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日本バイオフィルム学会The Japanese Society for Biofilm Research


理事長挨拶



日本バイオフィルム学会

理事長   野村 暢彦
(筑波大学生命環境系 教授)

ご挨拶

 

このたび理事長を拝命いたしました野村暢彦でございます。

大役を仰せつかり身の引き締まる思いですが、前理事長をはじめ諸先輩方が築いてこられました実績を引き継ぎながら、さらに少しでも発展させるべく、全力を尽くす所存でございます。

新型コロナ感染症が、人々の日々の生活そして経済まで多大な影響を与えたことにより、一般の方々にも微生物への関心が高まりました。微生物は、その様な感染症のみならず、健康・食・環境全てに広くかかわり、SDGsの多くの項目の達成にも関わっております。よって、21世紀は健康・食・環境にかかわる微生物制御が人類の重要な課題の一つと言っても過言ではありません。そのためにはまず微生物の理解が重要となります。微生物は単細胞の生物ですが、集団となったバイオフィルム形態で存在していることが分かってきました。しかも、バイオフィルムを形成することで集団として様々な機能を発揮し、他の微生物や宿主の動植物に作用することから、微生物-動植物 (宿主) 間相互作用においても(感染症一つをとっても) 微生物を集団として捉える必要が出てきています。我々の体内におきましても感染症に関わる微生物や腸内細菌もバイオフィルム形態で存在しております。それは、他の動物におきましても同様です。また、土壌や水圏などの様々な環境においても多くの微生物はバイオフィルム形態で存在していることが明らかになってきております。つまり、健康・食・環境にかかわる微生物もバイオフィルム形態で存在していることから、微生物制御において、バイオフィルムの制御が重要となります。

本学会は、まだバイオフィルムの概念が定着していない1987年に、先駆けて医学の先生方が集まり、バイオフィルム形成の初期に重要な細菌の付着現象に着目し、細菌感染症の病態、診断、治療についての学術集会「Bacterial Adherence研究会」(初代会長 小酒井望先生)としてスタートし、研究会誌「Bacterial Adherence」が発行されました。そして、2000年にBiofilmが追加された「Bacterial Adherence & Biofilm研究会」(研究会誌もBacterial Adherence & Biofilmに変更)になり、さらに、2014年に日本バイオフィルム学会(理事長 神谷茂先生)へと発展してきました。今、バイオフィルムは感染症のみならず、金属腐食や食品腐敗や、水処理など健康・食・環境に関連し、それらバイオフィルムの制御は多くのSDGsの項目への貢献につながります。

日本バイオフィルム学会は、医学・歯学の臨床と基礎をはじめとして、さらに食・環境などの様々な分野のバイオフィルムに関わる幅広い領域の研究者が集まる唯一の学会です。本学会が、バイオフィルムについて議論し、その理解を深める場になり、そしてバイオフィルム制御に関する新たな知見と情報の発信の場となるよう努めて参りたいと思います。

バイオフィルムについて興味をもたれている、あるいはお困りの方々の本学会へのご参加をお願いいたします。