陽子線・重粒子線による「がん」(って何の癌よ?)治療は,1994年6月から2012年7月までの18年間に6846人(うち先進医療3769人)の「治療実績」がある.一方で,長く先進医療に留まっており,承認申請の動きが全く見られなかったが、2016年にようやく小児がん、18年には前立腺がんに保険適用が認められた.それには以下に述べるような理由がある.このような,(医療としてではなく)公共事業としての重粒子線治療施設の歴史から学べることの豊富さは,原発開発の歴史から学べることの豊富さに決して引けを取らない.科学的根拠もさることながら,HTA (Health technology assessment)の面からも検討が必要だった.
→参考資料
→Choosing wiselyはここにも
キーワード:重粒子線、粒子線、陽子線、公共事業
もう、オワコンですな。そもそも高い機械を入れて保険外診療で稼ごうなんて発想自体、安易すぎたのだ。HTA (Health technology assessment)の面から見ても、もはや無用の長物 (2020/6/9 updated)
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がんの陽子線治療、保険適用で意外なブレーキ 日経新聞 2020年5月11日
がんの陽子線治療が経営面で苦闘している。医療機関は患者増を見越して思い切った投資をしたが、公的な保険適用の後、思うように治療件数が伸びていないからだ。施設の地域偏在の問題も浮上する。陽子線治療は先進医療の代表格だが、公共性の高い医療でどう収益を確保するかという「医療ビジネス」の壁にぶつかった。
京都府立医科大学付属病院(京都市上京区)には、日本電産会長の永守重信氏の寄付によってできた最先端がん治療研究センターがある。ここで2019年4月、陽子線治療が始まった。初年度、260人の患者数を目標としてきたが、210人強、達成率80%にとどまる見通し。
病院経営としてみると「大変厳しい」(同センター)。装置の維持管理などに年間約7億6千万円かかるが、収入は約4億円。身体的な負担が軽いがん治療である点を周辺の医療機関にアピール、施設見学会や出前講演会を開き、患者の獲得に取り組んでいるという。陽子線治療はがんの放射線治療の1つで、レントゲン撮影のようなエックス線でなく陽子線という放射線を使う。がんにピンポイントであてるため、正常な細胞を傷つけずにすみ、副作用が少ない。
国内では2000年ごろから本格的な普及が始まった。体育館大の建物と大型装置には約70億円のお金がいる。現在、全国に18施設ある。当初、既存の治療法と比較してどの程度効果に優れているかわからず、健康保険が効かなかった。代わりに約300万円の高額な治療費を民間のがん保険がカバーする仕組みが生まれた。先進医療として実績を積み上げ、2016年に小児がんなどが保険適用になった。18年には高齢男性に多い前立腺がんも対象になった。実はこれが病院にとって誤算だった。前立腺がんの場合、治療費が保険適用で半分の160万円に抑えられたからだ。患者数は1.8倍になったものの、伸びは想定したほどでなくその分、収入が減って病院経営の重荷になった。
患者の側からみると健康保険が利くことで誰でも自己負担は少なくなる。なのになぜ伸びなかったのか。適用前にも民間のがん保険に入っていれば治療のハードルは低かった。自治体によっては助成する制度もあった。また、前立腺がんは早い段階で見つかれば大半が治る。転移や再発も少ない「おとなしいがん」。陽子線のほかにも治療の選択肢は多い。同じエックス線を使った放射線治療も進化が著しく、この手法を採用する病院は全国にたくさんある。日本放射線腫瘍学会は「前立腺がんよりも先にエビデンス(医学的証拠)の多い肝臓がんの保険適用を求めてきた」(桜井英幸筑波大学教授)。しかし、18年に認められたのは前立腺がんだった。肝臓がんに対する適用拡大は20年も見送られた。
厚労省の奇策だったのかもしれない。実は先進医療は保険適用にするかどうかを判断する間の暫定的な治療法という位置づけだ。陽子線治療が民間のがん保険頼みで「ビジネス優先」で広がる状況を「厚労省はよしとしていなかった」(都内のある大学病院のがん医師)。全国18施設は北海道の札幌市に3施設もある一方、東京や四国には1施設もない。地域偏在も目立つ。どこでも標準的な治療を受けられるようにする、国のがん治療均てん化を考えると、適切とはいえない。
がん治療を巡っては「医療ツーリズム」と称し海外からの患者を見込んでPET検診を拡充する動きもあった。ただ、どこも狙い通りは進んでいない。治療装置も検査装置も医療機器は公共財という側面が強い。国民皆保険を前提とする日本の医療で「ビジネス」を成就するのは容易でない。
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●粒子線治療は2技術に十分な科学的根拠(先進医療から6技術を削除へ 先進医療会議 2018/1/12 日刊薬業 より抜粋)
粒子線治療では「切除非適応の骨軟部腫瘍への陽子線治療」と「頭頸部腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)への陽子線・重粒子線治療」の2技術について、既存のX線治療を上回るとして十分な科学的根拠があると判断した。同分科会に報告する。「限局性および局所進行性前立腺がんへの粒子線治療」は同等性が示されており、一定の科学的根拠があると判断。「他の局所療法の適応が困難な肝細胞がんへの陽子線治療」は標準治療を上回ることが示されておらず、現時点で科学的根拠が十分でないと判断した。
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陽子線・重粒子線治療をめぐり議論 先進医療会議、学会データへの疑問の声も ( 日刊薬業 2015年8月7日 )
(前半略)
●学会理事長、前立腺がん「現時点で保険収載に値すると言えない」
学会の報告を受け、山口俊晴構成員(がん研究会有明病院長)は、各がん種の分析手法に統一性がないとし、都合の良いデータを集めたように感じると指摘した。前向き試験を実施しないと結論は出ないとの見解を示した一方で、小児腫瘍については有効性がかなり期待できると述べた。
福井次矢構成員(聖路加国際病院長)は学会が示したデータを評価しつつも、観察研究の限界に言及。結果にバイアスが入っていないことを多くの人に納得してもらう必要があると主張した。藤原康弘構成員(国立がん研究センター企画戦略局長)は前立腺がんについて、X線治療で十分であり、治療体系も変わろうとしているとの認識を示し、「重粒子線をやるのはちょっとおかしい」と語った。
これを受け、学会の西村理事長は「前立腺がんに対して本当に粒子線治療が有意(に優れている)か疑問に思っている」と認め、「現時点においてはっきり保険収載に値するとは言えないのではないか」と述べた。一方で、治療を短期間で終わらせるためのオプションになりうることや、今後前向き研究を実施していく必要性にも言及した。【MEDIFAX】
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【アメリカ】陽子線治療へ大きな賭け、将来は不透明 ← 2015/5/58追記
WSJ 2015 年 5 月 27 日
http://jp.wsj.com/articles/SB11729237550577364065404581010843407772146
複数の新しい陽子線療法センターが米国で今後数年以内にオープンする予定 Howard Lipin/U-T San Diego/Zuma Press
6つの新しい陽子線療法センターが今年末までに全米のがん患者に最新の放射線治療を開始する予定だ。2018年までにさらに10カ所が予定され、米国では合計30カ所に達する。その多くはサッカー場の大きさで、建設には1億−2億ドル(約120億−240億円)の費用がかかる。
しかし長年準備されてきたこれらのプロジェクトは、不透明な市場に参入することになりそうだ。
陽子線療法は、放射線療法の極めて精度の高い形態だ。しかし、建設・運営コストが大幅にかかるにもかかわらず、伝統的な放射線治療よりも良いとの医学上の
証拠が欠如しているという難点に悩まされてきた。ユナイテッドヘルス・グループやエトナを含む多くの保険会社は、前立腺がんの陽子線治療の保険カバーを停
止した。かつて患者の主要な源とみられていたがんだ。昨年には陽子線センター1カ所が閉鎖し、他のセンターも何百万ドルもの赤字にあえいでいるところが幾つかある。
しかし陽子線療法の提唱者たちは、新しいビジネスモデルは異なると言う。今年開設される6つの陽子センターのうち5つはコンパクトな規模で、巨大センターの建設・運営コストのわずか何分の一にとどまるという。
陽子線療法システムを製造するメビオン・メディカル・システムズ社のジョセフ・ジャシノフスキ最高経営責任者(CEO)は「陽子治療はばかばかしいほどに高価だ。これをもっと利用可能にする方法を見いだすべきだ」と述べた。同社はマサチューセッツ州リトルトンに本拠を置く株式非公開会社で、2500万−3000万ドルの陽子システムを製造している。治療室は1つで、通常4つないし5つあるシステムよりもコンパクトだ。先月、フロリダ州ジャクソンビルにあるメビオン製品を備えたがんセンターが、開業医グループの保有する最初の陽子治療施設になった。
その他の陽子システム製造業者も、米国、欧州、
アジア、そして中東の医療センター向けのコンパクトな陽子線システムを製造している。イオン・ビーム・アプリケーションズ、日立製作所、バリアン・メディカル・システムズなどだ。多くのセンターの関係者は、治療室を患者で埋めるために前立腺がんに依存しているわけではないと述べている。一部は乳がん、肺がんなどその他のがんの陽子線治療を行っているし、治療データが生み出される間、代替支払いモデルで実験もしているという。
ペンシルベニア大学の医療施設「ヘルスシステム」は、陽子線療法について、通常の「強度変調放射線療法(IMRT)」と同じレートを保険会社2社から受け入れている。これは患者の治療結果を追跡する間の措置だ。放射線腫瘍医のジャスティン・ベケルマン氏は「(医療)プロバイダーが支払い側と同様に負担に一枚噛(か)んでいることが極めて重要だ」と述べた。
また一部の病院は、陽子線治療活動の資金繰りとして、プライベートエクィティ会社ではなく、一部を民間の寄付に頼った。例えばミネソタ州ロチェスターの総合病院メイヨー・クリニックは来月、総工費1億8000万ドルの陽子線治療センターで患者の治療を開始する計画だ。これは1億ドルの寄付による支援もあって建設される2つのセンターのうちの一つだ。
資金返済対象になっている投資家がいないため、メイヨーの関係者も、IMRTと同じレートを陽子線治療についても課す方針だと述べている。
来年開設される予定のフェニックスのメイヨー・クリニックの陽子線療法の医療ディレクター、サミア・ケール氏は「基本的に、われわれがカネ儲けしようとしているのではないと保険会社や陽子線療法の批判者に伝えている」と述べた。
医療機関は、大規模であれ小規模であれ、陽子線療法が患者やトップクラスの臨床医を引きつけ、最先端医療を提供する方法だとみている。業界団体の全国陽子線療法協会のスコット・ウォリック会長は「米国のトップのがんセンター10カ所すべてが陽子線療法を実施しているか、あるいはそのセンターを建設中だ。それは彼らがこの療法を信じていることを示す」と述べた。
放射線腫瘍医の多くは、この技術に熱心だ。陽子線療法が必ずしもがんの進行を阻止するのに優れているわけではない。だが同療法の提唱者は、それが副作用を急減させ、副作用治療のための多額の追加コストをなくせると述べている。
その恩恵は、珍しい小児脳腫瘍、成人の眼腫瘍、頭蓋底腫瘍には議論の余地がなく、保険会社も総じてカバーしている。一部の腫瘍医は、陽子線療法は他の多くの局所がんでも有害な副作用を軽減できると述べている。頭や首、中枢神経システム、肺、前立腺のがんや乳がんなどだ。それは、一部の患者が放射線の漏れで心臓障害を引き起こす部位だ。
しかし保険会社の一部は、このような一般的ながんの陽子線療法について、プレミアムレート支払いに難色を示している。それが患者の症状を改善させるという証拠がないためで、理想的には無作為の比較試験からの証拠が必要だという。幾つかの比較試験が進行中だが、結果が判明するには何年もかかるだろう。
大半のメディケア(高齢者向け医療保険)地区は、前立腺がんの陽子線療法をカバーしている。治療セッション1回当たり約1100ドルで、IMRTの600ドルの2倍近くだ。しかし、幾つかの大手保険会社は、陽子線療法が長期的恩恵を追加的にもたらさなかったとの2012年の研究報告を受けて、保険カバーを停止した。一部の陽子線センターでは、前立腺がん患者は患者全体の70%を占めていた。現在ではこうした患者は、全国の陽子線センター施設の全患者の半分以下になっている。こうした患者治療減少の結果、犠牲も出た。昨年、インディアナ大学はブルーミントンにある赤字施設を閉鎖した。施設を格上げするコストが高いことと、前立腺がん治療のパターン変化が閉鎖の理由だった。
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開業前にすでに資金ショート↓なんだが・・・
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【佐賀】重粒子線がん治療センター資金難、視界不良の船出 読売新聞 2013/5/21
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20130521-127-OYS1T00288/clip
国内4か所目で九州・山口では初の重粒子線がん治療施設となる「九州国際重粒子線がん治療センター」(佐賀県鳥栖市)が、計画通り150億円の事業費が集まらず、資金難のまま29日に開業する。九州電力など民間からの寄付や出資金で賄う当初計画は難航。20日に鳥栖市議会が補助金を計上する予算案を可決したほか、金融機関からの追加融資を受ける調整も進めている。
センターは、佐賀県と県医師会が設立した公益財団法人が運営する。誘致した鳥栖市は、民間の寄付を呼びかけたが集まらないため、20年間の固定資産税を減免。さらに3月市議会に2年間で計4億5000万円を補助する予算案を提案した。しかし、議会の理解を得られず、補助金分は予算案から削除された。
このため、市は「5年間で計4億5000万円を補助するが、財団が資金を調達できれば途中で打ち切る」と条件付きで、20日の臨時市議会に再提案していた。
議会では、「市が補助金を出す必要はない。民間を中心に資金は集められるべきだ」という反対意見も出たが、最終的には賛成多数で可決した。閉会後、橋本康志市長は「補助は最後と考えている。これ以上の資金援助はしない」と語った。
当初計画では、佐賀県の補助金20億円、九電など民間からの寄付金88億5000万円などで150億円の事業費を賄うはずだった。ところが、複数年で計39億7000万円の寄付を表明した九電が、東日本大震災後の原子力発電所の運転停止に伴う収支悪化で、2012年度の寄付を見合わせた。九電の寄付額は、11年度の2億3000万円にとどまっている。
今年3月末現在で集まった資金は、予定を大きく下回る104億円。財団は、使用する医療機器代について、38億円が未払いの状態で、このうちの28億円は7月末までに支払期限が来る。不足分は、追加で金融機関から融資を受ける方向で調整している。九電からの寄付が遅れれば、さらなる追加融資が必要となり、金利分が今後の負担になるという。
九電佐賀支社は、「寄付は表明した通りに全額支払う。今年度分については、収支の状況をみて判断する」としている。
【九州国際重粒子線がん治療センター】
炭素イオンを超高速にした重粒子線を患部に照射するがん治療を行う。正常な細胞をほとんど傷つけずに治療できるのが特長。施設は、鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床面積約7400平方メートル。治療は8月から始まる。
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「開業後1、2年で資金がショートすることはない」との古川知事の言葉は、「一年や二年暴れてみせる」との山本五十六の言葉を彷彿とさせますね(実際は満鉄「せいぜい半年(あるいは1年)」だったとかとも)
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鳥栖の重粒子線治療施設、佐賀県が治療費一部負担(日経2013/1/5)
佐賀県鳥栖市で5月に開業予定の「九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)」について、同県の古川康知事は4日の記者会見で、患者の治療費の一部を県が負担する考えを示した。知事は「補助金や無利子融資などを検討する」と述べ、早ければ2013年度当初予算案に関連費用を計上する方針。
サガハイマットは放射線の一種である重粒子線をがんに当てて治療する先端医療施設。患者1人の治療費は約300万円で、保険適用外のため全額自己負担になる見込み。既に同様の施設が県内で開業している兵庫県は治療費の無利子融資を、群馬県は金融機関から借りたローンの利子補給をしている。
古川知事は、サガハイマットの総事業費150億円の多くを、経営が悪化した九州電力など民間からの寄付と出資で賄う計画にも触れ、「医療機関などから新規の寄付も増えている。開業後1、2年で資金がショートすることはない」とした。
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【佐賀】サガハイマット、国立病院九州事務所と連携
佐賀新聞 2012/12/14
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2348232.article.html
来春開設予定の九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)を運営する佐賀国際重粒子線がん治療財団(十時忠秀理事長)は13日、国立病院機構九州ブロック事務所と医療機能連携協定を結んだ。九州一円に28医療機関を抱える同事務所との連携で、重粒子線がん治療に関する九州ネットワークづくりに弾みがついた。
同財団は県内外の医療機関、九州内の大学などと連携を進めている。協定内容は相互の患者紹介と受け入れ、医療従事者の交流による人材育成と医療技術の向上、症例検討の研究推進など4項目で、調印は県立病院好生館などに続き13例目。
JR新鳥栖駅前の同センターであった調印式には、十時理事長と村中光国立病院機構九州ブロック担当理事らが出席。村中理事は28機関のうち、がん拠点病院が10施設あることに触れ、「先進的な医療ツールを使える機会が得られ、大きな励み。九州全域で活用できる形での運営を望みたい」と連携による医療の充実に期待を寄せた。
同センターは来年5月の開設に向けて準備が進んでおり、機器類のテストや治療実績の検証を経て、12月ごろまでには本格的な患者受け入れを予定している。
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「粒子線施設もう要らない」 西尾・北海道がんセンター長
http://lohasmedical.jp/news/2011/01/31152308.php
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「今までの放射線治療というのは、がんの病巣だけにうまいことかからなかったんですよ。で、がんの所だけかける方法として重粒子線治療という特殊な放射線があって、それは出すところのフィルターとかの調節によってですね、がんの深さの所でだけエネルギーを放出する。だから周りがかからなくて済みますよということで、それでいいんじゃないかということで30年ほど前からずっと研究されてきた。30年前から研究されて10年ぐらい前からようやく実用化する、人間の体に使えるようになった。ところが30年の間に普通の放射線の機械、リニアックっていう放射線を出すヤツを、コンピュータでかけ方を制御することによって周りはあまりかからなくて、がんの所だけ絞り込んでかけられるという技術が出てきたわけ。そうすると粒子線でがんの所だけ絞り込むこともできるし、普通のX線を使ってコンピュータ技術を使って集中することもできるし、ということで、ほとんど対等になっちゃったんですね。
コンピュータ技術がなかった時に考えられた粒子線治療と、今コンピュータの進歩で同じような放射線のかけ方をできるようになった。だからそういうことで言うと、たとえば前立腺がんで言えば重粒子線で絞り込んでかけようが、放射線をコンピュータの技術で絞り込んでかけようが、成績はほとんど変わらないということになります。
ただ特殊ながん、骨肉腫だとか悪性黒色腫だとか、非常に効きにくいがんがあります。そういうものに関しては同じ粒子線でも炭素イオン線というのがあって、細胞をやっつける力が普通のX線の3倍くらい強い。ですから普通の放射線の効きにくいがんについては炭素イオン線なんかを使えばやっつけられる。ただし、そういう患者さんというのはそんなにたくさんいないじゃないですか。今、日本で炭素線の装置は4カ所、動き出そうとして、3カ所はもう動いていて、4カ所目が動き出そうとしている。そうしたら、それで全部さばけちゃうわけです。そこに送れば。患者数から言っても。
陽子線治療も、このままいくと16カ所になります。そんなにそれが必要な患者さんはいません。ですからそういうのは十分に適応のある患者さんをそこに送ってやれば日本全国で出てくる患者さんをさばけるわけです。僕は、もう要らないって言っているんですけど、企業がつるんでですね儲けのために入り込んできている。そうすると結局むしり取られるのは患者さんなんですよ。
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【山形】山形大、重粒子線がん治療施設 補正予算に10億円
河北新報 2013/1/12
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/01/20130112t51021.htm
政府が15日に閣議決定を予定する2012年度補正予算案に、山形大が設置を目指している重粒子線がん治療施設の関連費用約10億円が盛り込まれる見通しとなった。総額約150億円に上る最先端のがん治療施設で、設置されれば東北、北海道で第1号となる。新規で関連費用が計上されることで、整備事業に国から事実上のゴーサインが出される。
今回認められるのは(1)重粒子線がん治療装置の研究開発(2)ITを使い治療の適用を判断するネットワーク構築?の2項目で、合わせて総額約10億円が計上される。
研究開発費は、装置の小型化や電力消費量の少ない次世代型の開発に充てられる。ITを使ったネットワークの構築は東北全域の医療機関が対象。治療情報を共有し、患者が居住地域で重粒子線がん治療の適用診断を受けられるよう、体制を整えるのが狙い。
同大は今後、施設建設費の獲得などを目指す。重粒子線がん治療施設整備事業の責任者で同大の嘉山孝正学長特別補佐は「研究開発の結果を受けて新たに施設建設費が認められれば、2、3年で完成できる」との見通しを示した。
同大は04年に重粒子線がん治療施設の整備計画に着手した。12年4月には同施設設置準備室を開設。最先端の重粒子線医療を行う独立行政法人放射線医学総合研究所(千葉市)と協定を結ぶなど、施設稼働を見据えた人材育成を進めてきた。同8月には東北の経済界や行政、医療などの15団体で同施設設置推進協議会を発足させた。東北経済連合会が13年度政府予算への要望項目に盛り込み、東北全体で後押しする機運が高まっていた。
重粒子線がん治療を実施しているのは、国内では同研究所と群馬大重粒子線医学研究センター、兵庫県立粒子線医療センターの3カ所。
[重粒子線がん治療] 医療用重粒子加速器で光速近くにまで加速させた炭素の原子核などの重い粒子を、患部に集中照射してがん細胞を破壊する治療方法。体への負担が軽く、肺や前立腺、肝臓などの早期がんや肉腫などの治療に高い効果を発揮する。
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粒子線治療の保険適用の問題と民間保険への影響
粒
子線は、公共事業の箱物建設が切り捨てになる中で、正面から建設推奨を唱えることのできる地方にとっての唯一残った公共事業の様相を呈しつつ、それまでの
公共事業とは異なり、患者のための施設建設については多くの県民が異を唱えることなく現在の建設ラッシュに至っています。
2011年の放医研の資料によれば,アメリカ合衆国全土で稼働中の重粒子線施設は一つもない.バークレーにあったものは終了し,わずかにメイヨークリニックで建設中のものが一つあるだけだ.それに対し,極東の島国には5つもある!
“重粒子線大国”をめざすのは正しい選択か?
http://www.ytakashi.net/CONTENTS/0.cancer/reports/060925jyuryusi.pdf
癌(悪性胸腺種)で2007年に亡くなった山本孝史さんが闘病しながら学んだ成果を報告したもの.悪性胸腺種の患者自身が,疑問を呈している.その意味を推進論者はどう受け止めるのだろうか?