サルでもわかる質量分析
ーこれだけわかれば騙されない!ー

戦後最悪のフェイクニュースとなった北陵クリニック事件を支えてきた史上最悪の研究不正=捏造鑑定.その土橋鑑定で用いられた質量分析を以下に解説する.といっても,何も難しいことはない.

まずは東大法学部卒後20年余り、外資系証券マン一筋で、もちろん質量分析の経験など全く無い八田 隆氏の秀逸な解説を御覧頂こう。

科捜研の科学鑑定を餅菓子に適用すると次のようになります。
「この試料とここにある「おはぎ」を鑑定した結果、両方からきな粉が検出されたため、この試料は「おはぎ」と認められる」
弁護団は当然反論します。
「「おはぎ」からはあんこが検出されるべきであって、きな粉が検出された試料は「おはぎ」ではない」
八田 隆 蟷螂の斧となろうとも 2013/10/03


質量分析とは分子の体重計である
●質量分析とは何か?→分子の体重計である.例えばベクロニウムの分子量は557だから,ベクロニウムを質量分析するとm/z 557という信号が出てくる.このことはすでに1989年から知られていた.Organic  Mass  Spectrometry 1989;24:723-732)
●m: イオンの質量、z: イオンの電荷数 zが1の時⇒ m/z 値=質量となる.(ベクロニウムの場合,zが2=イオンの電荷数が2=2価イオンの時に検出される信号は,m/z 279となる) 参考→分子量と質量分析の関係をわかりやすく解説
●世界中,どこの研究室の,どんな研究者がベクロニウムを質量分析しても,必ずm/z 557が検出される.なぜならベクロニウムの分子量は557だから.
●さらに大切なことは,世界中,どこの研究室の,どんな研究者がベクロニウムを質量分析しても,m/z 258は絶対に検出されない.なぜならベクロニウムの分子量は557であって,516でも258でもないから.
●土橋鑑定なる世にも奇妙な実験では,ベクロニウムを質量分析して観察されるのはm/z 258であって,m/z 557は影も形もない.
●以上より,ベクロニウムの分子量は557ではないとする土橋鑑定は,史上最悪の研究不正である.

土橋鑑定の時系列分析
次の表は土橋自身がベクロニウムの質量分析の権威としてどういう見解を示してきたかを,海外の研究と比較し時系列でリストアップしたものである


過去完了のイカサマ
土橋鑑定の崩壊は2000年9月の時点で,ドラッカーの言うところの既に起こった未来だった 土橋鑑定と,それを「毒殺魔 守大助」の動かぬ証拠とした確定判決は,土橋鑑定に先立つこと4ヶ月以上,おそらく半年前(*1),2000年9月にGutteck-AmslserとRentschが初めてベクロニウムの質量分析を報告(*2)した時点で既に負けが決まっていたのである.まるで,ワーテルローの戦いがイートン校の運動場で決まっていたかのように(*3).土橋はこのようなトップジャーナルに載った論文もチェックできなかった間の抜けた「研究者」だったのだ.

*1 何もかもが開示されていない,空中楼閣そのものの土橋鑑定では,実験がいつ行われたのかさえも不明である.もっとも実験をやっていないから,当たり前なんだけど.
*2 この論文にはベクロニウムを質量分析して出てくるのはm/z 557と等価の2価イオンm/z 279であり,m/z 258ではない.

以下,質量分析とは全然関係ないこと
*3:”ワーテルローの戦勝はイートン校の運動場で成し遂げられた”。ワーテルローの勝利者にして後のイギリス首相のサー・アーサー・ウェリントン公爵の有名な格言として知られるこの言葉は、現実には公爵の言葉ではないのである。 そもそもこの時代のイートン校には集団競技のチームもなく、乗馬コースはあっても、運動場なるものはなかった。(中略) この格言とされるものを、最初に文章で発表したのはフランスのシャルル・モンタランベール伯爵で、彼の著書「イングランドの政治的未来」の中での一節だった。この本は1855年、ウェリントン公爵の死後、三年たってから出版されている。(イートン校の運動場が英軍に戦勝をもたらしたのか?

Waterlooに関するジョークがきっとあるはずだと思って探したら,やっぱりあった!!→ Waterloo please
ジョークではなく,本気の名前の会社もあった.この会社のキャッチコピー,The No.1 in the No. 2 business もなかなか洒落ている.

法的リテラシー