セミナー

第11回 財団法人一新会セミナー

岡島  修 (公財)一新会理事

山下英俊 (公財)一新会理事・山形大医学部長

【セミナー開催主旨】

光覚、視力(最小分離閾値)とともに視機能の3要素の一つである色覚について適切な知識を共有するためには視覚病態生理に基づくことが必要であります。一新会セミナーは厚生労働省の後援を得て、日本眼科学会総会との共催により過去10回の開催を行い、今回、次の新たな10回のはじめとなる第11回一新会セミナーを開催するはこびとなりました。臨床はすべての分野で共通しますが、医師は知識の研鑽につとめ、正しい知識に基づき、社会および個々の方々に適正な対応と説明を行うことが求められます。色覚の臨床に関してこの一新会セミナーが貢献しうることを目的に企画致しました。

講演1.今年度一新会が特許を得た新しい色覚検査法について

澤 充 (公財)一新会理事長・日本大学名誉教授

現在の臨床の場での色覚検査法は石原色覚検査表に代表される混同色理論に基づく仮性同色表、Farnsworth Dichotomous Test D-15(PD-15)に代表される色相配列検査およびアノマロスコープである。これらは心理物理的検査と言える。石原色覚検査表は先天色覚異常と正常色覚との判別能は優れているが、石原 忍先生によれば型分類(I および II 型)と程度分類(2 色覚と異常 3 色覚)は参考と考えるべきであるとされる。したがって、臨床では、一つの方法として型分類は PD-15 で行われているが、PD-15 での型分類は 2 色覚例または同レベル程度が対象と考えるのが妥当である。アノマロスコープは型分類、程度分類に有用であるが、検査が難しく、かつアノマロスコープで正常、仮性同色表で異常となる例も存在する。こうした現在の検査法の課題を踏まえ、石原色覚検査表での検査後、型分類を比視感度測定で行い、2 色覚とそれ以外との程度分類を波長弁別閾値測定で行う新たな色覚検査法について述べる。

講演2.学校保健における色覚対応

柏井 真理子 (公社)日本眼科医会 学校保健担当常任理事・柏井眼科

平成 14 年の学校保健安全法一部改正で定期健康診断の必須項目から色覚検査が削除され、学校生活や進学・就職で不利益を受ける児童生徒等の問題が生じてきた。

平成 26 年 4 月 30 日の文科省の学校保健安全法施行規則一部改正の通知の留意事項で①保護者に色覚及び色覚検査について積極的に周知し、希望者には児童生徒や保護者の事前の同意を得て個別に検査、指導を行うなど、適切な対応を整えること、②教職員が色覚異常に関する正確な知識を持ち、色覚異常に配慮と適切な指導を推進すること、と謳われた。

この通知を受け、全国の学校での色覚検査への前向きな取組が推進されつつあるが、地域の様々な事情により実施状況に差が生じている現状がある。全国のどの地域においても、色覚検査を希望する児童生徒には義務教育中に学校で検査を受けられることが望ましいと考える。

さらに事後措置として眼科医療機関を受診する児童生徒が増えている現在、適切な色覚検査や指導が大変重要である。児童生徒が自身の色覚の特性を知り、たくましく学校・社会生活を送れるようサポートすること、さらに色のバリアフリー推進は眼科医の責務であり、学校関係者や社会への啓発も大切である。

このページのトップへ ▲

一新会 トップページに戻る