢献する意欲
研究成果は、医薬品の創製とその適正使用に寄与する基盤の学問・技術と思うこと。
(3)実験は仮説を証明するためにする
テーマに関連する先人達の業績である文献をよく読むこと。その中から証明すべき事実を演繹し、実 験仮説を設定すること。 仮説の善し悪しがその後 の価値を左右する。
(4)実験方法の選択が鍵である
仮説の証明に最適の実験方法を選択すること。実験方法の改善をする場合には、その目的と理由を必 要とする。
(5)実験結果の再現性は必須である
データの再現性は実験記録ノートの取り方にすべて依存する。実験ノートは基本的に2冊作ること。 1冊は実験ごとに日時、天候、実験の目的、実験デ ータ、結果、結果の考察の順に記載する。もう 1冊は、実験の際に実験台の上で実験の進行に合わせて、起きたことのすべてを記載する。前者のノ ート は指導者の点検を受け、確認を貰うこと。卒業時には教室に残し、教室で永久に保存する。再 現性を議論できるのは、比較するデータが得られた実験条件が完全に同じである場合だけである。よ って、実験条件には試薬の購入先、ロット番号、測定機器の種類、サンプル調製時間、その測定に入 るまでの 時間等、微細に記録する必要がある。再現性を取る場合はその条件を完全に模倣すること 。また、実験は同じ条件下で最低2回以上は繰り返すこと。
(6)実験デザインに最大の時間をかけること
デザインは結果を予測しながら組み上げること。コントロールとして、ポジティブコントロール、ネ ガティブコントロールを必ず入れること。
(7)実験結果の客観的な評価
実験結果のすべては統計処理し、有意差検定をすること。それに基づいて結果を客観的に評価するこ と。
(8)帰納と演繹
この2つは科学研究の方法論として知られている。帰納と演繹は、実験により得られた個々の結果(特殊な条件での事象)に基づいて一般的原理を導き出すことが帰納で、次いで、その普遍化した考えを推し広げて、いちいちの事実を推論することが演繹である。この帰納と演繹の繰り返しが試行錯誤の過程であり、その結果、自然の真理を見出すことができる。科学の営みとはこの普遍的な事実を見出すことである。科学の応用とは様々な分野の知識を寄せ集めて得られるテクニックではなく、この普遍的事実を個々の事象に適用し、その理解を突起させることである。薬学は科学を基盤にして、関する多様な専門領域の学問体系を統合して薬を理解する応用領域の学問であり、それゆえ大学では 科 学する能力を学修することが望まれる。