【非侵襲的方法による自己血貯血時の採血前後のヘモグロビン値の変動に関する検討】の研究への御協力のお願い
研究課題名:
非侵食的方法による自己血貯血時の採血前後のヘンモグロビン値の変動に関する検討
承認番号,承認日:
平成23年1月17日(承認番号3313)
内容:
自己血輸血は、適切に採取・保管された場合、現在最も安全な輸血とされています。当院では、全国に先駆けて「自己血外来」を設置し、安全かつ適切な自己血輸血の実施に努めています。その結果、当院の自己血輸血率、すなわち待機的手術患者で周術期に輸血を要した患者のうち、自己血のみ輸血された患者の割合が50%程度に達している現状です。自己血輸血の安全性を考える上で、貯血(採血)時の患者さんの安全性確保は重要であり、輸血部医師及び看護師による厳重な観察のもと行われています。貯血前には必ず患者さんの血算検査を実施し、ヘモグロビン値が11.0g/dL以上であることが貯血を実施するための条件となっています。貯血に伴うヘモグロビン値の低下を改善する目的で、鉄剤の投与(経口または点滴静注)や、適応がある場合はエリスロポエチン(造血ホルモン)の投与も行っています。また、貯血終了後、貯血した容量を補充する目的で晶質液の輸液も行っています。貯血及び点滴補充の過程中、貯血を開始前、貯血終了時、点滴終了時において、血圧や脈拍などのvital signの測定を行って、採血に伴う血管迷走神経反射(VVR)の重症化を未然に防止しています。 自己血貯血及び補液に伴うヘモグロビン値の低下は、患者さんの循環血液量などに基づいて、ある程度予測可能でありますが、実際には個人差があり、貯血後の患者さんの状態を把握することは、次回の自己血採血または手術に影響がないよう、貧血の改善のための投薬などを決定するため、また、患者さんへの安静度などについて指導を行う上でも重要であります。 本研究の目的は、当院で自己血を貯血する患者の貯血前、貯血後及び点滴後のヘモグロビン値を非侵襲的方法(ASTRIM)にて測定し、貯血、補液によるヘモグロビン値の変化の予測値との累和を検討することであります。 ヘモグロビン値の測定は、通常、患者の血液検体を用いた血算が必要であり、血算を実施するためには痛みを伴う採血が必要であります。自己血貯血前には、必ず血算検査を実施していますが、貯血中、貯血後の実施は行っていません。今回、ヘモグロビン値の測定に、採血なしでヘモグロビン量を簡単測定できるアストリム(ASTRIM、Sysmex社)を用いる予定です。ASTRIMは、赤〜近赤外の複数波長光源(LED)とCCDカメラを用い、指先の透過された末梢血管の分光画像から、ヘモグロビンの吸収量に比例した輝度情報(コントラスト)を得る方法であります。また画像部分の血液量を算出するために、血管径を画像より直接計測します。光の吸収量と血液量から、血中ヘモグロビン量(Hb量)の絶対量を求めることが可能となります。またヘモグロビンの酸素化状態によって吸収率の異なる複数の波長での吸収量の比から、静脈における酸素化指標(venous oxygenation index, VOI)を算出できます。したがって、患者さんにストレスを与えることなく、簡便にヘモグロビン値を求めることが可能であることから、患者さんのvital sign(血圧、脈拍)を確認する際に、同時にヘモグロビン値を測定し、貯血前後のヘモグロビン値の変化を推定することが可能と考えられています。最終的には、患者さんの貯血後の指導に有用と考えています。(田中 実)
研究責任者:津野寛和
連絡担当者:田中 実
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学医学部附属病院輸血部
Tel: 03-3815-5411(内線:35166)Fax: 03-3816-2516
ASTRIMホーム・ページ:http://www.sysmex.co.jp/astrim/
登山家 栗城史多氏も登山の際のヘモグロビン測定に使用している装置である。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bt_nobukazu/article/193
 
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