CADASILは優性遺伝するため、必ず1〜3親等の親族に比較的若く脳梗塞を起こしている方が複数います。 CADASILの診断では、このような家族歴の有無、そして「症状」で挙げられたような片頭痛、気分障害(うつ)、 若年性の脳梗塞、認知症などの症状があるかどうかをまずチェックします。 さらに、MRIなどの画像診断を行い、CADASILである疑いが出れば、確定診断のために遺伝子検査を行います。 病院によっては、さらに皮膚生検を行って診断の補助とする場合もあります。
CADASIL患者さんの脳のMRIを撮影すると、右の写真のように脳の深部が白くなります。これを白質病変といいます。 CADASILでは、特に側頭葉(脳の左右側面,写真矢印)の前部に白質病変が現れるのが特徴的です。
CADASILの典型的な症状は「症状」で紹介しましたが、これらの症状はCADASILだけで見られるものではなく、 遺伝性ではない脳小血管病でもよくあるものです。そこで、確定診断には遺伝子診断が行われます。 DNAを採取し、NOTCH3遺伝子の変異があるかどうかでCADASILの診断をします。
ただし、CADASILで遺伝子変異が起こるEGFリピートと呼ばれる部位以外でNOTCH3遺伝子変異が見つかる場合もあります。 このようなケースは、症状は非常にCADASILと似ており区別がつきませんが、次に説明する皮膚生検において、 CADASILに特徴的な所見が見られません。
CADASIL患者さんの毛細血管、動脈を電子顕微鏡で観察すると、血管平滑筋の周辺に、黒っぽい顆粒状物質 (granular osmiophilic material: GOM)が観察されます(右写真)。これまでに、このGOMには Notch3タンパク質の一部が含まれていることがわかっていますが、その毒性などについては依然として不明です。 CADASILの症状は主に脳で現れますが、血管の異常自体は全身の血管にも存在しています。 そこで、血管を含む皮膚組織の一部を採取し、それをもとに病理標本を作製して顕微鏡で観察します。 GOMは、NOTCH3遺伝子変異を持たない方では見られないため、その有無を確認することで、CADASILの診断をすることができます。