ジャヌビア「事件」の予防
先日、「トップジャーナルの嘘」と題して、5年目ぐらいまでの若手と、5-6年生中心の医学部学生それぞれ50人ほど、合計100人ほどに、誇大広告代理店と化したNEJMについて話をしたのだが、ほとんどの参加者にとっては、初めて聞く話だったようだ。歴史に残る子供だましがNEJMに載ってから1年も経ったというにのに。
話の後「大事なことだから、1年後でも、是非、NEJMにレターを書くように」との助言もあったが、実は余り気が進まない。苦心して書いて、運良く掲載されても、ARBが何の略だかも知らない素人の餌食にされるだけじゃないかと心配になる。
EMPA-REG OUTCOME論文を一応読んだ人もいるようだが、私のような行儀の悪い人間を除くと、お医者さんの達の中では、やっぱり、お作法を遵守した「批判的吟味」が限界のようだ。
医者はこんなお人好しの集まりだから、バルサルタン問題でも、素人や総会屋どもに、「事件」をでっち上げられ、いいようにやられてしまった。この点については私にも悔いが残っている。
ARBバブルを主導したランセットを日本語でもっと大っぴらに叩いておけば、素人や総会屋どもの出番もなかっただろうにと思う。当時の私は「イカサマで勝手にお祭り騒ぎやるがいい、バカどもが」と思って、静観していた。私が知っている人々も私と同じようにARBバブルを静観していた.それが「事件」のでっち上げを許してしまったのではないかという後悔である。
JHS・KHSを始めとしたARBバブル論文を,出た当初から躍起になって叩いていた爺様もいらした.しかしあの爺様は、「自分はカルシウム拮抗薬で『地道に』仕事をしてきたのに、ARBバブルでしこたま奨学寄付金をもらっていた奴等はけしからん」 。そんなくだらないルサンチマンが活動のエネルギーになって喚いていただけだ。その爺様だって結局は「司法の手を借りないと真相究明は不可能」なんて世迷い言を繰り返すだけだった.
私怨だけで,ARBバブルを叩いて,挙げ句の果ては検察真理教,裁判真理教かよ.あの爺様の醜態を思い出すにつけ,単に騒げばいいというわけでもなかったのか とも思うが,いずれにせよ、ディオバン「事件」のような馬鹿げた真似を二度とさせないために、NEJMのレターが役立つとは思えない。
ディオバンは副作用問題が全く無かったにもかかわらず,事件がでっち上げられ,ノバルティスは散々な目に遭った.ましてや急性膵炎のリスクが明らかなジャヌビアには,いつでも「薬害」の言い掛かりをつけられる.そのリスクときたら,ピオグリタゾンの膀胱癌よりも頑健なエビデンスとして,MSDがスポンサーになったTECOS試験によって提供されているのだ.
だとすると、ジャヌビア「事件」の芽を今から摘んでおくために、自分は何ができるのか?やっぱり、DPP4が何の略号だかわからないチンピラ記者や総会屋に向けて、牽制球、というよりビーンボールを,こうして今から地道に繰り返し投げておく。それが一番私らしいやり方かなと。
(2016/8/26)
参考
治療薬ではなく、ただの血糖降下薬
誇大広告代理店と化したNEJM
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