学会利権と研究不正「支援」

You can fool all the people some of the time, and some of the people all the time, but you cannot fool all the people all the time. (Abraham Lincoln)
Je größer die Lüge, desto mehr Menschen folgen ihr. (Adolf Hitler)(注:この言葉の出典に関しては→レファレンス事例詳細
They lied! They said there were weapons of mass destruction. There were none, and they knew there were none. (Donald Trump)

組織は大きな嘘をつく
嘘は大きければ大きいほど人を騙す力が強いことは歴史が証明している。しかし,後出しじゃんけんでその嘘をついた(と思われる)特定の個人だけを 責めても、何の学習にもならない。邪馬台国じゃあるまいし,もはや市民は組織によってしか騙されない.たとえアメリカ大統領といえども,たった一人で合衆 国民を騙すことなど絶対にできなかったことは,それこそ歴史が証明している.サダム・フセインが大量破壊兵器を持っていると言い出したのは,ビル・クリントン,アル・ゴア両名が率いる民主党政権の人々だったことを忘れてはならない.

「サダム・フセインは大量破壊兵器を持っている」という嘘で世界中を騙してイラクをめちゃめちゃにして,ISが発生する原因も作ったのはGeorge Walker Bush個人ではなく,共和党,民主党いずれか一方でもない.パパブッシュからクリントン政権に引き継がれた,イスラム敵視政策という,アメリカ合衆国政 府の伝統だった.

嘘をつくのは誰でもできる.しかし,人を騙すのは誰でもできるわけではない.あらかじめだます相手の信頼を勝ち得ておく必要があるからだ.従って多くの市 民を騙すのは個人ではなく組織である.嘘の大きさ,騙される市民の数が,その組織に対する信頼度に依存する.その組織が非営利で,公的で,かつ学術的な組 織,たとえば科学や医学関連学会であれば,その信頼度は極大となる.その会員,そしてその会員が大学教授クラスの「大物」の行った研究が,トップジャーナ ルにに発表されれば,誰が嘘だと思うだろうか.

ディオバン事件:全てはARB利権のために
 学会はacademic peerの集まりだから、本来ならば研究不正の懸念が生まれた時点で、関連学会は迅速に対応しなければならないはずだ。ところがしばしば現実は全く逆で、外部から 不正の懸念があると指摘された時は、当該研究者と幹部がその指摘に対して強く反論する、あるいは完全に無視する「研究不正互助組合」の正体を現す。
 Jikei Heart Study (JHS)はランセットに論文が出た時,既に主要評価項目が当初のプロトコールのそれから担当医の主観が入るような項目に変更された(「狭心症」,「心不 全」が,それぞれ「狭心症による入院」,「心不全による入院」にすり替え)という重大な不正があり,強く批判されていたが,「医学ジャーナリスト」達が騒ぎ出すまでの6年間の間,関連学会の幹部連中は,ARB利権をむさぼるだけで,「後は野となれ山となれ」だった.

 2009年8月に発表されたKyoto Heart Study(KHS)の場合にも,査読スルーや奨学金ロンダリングといった露骨な研究不正が論文発表時から誰の目にも明らかだった.それゆえ発表直後から桑島 巖氏はKHSを厳しく批判した.それに対して、関連学会は総じて反論(その急先鋒は日本高血圧学会)あるいは無視で応じた.にもかかわらずである.その後,2012年暮れに日本循 環器学会がCirculation Journalに掲載されていたKHSのサブ解析の2論文を取り下げるまで、桑島氏の声に素直に耳を傾ける学会幹部はいなかった(桑島 巖 赤い罠 日本医事新報社)。この間3年4ヶ月.そのおかげでKHSは旧薬事法第66条にある誇大広告の公訴時効を目出度く迎えることができたのである.高血圧の診療に関連する学会にとって、KHSは,ブロプレスやオルメテックのseeding trialとともに,「高血圧村おこし」(=ARB利権)のための大切なイベントだった。

 ARB利権が示すように、学会が研究不正を支援するのは決して希なことでもないし,こそこそ行われるものでもない.奇妙なことに,学会による研究不正支 援は,むしろ大々的に行われ,「イカサマだ」と声を上げる者に対しては罵声が浴びせられる光景が何年も続く.そして学会利権はARBが初めてでもないし、 製薬企業とお医者様の学会の間だけに生じるものでもない。それは古畑鑑定に象徴される科学捜査利権の歴史を見れば一目瞭然だ。

捏造鑑定ロンダリングと科学捜査利権
法的リテラシー