エンパグリフロジンとバルサルタン
ー似て非なる二つの祭り-
エンパグリフロジンのお祭り騒ぎはバルサルタン問題を彷彿とさせる。その共通点は下記のごとくである。
1.生活習慣病治療薬の市販後大規模試験がトップジャーナルに掲載されたこと。
2.論文に掲載された試験結果がイカサマであること。
3.その別刷がそのまま製薬企業の宣伝ビラとして活用されること。
4.学会の顔役、Key Opinion Leaderとやらが、企業の広告塔となって大活躍すること。
バルサルタンの場合、ノバルティスの提灯持ちを買って出た高血圧学会のお歴々は散々な目に遭った。彼らは6年も前に出ていた私の親切な忠告に全く耳を貸さなかったばっかりに、随分と叩かれたものだった。ならば、エンパグリフロジンの提灯持ちには、バルサルタンと同様の運命が待ち受けていると思いがちだが、決してそんなことはない。それは日本のマスメディアの行動特性を考えれば自明である。
日本のマスメディアの行動特性が端的に表れた薬害ビジネスのことを考えてみるがいい。血友病HIVで企業と癒着して日本以上の犠牲者を生み出したFDA。そのFDAを擁護した(!)日本のマスメディアが、FDAを糾弾できるわけがない。日本のマスメディアは日本の医者、日本の役人、日本の企業(外資にあっては日本の支社)しか叩けない。海外で起こった出来事や海外の黒幕は全て隠蔽して擁護する。
バルサルタンの場合、主犯であるBjorn Dahlof (*1)(*2)とJikei Heart Studyのイカサマを知りながら論文を掲載したランセット編集部という黒幕については、一部の業界紙が散発的に言及しただけで、新聞、テレビなどのマスメディアは、この黒幕達の悪行を全て隠蔽し続けて今日に至っている。
バルサルタンばかりではない。サリドマイド問題にせよ,血友病HIV問題にせよ,医薬品に関するスキャンダルがグローバルに生じた時、海外での出来事は全て隠蔽し、日本のことだけを取り上げて報道し、市民と患者・家族を騙し、食い物にする手口は、日本のメディアの常套手段である。
バルサルタンの場合、市販後調査(あんなもんは臨床試験の名に値しない)を遂行した下っ端実働部隊は国産で、本当の黒幕は海外在住の詐欺師達だった。そして叩かれたのは国産の実働部隊だけだった。一方、
エンパグリフロジンの場合は,FDAの関与を含め、純舶来産の詐欺師達によって全てが仕組まれた。EMPA-REG
OUTCOME試験の論文には、日本人は誰一人として名を連ねていない。おまけに、すでに海外で提灯持ちが雨後の竹の子のように出現している。彼らの尻馬に乗ってさえいれば、日本の提灯持ち達は,国内のまともな医師達から白眼視されることはあっても、サリドマイド問題でも,血友病HIV問題でも,FDAの不祥事をバカの一つ覚えのように隠蔽することしかできない日本のマスメディアから叩かれることは決してない。
以上の事情ゆえに、糖尿病を専門とする日本の先生方、Key Opinion Leaderの皆様、どうぞご安心あれ。マスメディアや検察から嘘つき呼ばわりされるチンピラ矯正医官の戯れ言など一切気にすることなく,思いっきりベーリンガーとリリーの提灯持ちをなさるがよかろう。
*1 ディオバン問題 JIKEI HEART Study中間解析結果を主任研究者らが熟知“統計解析者と綿密な打ち合わせ”
*2 バルサルタン問題は、2013年9月スウェーデンの医学雑誌でも大きく取り上げられ、そこにはBjorn Dahlofの短いインタビュー記事も載っている。題して”I have not been able to control original data.”当然ながらそこでは知らぬ存ぜぬで、全ての責任を日本人に押しつけて知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいる。
参考:ディオバンに続け!
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