第8回 財団法人一新会セミナー
座長: 相原 一 東京大 教授/(公財)一新会
座長挨拶
色覚は無脊椎動物から脊椎動物まで進化の過程で獲得あるいは淘汰されてきた能力である。人では3種の錐体細胞の視色素による吸収波長の割合で感覚を生じている。遺伝的に色覚異常は多いだけに相談を受ける機会も多く、我々眼科医としては正しい知識をもって医学的に理解し、また個人の社会生活に対する適確な対応が求められる。本セミナーにより色覚の基礎と臨床について御講演頂き、色覚に対する一層の理解を深めることができれば幸いである。
略歴
- 1989年東京大学医学部卒業、同眼科学教室入局
- 2000年カリフォルニア大学サンディエゴ校臨床指導医、主任研究員
- 2003年東京大学眼科講師
- 2012年同准教授、四谷しらと眼科
- 2014年東京医科歯科大学眼科特任教授
- 2015年東京大学眼科教授
講演1.色覚異常の遺伝子型と表現型
澤 充 日本大名誉教授/公益財団法人一新会理事長
全ての遺伝性疾患に共通することとして遺伝子型と表現型との関係がある。色覚に関する研究分野としては生理学、遺伝子学および心理物理的分野が挙げられる。一方で臨床での色覚検査は心理物理的検査が主体であるために色覚を一面的に論じる傾向が強く、視力検査と同じ問題を内包している。遺伝子的研究では男性正常色覚者でも異なる遺伝子型を有していることが報告されており、遺伝子型が異なる場合に視色素に差を生じる可能性があるが臨床での検査法では正常色覚との表現型となる。今回は角膜ジストロフィなどと比較しつつ色覚の遺伝子型と表現型とについて考えてみたい。
略歴
- 1973年東京大学医学部卒
- 1981年自治医科大学眼科講師
- 1988年東京大学医学部助教授
- 1992年日本大学医学部教授
- 2012年日本大学名誉教授、澤眼科医院院長 (現在に至る)
- 2008年厚生労働省医道審議会委員(現在に至る)
講演2.色覚異常に対する臨床と対応
柏井 真理子 柏井医院/(公益社団)日本眼科医会常任理事
平成26年4月文部科学省から発出された「学校保健安全法施行規則一部改正」の留意事項で色覚の重要性が謳われたこと等により、全国の学校で児童生徒の色覚検査の機会が増えている。それに伴い色覚の精査目的で眼科医療機関を受診する者が今後多くなると思われる。眼科医は適切な診断および指導を行うことが求められる。今回、眼科医が知っておくべき基本的な色覚診療と指導について述べる。一方眼科学校医は学校関係者に色覚の理解を啓発し、学校での色のバリアフリーを推進することが大切である。
略歴
- 1983年京都府立医科大学 卒業、同眼科学教室入局
- 1985年京都市立病院 眼科 医員
- 1987年京都府立医科大学 眼科学教室助手
- 1992年医療法人 柏井医院
- 2006年社団法人 京都府医師会 理事
- 2012年公益社団法人 日本眼科医会 理事
- 2014年公益社団法人 日本眼科医会 常任理事