第10回 財団法人一新会セミナー
オーガナイザー 澤 充 (公財)一新会理事長/日本大学名誉教授
岡島 修 (公財)一新会常務理事
相原 一 東京大 教授/(公財)一新会
プログラム概要
色覚異常は先天異常、後天異常があり色の認知に関する機能と形態について、他の疾患と同様に様々な角度から考える必要がある。先天異常を例にとっても表現型としてそれぞれ様々な所見、程度があり、それらは遺伝子型に遡って考える必要がある。こうした色覚に関する検査法としては主に混同色理論に基づく仮性同色表、色相配列と混色による方法が行われている。一方で色覚に関しては比視感度、波長弁別閾値などについての研究報告がある。色覚は視細胞、網膜から視中枢レベルで総合的に理解される必要があるが未だ解明されていない課題も多く、興味深い領域である。本セミナーでは色覚の基礎と臨床の場での問題についてとりあげてきた。今回もこの内容に造詣の深い先生方にご講演をお願いし、色覚についての理解を深めることを企図した。
講演1.色覚検査の基礎知識2:混同色線と仮性同色表
安間 哲史 安間眼科院長/愛知県眼科医会名誉会長
混同色線は色覚検査の基本であり,混同色線上の色混同の広がりは,色覚異常の程度に相関しているため,混同色線を理解すれば色覚検査の意味を更に深く知ることができる。仮性同色表もその基本は混同色であるが,石原色覚検査表ⅡとSPP標準色覚検査表第1部とでは,色覚補正(仮性同色表対策)用の着色レンズ使用下での見え方に差異があり,両者の色構成に違いがあることがわかる。
色覚異常の診断に欠かせないアノマロスコープは,一般臨床で汎用されるほどには普及しておらず,より簡便な診断手段が求められている。交照法を用いた感度測定で1型と2型を判別し,等輝度に調整された黄色光と赤・緑混色光との等色範囲から2色覚と異常3色覚を判別する,新しいコンセプトのアノマロスコープの可能性についても述べる。
講演2.学校保健での色覚検査 現状と課題
柏井 真理子 柏井眼科院長/(公社)日本眼科医会常任理事
平成14年の学校保健安全法一部改正で,定期健康診断の必須項目から色覚検査が削除され,全国の多くの学校で実施されなくなり,学校生活や進学・就職で不利益を受ける等の問題が生じてきた。
そのような状況下,平成26年4月30日の文科省「学校保健安全法施行規則一部改正通知」の留意事項で,①保護者に色覚及び色覚検査について積極的に周知し,希望者には児童生徒や保護者に事前の同意を得て,個別に検査,指導を行うなど適切な対応を整えること,②教職員が色覚異常に関する正確な知識を持ち,色覚異常に配慮と適切な指導を推進することと謳われた。
この通知を受け,現在徐々に全国の学校で色覚検査への前向きな取組が推進されつつあるが,地域の様々な事情により実施状況に差が生じている現状がある。全国のどの地域においても,色覚検査を希望する児童生徒には,義務教育中に学校で検査を受けられる機会が与えられることが望ましいと考える。
日本眼科医会では,平成29年6月に各都道府県眼科医会にアンケート調査を実施,さらに11月には日本眼科医会A会員(10%任意抽出)に学校医に関するアンケート調査を実施し,色覚検査についての考えや取組を尋ねた。
学校での色覚検査が積極的に実施され,事後措置として眼科医療機関を受診する児童生徒が増えている現在,適切な色覚検査や指導が大変重要である。児童生徒が自身の色覚の特性を知り,たくましく学校・社会生活を送れるようサポートすること,さらに色のバリアフリー推進は,眼科医の責務と考える。