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色覚検査表 序文
 色覚が成立するためには,2種以上の視物質が網膜の異なる視細胞中に存在することが必要である。ヒトでは極大が565nm,545nm,440nm付近にあるベル型の吸収曲線を持つ,3種類の錐体視物質が機能しており,それぞれ長波長感受性錐体(L錐体),中波長感受性錐体(M錐体),短波長感受性錐体(S錐体)とよばれる。これらの錐体のいずれかの異常によって,色覚異常がおきる。
  先天色覚異常には1色覚、2色覚、および異常3色覚の3つのタイプに大別される。1色覚のほとんどは杆体1色覚で、視力が悪く,羞明,眼振を伴う。数十万人に一人の頻度で、常染色体劣性遺伝をする。2色覚と異常3色覚は異常のある錐体の違いによって1型(L錐体の異常)、2型(M錐体の異常)、および3型(S錐体の異常)に分けられる。1型と2型については後述するが,3型色覚とは先天青黄異常を指し、1色覚よりさらに頻度が少なく、優性遺伝をすると考えられている。
  先天色覚異常の大部分は1型色覚または2型色覚,つまり先天赤緑異常である。X連鎖性遺伝形式をとるため、その頻度には男女差があり,日本人では男性の約5%,女性の0.2%と推定されている。
  赤緑色覚異常者は,多くの点で正常色覚者と生理学的特性が異なる。2色覚者では,波長の違いを識別する能力(波長識別能)は490から500nm付近でのみ良好で,その両側では急激に低下する。またスペクトル中には無彩色に見える点(中性点)があり、1型2色覚では495nm,2型2色覚では500nm付近とされる(図1)。これらの波長は正常色覚者には青緑に見える色である。さらに彼らが混同する色を色度図にプロットすると直線上に並び(混同色軌跡),隣の直線との間の色は、識別できないとされている。この混同色軌跡の数は1型色覚と2型色覚で異なる(図1)。上記の生理学的特性は,異常3色覚者では正常色覚と2色覚の間に位置し,個人差が大きい。なお1型色覚においては,2色覚,異常3色覚共に長波長域における視感度の低下が著明で,赤を非常に暗く感じる。
 
このような生理学的な相異のため正常色覚者と色覚異常者の色認識には差が生じる。特に2色覚者は色を誤認することが多く,時には学校生活や職業上,多大な影響を受ける。程度の差はあるが,異常3色覚者においても同様の誤認が起きることが報告されている。元来色覚異常は先天性の感覚障害であるから、色覚異常者は自分と正常色覚者との感覚の差を自覚することが困難である。彼らは幼少時から色誤認による小さなつまずきをくりかえしながら、他人に分かる色が自分には区別できないことを徐々に学んでいく。色覚検査を受けなければ、この原因が色覚異常であることを、本人はもちろん家族や教師も気づくことはほとんどない。色誤認の存在を自覚して対策をたてることが色覚異常者の唯一の防衛策であることを考えると、学校での定期健康診断において色覚検査が必須項目から除外されたことは、色覚異常者にとって大きな不利益になることは確実である。今後は色覚異常が原因であることに気づかずに失敗を重ねたり,成人して職業選択に直面してはじめて色覚異常が判明し、進路変更を余儀なくされたりする人々の増加が懸念される。
  色覚異常の有無の正確な診断は,色覚異常者自身にとって非常に重要である。
  先天赤緑色覚異常の確定診断に用いられるアノマロスコープは操作が難しいため,眼科専門医療機関でも実施できる施設は限られている。一方,色覚検査表は,元来はアノマロスコープの予備検査であるが、検査法さえ守れば容易に赤緑色覚異常を検出でき、広く世界中で使用されている。
  石原色覚検査表は1916年に石原忍によって創案された。1933年のマドリードにおける第14回国際眼科学会では,色覚検査に必須の検査表として推薦されている。国際版は初期には16表であったが,石原が改良を重ねた結果、1936年から32表、1951年からはさらに充実して38表となった。また1961年には石原表の改良ならびに色覚研究を目的に、財団法人一新会が設立された。その後は一新会がすべての石原表の著作権を持ち,品質管理に当たってきた。現在も石原色覚検査表は、先天赤緑色覚異常の検出表として、内外から高い信頼をおかれている。
  国内では24表からなる総合版が主体であったが,1994年にこれを廃止して国際版38表を国内向けにも出版し,同時に色盲検査表から石原色覚検査表へと名称を変更した。さらに今回色覚に関する用語の大幅な変更を期に,著者石原忍の序文を改め,序文から使用法にいたる文章の改訂をおこなった。
2005年
財団法人 一新会
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