医療事故ビジネス
これは,北陵クリニック事件再審請求の動きを受けて,ミトコンドリア病の一つであるMELAS(Mitochondrial
encephalomyopathy, lactic acidosis, and stroke)で現在も長期療養中のA子さんのお母様が発表した談話です.英文の症例報告(Journal of
Medical Cases 2011;2:87)にまでなっている私の診断を否定する医師はいませんから、これは,私を嘘つき呼ばわりしている医師以外の人間に騙された結果として出てきた談話ということになります。
医療者を凶悪犯罪者に仕立て上げ,患者・家族の処罰感情を煽って創作したあだ討ちシナリオに従って,司法官僚達が最先端の科学捜査を駆使して凶悪犯を追い詰め,成敗する現代版水戸黄門劇場.右肩下がりの視聴率・販売部数に苦しむマスメディアが、この医療事故ビジネスに飛びついたのは、実質的にゼロコストで確実に収益が期待でき,裁判によって再生産される医療事故に対応して何百回でも使い回しが利くからです。
北陵クリニック事件再審弁護団は毒殺魔守大助の「脱獄」を企む悪の一味。当時大学で講座主任を務めていた私をその一味に加担する詐欺師と断罪する。そうして新たに創作した「嘘つき教授物語」で、事件当時守大助氏に対して煽ったA子さん家族の処罰感情を、今度は私に向かわせ、水戸黄門気取りの検察に私を「成敗」させる。北陵クリニック事件報道の「成功体験」が忘れられない河北新報による冒頭の記事は,患者が適切な治療を受ける権利を踏みにじり、国家最高権力を笠に着て医療者を恫喝してきた日本のマスメディアを象徴しています。
患者家族も傷つける二重の悲劇
「単なる冤罪事件じゃない。患者・家族も騙されている二重の悲劇じゃないか」ある出版社に勤める、私の高校の同級生が、北陵クリニック事件を評した時の言葉です。医療事故ビジネスによる収益に執着するマスメディアの攻撃の矛先は、医療者だけに留まりません。高濃度カリウム製剤誤投与事故、ウログラフィン誤使用事故裁判、
そして北陵クリニック事件。いずれの事例でも検察とマスメディアは、患者・家族をも深く傷つけました。それもその場では痛みを自覚できないように、真相の隠蔽という「不可視の暴力」を用いて。
北陵クリニック事件では、A子さんに限っただけでも、同クリニックにおける救急体制の不備、気道確保の遅れ、血液ガスデータが示した高乳酸血症の見逃し等、極めて多数の事故原因が検察によって隠蔽されています。しかし問題はそれだけには留まりません。「A子さんは毒殺魔守大助の哀れな犠牲者である」と家族を騙し続けることは、MELASにおける心筋障害と不整脈による突然死リスク(谷口 彰 MELAS 不整脈による突然死 日本臨床 2002年 増刊号 ミトコンドリアとミトコンドリア病 P606-609、Congest Heart Fail
2009;15:284)を隠蔽することに他なりません。もちろん正しい診断のもとに適切な治療をしなければそのリスクは年々高くなるだけです.
2012年2月の再審請求時に私が裁判所に提出した意見書にも,その危険性は明記してあります.それから早4年が経とうとしています.仙台地検の3人の検察官も、この事実をもちろん把握しています.しかしA子さんの家族には,上記の突然死リスクを含め、MELASに関する情報は何一つ開示されていません。なぜなら、彼らの使命は、再審につながるような証拠を全て隠蔽し、私を嘘つき呼ばわりすることであって、神経難病患者の命など、彼らの関知するところではないからです。
法令遵守が医療を滅ぼす
松本サリン事件では,マスメディアはサリン中毒の被害を受けて生命の危険に晒された河野義行氏に「殺人鬼」とのラベルを貼り付けました.長野県警はサリン中毒から回復途上の河野氏が長時間の事情聴取に耐えられないと診断書を書いた担当医に対し,捜査の妨害になるような診断書は撤回するよう担当医に迫りました(河野義行 被害者から見た社会の理不尽さ 第5回矯正・保護ネットワーク講演会 2015年2月15日 龍谷大学 校友会館).
法令遵守の家元の言いなりになって市民を恫喝し、医療事故ビジネスで莫大な収益を上げるマスメディア.そのマスメディアの報道管制に守られ,矯正医官を嘘つき呼ばわりし,患者を踏み台にして出世階段を上っていく司法官僚達。とんだ「正義の味方」もあったものです。こんな不条理なビジネスが大手を振ってまかり通るのは、彼らの活動がたとえどんなに人の道からはずれたものであっても、法令には何一つ違反していないからです。