Escalation of commitment-part ∞-

ついには、あの製薬企業の世界一の提灯持ちであるNEJMのEditorialにまで、Are We on the Right Road?と揶揄されるようになっても、
墓石を標的にした開発に対する製薬企業のアミロイド依存症はやむことがない。このようなコミットメントのエスカレーション現象については、度々触れてきたが、このまましかるべきエンドポイント(といっても、それが どんなものになるのかは私にも想像がつかないが、いずれせよ、原子爆弾やソ満国境を大挙して越えてくるT34戦車ぐらいのインパクトがないと、この種の行動は停止しない)に到達するまでは止むことはないだろう。
-----------------------------------------------------------------------
Lillyのsolanezumabの抗アルツハイマー病効果示せず/Ph3試験 BioTodayニュースレター 2014年1月23日
軽度~中等度アルツハイマー病患者が参加したEli Lilly社スポンサーの2つの第3相試験(EXPEDITION 1とEXPEDITION 2))の結果、可溶型アミロイドに優先的に結合する抗体薬solanezumabの認知や身体機能改善効果は認められませんでした。軽度アルツハイマー病 患者や脳アミロイド蓄積を裏付けるバイオマーカーが認められる無症状の人を対象にした更なる試験が必要と著者は言っています。

Antiamyloid Therapy for Alzheimer's Disease - Are We on the Right Road?
N Engl J Med 2014; 370:377-378January 23, 2014DOI: 10.1056/NEJMe1313943


Phase 3 Trials of Solanezumab for Mild-to-Moderate Alzheimer's Disease.
N Engl J Med 2014; 370:311-321January 23, 2014DOI: 10.1056/NEJMoa1312889

-----------------------------------------------------------------------
ノバルティスら、BACE1阻害剤のAD予防試験を中止  (2019年7月11日発表) 海外医薬ニュース

ノバルティス、アムジェン、そしてBanner Alzheimer's Instituteは、CNP520(umibecestat)の第2/3相アルツハイマー病予防試験を中止すると発表した。加齢性アルツハイマー病のリスク因子であるApoE4遺伝子を持つ、認知機能は正常な患者を組入れて15年に一本、17年にもう一本、開始したが、中間解析で幾つかの指標で認知機能の悪化が示されたため、中止を決定した。

BACE阻害剤などアミロイド・ベータを標的とする薬の第三相アルツハイマー病治療試験は壊滅状態だ。製薬会社や研究者は、うちのコンパウンドは選択性が高い、脳血管関門を通過する、アミロイドベータが大きく減った、だから大丈夫だとばかりに臨床開発を続け、完敗した後は、発症した後では遅い、発症前に介入すべきと主張、多くの予防試験を立ち上げた。

BACE阻害剤の治療試験では認知機能の悪化がしばしば見られたが、今回、予防試験でも同じ轍に嵌る懸念が浮上した。暗闇の中で行進する時は、前を行く人が落とし穴に落ちたのに気付かずに続々転落するリスクがある。製薬会社は治療試験の経験から学ばず予防試験でも同じ失敗を繰り返すのだろうか? フェールしたプロジェクトの研究開発費は、上市に漕ぎ着けた新薬の価格に上乗せされるのだから、一般人にも、熟考を促す権利があるはずだ。

Novartis, Amgen and Banner Alzheimer's Institute discontinue clinical program with BACE inhibitor CNP520 for Alzheimer's prevention
-----------------------------------------------------------------------

参考文献

Schmidt, Jeffrey & Calantone, Roger. (2002). Escalation of Commitment during New Product Development. Journal of The Academy of Marketing Science - J ACAD MARK SCI. 30. 103-118. 10.1177/03079459994362.

井上 淳子 新製品開発の失敗要因としてのコミットメント・エスカレーション--開発プロセスにおけるその現象と影響要因に着目して 産業経営 2003;34:73-88.

Dangers of Escalation of Commitment, University Birmingham City University, Course Accounting and Finance, School year 17/18

目次へ戻る