大阪大学大学院医学系研究科 臨床神経生理学
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反復発作性運動失調症(episodic ataxia:EA)は、間欠的な運動失調を呈する希少疾患。現在までに8つ以上の病型が知られている。CACNA1A遺伝子変異によるEA2型(EA2)が最多、KCNA1遺伝子変異によるEA1型が次に多いとされている。本邦においては、EA2の症例報告が散見される程度で、研究班の調査では疑い例を含めて30例程度、遺伝子診断確定例は数例にとどまり、各病型の有病率・自然歴など詳細は不明。本邦のEA1症例は、2020年5月現在、研究班が確定診断した1家系のみである。
EA1は、主に小脳と末梢神経の症状を呈する常染色体優性遺伝型のチャネル病である。発作性の小脳失調を主症状とする。随伴症状の中で最多はミオキミア(21.2%)である。原因遺伝子は、神経細胞に発現する電位依存性カリウムチャネル(Kv1.1)をコードするKCNA1遺伝子で、変異チャネルでは機能喪失(Loss of function)を通常示す。
EA2は、常染色体優性遺伝形式を取り、最多のタイプである。思春期に発症することが多く、主症状は数時間から数日、ときに数分間の小脳失調発作である。随伴症状として、頭痛、片麻痺などのがあり、片麻痺性片頭痛や、脳幹性前兆を伴う頭痛、前庭性片頭痛など片頭痛疾患との鑑別が問題となる。検査所見では、小脳虫部の萎縮、全般性徐波を特徴とした脳波異常の報告がある。原因遺伝子は、P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(Cav2.1)のαサブユニットをコードするCACNA1A遺伝子である。CACNA1A遺伝子は、脊髄小脳失調症6型(SCA6)ならびに家族性片麻痺性片頭痛1型(FHM1)の原因遺伝子でもあり、EA2とはallelic disorderの関係にある。治療に関しては、アセタゾラミドに対する反応性が良い。
参考になる情報
反復発作性運動失調症診断の手引き