Choosing wiselyはここにも

PET-CTでもこういう時代なのですから、ましてや重粒子線治療をや。英国NICEに象徴されるHTA (Health technology assessment)の動きがサービスプロバイダ側からのpaternalistic movementなのに対し、choosing wiselyは、医療者と患者が共に育っていく学習・教育活動である点に面白さがあります。こういう報道記事も、優れた教材になります。

あくまで個人的な推測ですが、神奈川県の事例では、もともとサービス提供量が増加する一方なのに、数少ない放射線科医の労働環境が問題だったのではないかと思っています。ただでさえ忙しいのに、県の意向でエビデンスが非常に限られている重粒子線治療にまで動員されてはかなわない、そこで「過労死する前に職場もchoosing wisely」ってことになったのではないかと。
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【富山】利用伸びず赤字続く とやまPET画像診断センター 北日本新聞 2018/1/9
保険厳格化が影響/「節目検診割引」を導入
 がんの発見に有効とされるPET/CT装置を備えた「とやまPET画像診断センター」(富山市蜷川)の利用者数が伸び悩んでいる。4年前から検査の保険適用要件が厳格化されたのが要因で、昨年度はピーク時の2013年度より500人余り少ない3392人にとどまり、収支は1380万円の赤字となった。センターは本年度から新たな割引制度を設け、県もPRを強化するなど、てこ入れを図っている。
 センターは、最先端のがん検査技術を県内医療機関で共同利用する施設として、2007年11月に開設された。県と市町村、民間企業が共同出資した会社が約14億円で整備し、とやま医療健康センターが運営している。
 開設以来、利用者数は右肩上がりで増加し、13年度には3922人を数えた。ところが、14年度にPET/CT検査を受ける際の公的保険の適用基準が厳
しくなり、医療機関からの紹介数が減少。利用者は3401人に落ち込み、黒字だった収支は2440万円の赤字に転じた。その後も利用者は思うように伸び
ず、収支は1千万円台の赤字が続いている。本年度の利用者も2325人(昨年11月末時点)とほぼ前年並みで推移している。

 経営改善に向けて手を打ってこなかったわけではない。利用者の8割近くを占める保険適用者を少しでも増やそうと、県内の公的病院に利用を働き掛けてきたほか、病院の医師を対象に検査のメリットを紹介する出前講座なども実施している。ただ、PRだけでは限界があった。このため、本年度からは保険が適用されない検診の利用者向けに「節目検診割引」を設けた。約9万円の自費負担を軽減するのが狙いで、45〜75歳のうち、45歳や50歳、55歳といった節目の年齢を迎えた人を対象に1万円を割り引いている。 県も県民や企業・団体に利用を呼び掛けている。医務課は「2人に1人ががんにかかる時代。早期発見や転移・再発の確認などに役立つことから、一層の利用を促していきたい」としている。
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【神奈川】がんセンター、県も医師確保へ…相次ぐ退職意向で 読売新聞 2018年01月11日
知事「非常事態だ」
 がんの専門的治療を行っている県立がんセンター(横浜市旭区)の放射線治療科医師が相次いで退職の意向を示している問題で、県は10日、新たな医師を確
保するための対策委員会(委員長・首藤健治副知事)を設置した。対策を病院側に委ねていた県が方針を転換した形で、自ら医師確保に乗り出す。
 黒岩知事は、この日開かれた対策委の初会合で「非常事態が起きている」と述べて危機感をあらわにした。県はこれまで医師確保は病院側の役割としてきた
が、年度途中であることなどから交渉が難航していたという。知事は「県も病院と一緒に汗をかき、診療継続に全力を挙げたい」と語った。
 同センターの放射線治療科では先月、2人が退職して現在は4人態勢。このうち2人も今月末までに退職する意向といい、新たに医師を確保できなければ、先進医療として実施している「重粒子線治療」は来月から中止に追い込まれる可能性が高い。
 昨年度、同センターが約3万人の患者を受け入れていた放射線治療も現在は新規患者の受け付けを制限しており、治療中の患者にも影響が出る恐れもある。
 県は、1月末に退職の意向を示している2人の医師に翻意を促すとともに、複数の医療機関との交渉を進める。首藤副知事は会合後、報道陣に「重粒子線、放射線治療の灯を絶やすことなく、早急に元の状態に戻したい」と話した。
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重粒子線がん治療「大きな赤字、周知を」 市長「山大事業、重要」 /山形 毎日新聞2017年6月22日 地方版
 山形大の「重粒子線がん治療事業」について、21日の山形市議会6月定例会の一般質問で、小野仁市議(民進党)が「大きな赤字の試算を県民、市民に周知すべきだ」と問いただした。同事業に対し、市は計5億円の寄付を表明済み。佐藤孝弘市長は「東北・北海道では初めての事業で、重要性に変わりはない」などと答弁した。
 小野市議によると、事業に関する同大の資料を独自に入手。群馬、佐賀県での先行事例をもとにした収支シミュレーションで、同事業が「2027年度までに単独の累積赤字が最大計48億8200万円」などの試算がなされていたという。
 一般質問では議場内に設置されたテレビ画面で、資料の一部を提示。「多額の寄付をしている山形市として、情報が県民、市民に入っていないことは看過できない」とし、大学側からの説明などを明らかにするように求めた。
 佐藤市長は「山大によれば、一部の試算が出たものだということだ。(他の試算を含めた)全体の議論がなされた結果をみて、判断しないといけない」とし、同事業については「健康や医療を中核とした街づくりを進める上で、重要な要素として位置付けていることに変わりはない」と述べた。
 同事業の総事業費は約150億円。2019年度の診療開始を予定している。山形市は15〜19年度に計5億円の寄付を表明しており、これまでに2億円を寄付している。【二村祐士朗】
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公共事業としての陽子線・重粒子線治療
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