報道発表の「隠し味」
先日の子供だましほどではないにせよ,この報道発表もなかなか味がある.一読してわかるのは:
1.FDAの要請を受け,新規糖尿病薬に対するガイダンスに準じてデザインされ,遂行された市販後臨床試験.
2.従って,ランダム化・盲検・プラセボ対照試験で,非劣性を検証する大規模試験.
3.主要安全性評価目的を達成した=プラセボを上回る心血管イベント抑制効果は証明できなかった.
1,2については,Clinical Trials.govで誰もが確認できる.3こそが,この報道発表の「隠し味」である.つまり,それなりの見識を持った人には認知される一方,ずぶの素人は隠蔽を見抜けない.だから,決して誇大広告にはならない.なぜなら,「騙された」と叫ぶこと自体が,「自分は素人だ」と認めることに他ならないから,結局誰も騒がない.そこがこの報道発表の「妙味」である.
→結局,翌月にはNEJMに試験結果が発表されて,ロルカセリンには心血管イベント抑制効果が無いことが明らかにされることがわかっていた.
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「ベルヴィーク」、心血管イベント頻度は増加せず 国際市販後試験、主要安全性評価目的を達成 日刊薬業2018/7/18 20:18
エーザイは18日、米国などで販売している肥満症治療薬ロルカセリン(米国販売名「ベルヴィーク」)について、市販後臨床試験としてグローバルで行った心血管疾患アウトカム試験(CAMELLIA-TIMI61試験)で、同剤の長期投与で主要心血管イベント(MACE)の発生頻度が増加しないことを確認し、主要安全性評価目的を達成したと発表した。同社は、体重管理を目的とした治療薬として長期の心血管疾患アウトカム試験で安全性目的を達成した最初の薬剤になるとしている。
試験は、過体重と肥満で心血管疾患の既往があるか心血管疾患のリスク因子を伴う2型糖尿病患者(8カ国、1万2000人)を対象に実施。プラセボ投与群と比較して、MACE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)の発生頻度を評価した。今回の試験では、血圧や脂質といった心血管リスク因子に対する効果も評価した。ベルヴィーク投与群では、血圧や脂質、血糖、腎機能について有意な改善を示したほか、2型糖尿病未発症者の2型糖尿病への移行抑制も確認した。
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と,ここまで書いてきたら,早速国外からネタバレ記事が入ってきた
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エーザイ 肥満薬BELVIQのプラセボを上回る心血管有害事態予防効果示せず BioTodayニュースレター 2018年7月20日
肥満/太り過ぎの12,000人が参加した二重盲検試験(CAMELLIA-TIMI 61)の結果、エーザイの抗肥満薬BELVIQ(lorcaserin)は心血管有害事態(MACE)をプラセボに比べて増やさないことは示されたものの、MACEに他幾つかを加えた心血管転帰一揃え(MACE+)の予防効果は認められませんでした。MACE+の発現率はプラセボに劣らなかったものの、勝りはしませんでした。肥満薬市場は冷え込んでおり、BELVIQも例外ではないようで、昨年度の売り上げは360万ドルでした。
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Eisai obesity drug Belviq may have an edge with new heart-safety data−but to what end?
↑ これが上記の日本語抄録の元ネタ記事なのだが,これも,たった一言 "Although superiority to placebo was not met"と書いてあるだけの提灯持ち記事だった.
Eisai Inc. Announces Positive Topline Results from CAMELLIA-TIMI 61, a Large-Scale Cardiovascular Outcome Trial for the Anti-Obesity Agent BELVIQ?
↑ 一方,こちらの記事は思わせぶりなタイトルで,以下のように書いてある.
●この種の市販後臨床試験には,2億ドルもの膨大な金がかかること
●同種の抗肥満薬であるCONTRAVE®(ナルトレキソン塩酸塩徐放製剤とブプロピオン塩酸塩徐放製剤の合剤.武田はOrexigen社との提携を2016年には解消.ウェバーさんの見切りは正しかった)を抱えるNalpropionや,いかがわしさてんこもりのQsymiaを抱えるVivusにはとてもそんな体力はないこと
●FDAから要求された試験に2億ドルを投入したエーザイにとっても,2017年度の売り上げは,たったの360万ドル(1ドル=112円換算で4億円)と,大変情けない結果になっていること.
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参考→誇大広告代理店と化したNEJM
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